北野誠のズバリ

『キツネ目 グリコ森永事件全真相』の著者が語る事件の裏側

37年前、日本の犯罪史上に残る「グリコ・森永事件」が起こりました。
“かい人21面相”を名乗るグループが、「毒入り危険」のシールを貼った菓子をスーパーやコンビニにばらまき、社会を震撼させた事件です。

首謀者とみられる“キツネ目の男”の似顔絵を公開。600点以上の遺留品があり、犯人は目撃・尾行までされながら、未解決のまま時効を迎えています。

4月17日放送の『北野誠のズバリサタデー』では、『キツネ目 グリコ森永事件全真相』(講談社刊)の著者でジャーナリストの岩瀬達哉さんに事件についてお話を伺いました。

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きっかけは警察官僚の言葉

岩瀬さんは「グリコ森永事件」の関係者を12年かけて取材し、複雑なこの事件の真相に迫っています。

そもそも岩瀬さんがこの事件を追うようになったのは、警察庁の知り合いのキャリア警察官僚から「『グリコ・森永事件』を調べるとおもしろいよ」と声をかけてもらったのがきっかけ。

「警察では検証できない。本質を書いてしまうと責任問題が発生するので、これを第三者に検証してもらいたい。一切注文をつけないので、取材をするのであれば協力する」と打診されたそうです。
 

犯人に襲われた男性の悔恨

取材をする上で岩瀬さんの印象に残ったのは、淀川堤防の道路で恋人とデートをしていた時に“かい人21面相”に襲われた男性。

元自衛官の男性は「恋人を返してほしければ金を取ってこい」と女性を人質に脅され、焼肉・大同門にグリコが用意した3億円を取りに行き、警察から誤認逮捕されました。

岩瀬さんがこの男性を訪ねたのは、事件から二十数年後。

男性は「あの日あの場所に行かなければ、恋人の女性に一生消えることのない恐怖感を与えることはなかった。今からでも会って謝りたい」と悔やんでいたそうです。
 

事件は「まだ終わっていない」

取材でわかったことは、犯人を逮捕するチャンスが3度ありながら、いずれも警察の判断ミスで逃していたということ。

この事件は未解決のまま時効となりましたが、岩瀬さんは「まだ終わっていない」といいます。

今後国会で「この事件を未解決のまま終わらせるな。もう1回きちんと捜査をして、今後の教訓にすべきだ」という声があがれば、捜査するポイントがはっきりしているため、犯人があぶり出される可能性が高くなるというのです。
 

「1億か100億か」で苦悩

岩瀬さんの取材に「脅迫状が来たときに、1億円で済ませるか、100億円の損害を出すかで迷った」と語ったのは、当時ハウス食品の副社長であった大塚邦彦さん。

すでにグリコが脅迫されている様子を見ていたこともあり、「自分の会社がつぶれるかもしれない」という思いと葛藤していたといいます。

しかし「ビジネスの本質は、人の心に対して組織として恩義をお返しすること。正道を歩かなければいけない」と脅迫を拒否し、何百億という損害を被ることとなりました。

岩瀬さんは、大塚さんから当時森永製菓の副社長だった高木貞男さんを紹介してもらい、高木さんからもお話を聞くことができたそうです。
 

警察の縄張り意識が生んだ過ち

岩瀬さんが残念に思っているのは、「犯人グループの女性の似顔絵」を公開しなかったこと。

愛知県警が作った女性の似顔絵は「似てる」と言われていたものの、大阪府警の「愛知が作ったやつは使いたくない」という縄張り意識から公開されることはありませんでした。

取材で「キツネ目の男ではないかと思われる人」に会ったという岩瀬さん。

その人の奥さんが、この似顔絵にそっくりだったというのです。

もしかすると岩瀬さんは、犯人と出会っているのかもしれません。

「これから国会で議論になって、捜査が始まればおもしろいなと思ってる」と岩瀬さん。
 

「あれは公開しておくべきだった」

犯人グループの「言語障害のある男の子の声」も公開されませんでしたが、「この声を公開していれば、多分犯人はあがった」と言われています。

言語障害のあるこどもは、養護学校などの狭いグループの中で生きているためです。

しかし当時の大阪府警は「障害者の声を公表すると障害者差別が起こるのではないか」と恐れ公開しませんでした。

「そういうことをしなくても犯人をあげられる」という自信もあったといいます。

当時の捜査員に話を聞くと、「あれは公開しておくべきだった」という人が多いそうです。
 

犯人グループ6人の結束

「犯人は確実に儲けた」と岩瀬さん。

犯人は仮名口座にお金を振り込ませ、防犯カメラのついていないATMから引き出し、株券に換えることでマネーロンダリングしていました。

その金をすぐに使うと目立つため、事件がある程度おさまたっところで仲間に分配しただろうということです。

岩瀬さんの取材によると、警察が確認している犯人グループは6人。

全員血縁関係があり「家族的結束」の中にいるため、裏切りも仲間割れもなかったということのようです。
(minto)
 
北野誠のズバリ
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2021年04月17日10時28分~抜粋

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