アニメの吹き替えから洋画の吹き替えまでこなす声優の仕事。
ベテラン声優の神谷明と日髙のり子が考える、アニメと洋画それぞれの難しい点や声優と俳優の共通点とは何でしょう?
5月15日放送の『神谷明・日髙のり子 TALK!×3』から。
声優=俳優の”声”を使う仕事
「以前、神谷さんがネットのインタビューで『声優の演技は俳優の演技と同じ』とおっしゃられていました。お二人は声の仕事を始めた時から、役者の仕事と変わらないと思っていたのですか?」(Aさん)
舞台出身の神谷は当初あまり意識せずやっていたものの、いつも先輩に口酸っぱくこう言われていたそうです。
神谷「『声優というのは俳優の"声"を使って演じるお仕事なんだよ』と」
最初は意味がよくわからなかった、と明かします。
リアリティを追求していた先輩たちのそうした思いがある時期にふとわかったと神谷。
誇張せざるを得ないアニメと違い、より"普通の表現"を心がけるようになったと話します。
日髙「最初にぶつかったのはアニメ。アニメならではの」
一方、日髙は絵が細かく動かないTVシリーズのアニメで、絵が足りない部分を声で補う工夫をしていたと話します。
神谷「それはいいアドバイスですね」
声優だからこそ、行間に入れなければいけない"そういうもの"が難しいと思ったのだとか。
他に神谷が難儀したのは、セリフしか書いていないラジオドラマだったそうです。
場面をしっかり理解し、行間や句読点の処理をしないと嘘になってしまう、と話します。
洋画吹き替えはまず”呼吸”から
映画における吹き替えも声優の仕事のひとつ。
神谷の先輩である声優の若山弦蔵さんは、007シリーズでおなじみのショーン・コネリーの吹き替えを務めていました。
その若山さんから神谷が学んだ洋画吹き替えの真髄は「向こうの俳優さんと息を合わせる」ことだったそうです。
「どうやっているんだろう?」と首を傾げていた神谷。
若山さんが息を吸うところから合わせていたことを知ってからは、理屈ではなく身体で覚えるようにしたそうです。
神谷「わかってもできないけど」
一方日髙は、ブレスからブレスまでの間であれば、頭や顔を動かさない限り、その中で好きな表現ができると話します。
自分が引っ張っていける部分もあるようです。
ただ、初めて取り組んだ洋画吹き替えでは、台詞の言い回しをなんとなく自分の雰囲気で合わせたという日髙。
尺は合っているのにその人が喋っているように見えず、すごく悩んだそうです。
神谷「向こうが生の人間ですから、よりそうなのではないかな」
神谷も洋画はあまり得意ではないそう。
実際に動いている人の場合、自分のリズムが合わないことが多いそうです。
埋め難い?文化の違い
また、洋画吹き替えの決定的な弱点は日本語が多いことだと神谷。
日髙「速いんですよね!」
英語は時間あたりの情報量が多いだけに、そのまま日本語に訳すと不自然に言葉が増えてしまうそうです。
なので、外国映画の吹き替えは"声のテロップ"だと割り切ってやっていたと神谷。
それだけでなく、日髙は文化の違いも大きいと感じるようです。
例えば日本人同士の悩み相談ならリアクションがないような場面でも、「イエス」「かわいそうに…」と耳慣れない相槌が出るのだそうです。
日髙「話しているあいだに『かわいそうに…』って言うってどういう気持ち?ってなっちゃうんですね」
そのセリフを練習し過ぎて、たしなめられたことも。
日髙「日本人の感覚にない部分っていうのかな。そういうのがすごく難しくって」
まだまだ奥が深く学びが多いと話します。
一方、自分で笑っちゃうことがあると神谷。
神谷「通販番組で『すごいね!』とか言うんだけど、言うか?って」
「すごいね!」の言い方が見事なあまり、爆笑する日髙。
「大げさな部分はためらった経験がある」と神谷も苦笑しました。
(nachtm)
セットリスト:
M1 久保田早紀「異邦人」
M2 天道かすみ(cv.井上喜久子)「家事のうた」
神谷明・日髙のり子 TALK!×3
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2021年05月15日23時09分~抜粋