番組を救った”神回”
神谷の代表作のひとつ『シティハンター』(日本テレビ系列)のプロデューサーを務めた諏訪道彦さん、神谷とは30年以上の付き合いになるそうです。
軽妙なキャラクターで人気を博した冴羽獠は、神谷にとって事務所の名前に冠するほどお気に入りの役柄だそう。
しかし諏訪さんによれば、そんな人気番組にも「打ち切りになるようなタイミングが3回くらいあった」とか。
何とか継続したいとの思いから、その都度、最後だと思って力を入れて作品をつくったそうです。
第50話、第51話がそれにあたり、いわゆる「神回」になったとのこと。
諏訪「今なら大成功(の番組)ですけど」
神谷「何度も危機を乗り越えた」
そうした陰ながらの努力が実り、制作期間が十分に必要なアニメーションにもかかわらず、急に続投が決まったのだそうです。続編に入ってから番組はブレイク。
「やっぱ、いい作品なんですよね」と神谷に改めて感謝する諏訪さんでした。
神谷登板のいきさつは?
1987年に出会った諏訪さんと神谷。
声のオーディションについて、神谷が、「どうやってそれぞれのキャラクターが決まっていったんですか?」と質問をぶつけます。
当時、『キン肉マン』(日本テレビ系)と『北斗の拳』(フジテレビ系)でそれぞれ主役を担当していた売れっ子の神谷。
ここに『シティハンター』が加わると、当時の『少年ジャンプ』(集英社)の"三本柱"を独占することになります。
そんなことから諏訪さんは、すべて神谷になるのは考えにくいと思い、『少年ジャンプ』編集部の方がむしろ「(神谷に)忖度するんじゃない?」と諏訪さんは思っていたそう。
しかしながら、冴羽 獠役は2枚目と3枚目を合わせた役どころ。
「両方出来てるわけですから」と諏訪さん自身は神谷を密かに評価し、すでにイメージは頭の中にあったようです。
一方、『ジャンプ』編集担当と編集長に「やりたい?」と聞かれた、と振り返る神谷。
宣伝効果もあり「売れてる人にやってほしい」という思惑があったようで、原作者の北条司さんからもウェルカムだったとか。
他にも名だたるキャストが集結し、そうした出会いについて
諏訪「計算してやれるもんじゃないですから」
神谷「奇跡だなぁと思う」
と偶然のめぐり合わせに感慨を新たにする二人。
たどりついた天職?アニメの世界
諏訪さんは出版社志望で「文章を生業にしたかった」といいますが、読売テレビに入社。
制作・報道・スポーツが花形のテレビ局で、芸能関係の番組制作を担当します。
アニメに携わるようになったきっかけについて神谷が尋ねます。
当時、アシスタントディレクターは過酷な職務だったそう。
人を説得して物事を表現していくディレクター業がそれほど向いていなかったのか、怒られる日々が続きます。
そこで趣味だったマンガに鉾先が向き、面接で「マンガは財産なんだ!」など滔々と語ったそうです。マンガの蔵書は3000冊(!)あるとか。
「マンガが好きな人が入ったらしいよ」となんとなくアニメの部署に配置されると、上司に恵まれたこともあり、『シティハンター』の制作が決定。
神谷「提案してもダメなら、日の目を見ないわけじゃん」
結果的に3本目でヒットを飛ばした諏訪さん。
ジョブローテーション(定期的に部署を異動させることで様々な業務を経験させる方式)で部署を動かされるのがつねのテレビ局で、アニメーションの部署に無事定着。
「シティハンターがあったから今があるのは間違いないですね」と振り返ります。
「(諏訪さんのように)ずっとアニメの制作に携わっている人はいない」
こう語る神谷でした。
(nachtm)