健康ライブラリー

健康ライブラリー 2019年10月13日

2019年10月13日(日)

ライフ・ヘルスケア
●教えてドクター 
★10月のテーマ「ゲノム医療」

名古屋大学 医学部附属病院 化学療法部教授
安藤雄一 先生

遺伝子パネル検査はゲノム医療を行うための検査です。検査をするには、まずがん細胞の組織(病理組織)を生検や手術等で採取します。その組織からゲノムを取り出して、そこに含まれる複数の遺伝子の異常を同時にまとめて解析します。膨大な量の遺伝子の情報を統計的にうまく整理して解析する技術は、バイオインフォマティクスと言いますが、そういった技術も進歩してきています。今までは一つ一つの遺伝子について、異常があるか無いかをひとつずつ調べていました。今は遺伝子パネル検査で遺伝子の異常をまとめて見つけることができます。検査することによって、がんにどういう特徴があって、どこに弱点があるのかが、全員の患者さんでわかるのが理想です。しかし、残念ながら今の段階では、何らかの治療につながるような検査結果がすべての患者さんでわかるわけではありません。それがわかるのは10人に1人あるか無いか、といった確率です。もし治療につながる遺伝子の変化が見つかった時は、それに合った分子標的治療薬を使うことになります。治験や臨床試験で開発中の薬を試すこともあれば、適用外使用と言って他のがんでは認められているけれど、その患者さんのがんでは認められていない薬を色々な制度を利用して使えないかと考えます。しかし、そのような候補薬は、理論的には効果があると思われても、まだ十分な検討がされていないため、実際に使ってみないと有効であるかはわかりません。遺伝子パネル検査の結果の解釈はとても難しく、どの病院でも同じようにできるとは限りません。かなり専門的な知識が要求されるので、そこにも大きな問題があります。
 
●スマイルリポート ~地域の医療スタッフ探訪
長田光代 先生(うばこやま調剤薬局 薬剤師)

★力を入れて取り組んでいる事
地区に役立つ薬剤師として、かかりつけ薬剤師として、自分自身の薬剤師のスキルアップを行っています。そして服薬ケア研究会に所属しております。服薬ケアとは、「患者さんに使用される医薬品の管理、及び、服薬に関する事柄、認識、意識、人間関係など、服薬を中心とした治療全般と、その反応に対するケアである。」と定義づけられています。服薬ケアの意義とは、情報を提供し物の管理や感情の整理を助け、患者さんの自己決定による行動変容により、薬物療養やそれに伴う生活改善が成功するように手助けすることです。また日常生活の中で薬物治療を行いながらその中心である患者さんが自己決定型の医療を受け、生活改善等も含めてQOLの向上を目指すことができるよう、支援するために必要なあらゆることを行うことです。最終的に目指すところは本当に真の意味での患者さん中心医療を実現することです。そのように目標を立てて努力しております。

★心に残るできごと
かかりつけ薬剤師としてお薬をお渡ししていた患者さんが、「ご自宅でご自身が外へ出られなくなった。」ということで患者さんのご家族である娘さんからご相談を受けました。「どうしたらよいかわからない。」とのことでしたので、介護の認定のことや、在宅医のことを紹介させていただく等、これからのことを話し合いました。それから在宅医の紹介から、私どもの薬局に「薬を配達して欲しい。」というようなアプローチが逆にくることもありました。キーパーソンである娘さんとのコミュニケーションをとりながら、在宅医療にも、かかりつけ薬剤師として介入できたという一例です。

★今後の課題
2025年問題と言われている「地域包括ケアシステム」というものが立ち上がっていると思いますが、まだまだ浸透していないと思われます。また今話題になっているACP(アドバンスケアプラニング)・「人生会議」とも言われている言葉があります。その研修会を緑区では名古屋市緑区医師会が中心に行っております。多職種で連携をとりながら、地域でスキルアップして研修会に取り組むことによって、より良い地域医療を進めていこうとしておりますが、まさに今研修段階です。
 
 

 
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