「リーダーをやめると、うまくいく」。
これは、東京江東区・亀戸天神のすぐ近くにある行列の絶えないお店、創業214年の和菓子屋「船橋屋」八代目当主・渡辺雅司さんの言葉です。
10月14日放送の『つボイノリオの聞けば聞くほど』、いろいろな方のいろいろな言葉を紹介する「社長のお役立ち・歴史の知恵袋」のコーナーでは、この言葉を取り上げました。
八代目を継いだ渡辺さんが社内改革に乗り出した経緯とその苦労について、つボイノリオが語ります。
船橋屋の伝統の「くず餅」
船橋屋の人気メニュー「くず餅」は、西郷隆盛や芥川龍之介がこぞって食べたといわれる伝統の一品。
東京駅の駅ナカにも出店しているこのくず餅は、JR東日本のお土産グランプリで総合グランプリを獲得しています。
くず餅のおいしさの秘密は、原料となる小麦のでんぷん。
450日かけて乳酸菌で発酵させ、もちもちの食感を実現しています。
こんなに時間をかけて作るくず餅ですが、防腐剤などを一切使わないため、消費期限はわずか2日という、こだわりの一品です。
社内改革の成功と失敗
渡辺さんは元々銀行員でしたが、バブルがはじけた後、家業に入ります。
ところが、社内には昔ながらの職人が幅を利かせていて、「新人は工場長と口を聞いてはいけない、仕事は盗んで覚えろ」と、研修・教育の場も不十分。
日によっては、仕事が終わった職人が工場で酒盛りを始めてしまうこともありました。
この状況に、渡辺さんは大ナタをふるう改革を実施。
業績は上がったものの、一方で従業員のやる気はなくなり、退職者が相次ぐ事態になってしまったのです。
渡辺さんは「人を見ずに、仕組みばかりを見ていた。『みんなで作るんだ』という組織でないと意味がない」と気づき、それまでの行動を改めることにしました。
お客さんに幸せになってもらう
渡辺さんは、「消費者の皆さんに、おいしく乳酸菌たっぷりのくず餅を食べてもらい、幸せになってもらう」というわかりやすい目標を掲げ、同じ考えのメンバーを集め育てました。
現在では「職人のマイスター制度」を作る、全社員が無記名投票で幹部を決めるなど、新しい制度をいくつも作り、みんながやる気を出しやすい環境を整えています。
結果、「船橋屋」は従業員みんなが寄り添い、自主性を大事にする会社に生まれ変わっていきました。
伝統的な和菓子作りを守るだけではなく、発酵でんぷんを使った「くず餅プリン」を開発したり、老舗のコーヒーショップと組んで、くず餅と合うコーヒーを開発して提供したりするなど、さまざまな挑戦を続けている渡辺さん。
自社で発酵させているでんぷんの中に新種の乳酸菌を発見し、健康食品に生かそうという研究も重ねています。
自然体の自分で
渡辺さんの口ぐせは、「自然のままが一番、経営も同じ」。
「自然のものを自然の形で売って、無理はしない。でもチャレンジはする」というスタイルが共感を呼んでいます。
「リーダーをやめると、うまくいく」
「リーダーは理想的な存在ですが、その理想にとらわれず自然体の自分をみんなに見せ、自然体で会社を経営することが大切」と語る渡辺さん。
無理に企業を大きくして、売り上げをかさ上げしても、どこかにしわ寄せが来てしまいます。
あるがままの自分で、自分が売りたいと思ってる商品を売るということは、経営者の理想と言えるようです。
最後に、本日のお言葉をもう一度。
「リーダーをやめると、うまくいく」
(minto)
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2019年10月14日10時37分~抜粋