板東サンデー

追悼・高木守道さん 最後の出演番組から偲ばれるお人柄

中日ドラゴンズで名二塁手として数々のプロ野球記録を残し、監督としてもご活躍された高木守道さんが1月17日、急性心不全のため名古屋市内で亡くなられました。

高木さんは亡くなられる5日前の12日、CBCラジオ『板東サンデー』に出演され、盟友の板東英二さん、加藤由香アナウンサーと普段と変わらない、実に気さくな語り口で数々のエピソードを披露していただきました。

今回は高木守道さんを偲び、その放送回の一部を採録いたします。

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喫茶店で時間調整

「こんにちは、高木守道です」

オープニングで、板東英二加藤由香アナに続いて穏やかにあいさつをする高木さん。

板東「お変わりございませんか?」
高木さん「はい。お変わりございません」
板東「いやいや…毎日ずーっと一緒?」
高木さん「…一緒じゃないっすねぇ」

実はこの日の朝、高木さんに迎えに来てもらっていたという板東。
しかし板東がその時間より早く出て、高木さんがいそうな場所を覗いたところ、案の定そこにいたそうです。

板東「あれ…隠れ家のようなとこなんですね、たぶん」
高木さん「いやいや、ちょっと家を早く出過ぎたもんで、時間を潰してたんです。もうね、喫茶店で時間を調節してるんです。早く着いた時は…その分、飲むものが増えるんだけどね(笑)」

板東によれば、野球界はプロ入りが1年でも上であれば先輩で、その先輩が後輩の飲食を払うのが常識だといいます。
ちなみに板東は高木さんより年齢もひとつ上、入団も1年先です。

加藤アナ「じゃあ、先輩は板東さん?」
板東「時々ご飯に連れて行ってくれる時は、(高木さんの)奥さまが払ってくださるの」

加藤「板東さん、今日は…?」
板東「今日は、もちろんしょうがないですよ。たっかい喫茶店なんだこれがなぁ(笑)」

加藤「喫茶店行く時は板東さんが払って、お肉食べに行く時は高木さんが払うんですよね?」
高木「うん、そうだねえ」

お宝グッズは売れる?

この日の朝、高木さんが家にあるお宝グッズについて「あれって売れるのかなあ」と話していたという加藤アナ。

高木「…ありますよ。あの、殿堂入りの像とかね」
板東「いらないんだ?俺がとりあえず小さいトラックで行きますんで」
高木「ちょっとね、あの、そういういいもんは全部ナゴヤドームに飾ってある(笑)」
板東「なんやねん、それ!」
高木「自分の家にはないんですよ」
板東「残りモンかい!」

ナゴヤドームには自分のものは何も飾られてない、とすねる板東にこう尋ねる高木さん。

高木「あるんですか?そのトロフィーとかそういうもの自体が」
板東「いや、僕は他人から崇め奉られるようなことは…」

板東さんには失礼のしっぱなし

実は板東、選手時代の1966年(昭和41年)、セリーグ初の「一球勝利投手」という記録を作っています。
文字通り、8回裏に二死二・三塁のピンチに登板し一球でアウトをとり、その次のイニングで中日が逆転して勝利投手となったのです。しかし…

高木「昔はね、そういう賞があっても、トロフィーとかなかったんですよ。あってもちゃちなもんでね、飾るようなもんじゃなかった」

板東が賞を獲りだしたのは引退後の漫談、映画出演など芸能の仕事。

高木「やっぱりそっち(芸能界)行けばよかったんだ、最初っから。野球は趣味でやってたら、またそれは芸能界で『あいつ野球うまいぞ』っていうことになっていたんじゃないですか」
板東「違う。もう、そう言われてた(笑)」

高木「『あいつプロでやってたんじゃないか?そのわりにはアレやな』って(笑)」
板東「お前は失礼やで!」
高木「もういいじゃないですか、板東さんとの仲で『失礼だ』とかなんとか」
板東「何言うとるねんのやお前!」
高木「失礼のしっぱなしやがね(笑)」

バットを大切にしていた時代

実はこの年明けから、番組では高木さんメインのコーナーが作られていました。
その名は「板東サンデー 球辞林」。究極の野球辞典作りを目指すこのコーナー、2回目となる今回のテーマは「バット」でした。

プロ野球選手はバットにいろんなこだわりがあると思いますが、これだというバットが完成するまで試作品は何本作るんですか?」(リスナーAさん)

この質問に対して回答する高木さん。

高木「今はみな、それぞれメーカーの方がその人用の形から重さから合わせていっぱい持ってきてくれますから、バッターはちょっと振ってみてヒットが出ないとすぐバットを替えたりするんです。
でも昔は大事だったですからね、バット。折るとマネージャーに言うとバットをくれる」

板東によればボールは球団持ちでしたが、グローブとバットは選手持ちだったそうです。
それゆえ、選手は手入れもしっかりやっていたそうです。

高木「それなりの形をもったらね、牛の太い骨でバットを押さえるんですよ、木が締まるように。湿って重くならないようにビニールの袋に入れて部屋の隅に立てて閉まっておくという。それくらいやりましたよ」

高木さんによれば、中日の選手で手入れを最もしっかりやっていたのは谷沢健一さん。
袋の中に何本もまとめて入れる選手が多い中、一本一本丁寧に袋に閉まっていたそうです。

割ったコップで滑り止め!?

加藤「高木さんのバットの特徴はどういうものだったんですか?」

この質問にひと言「オーソドックス」と答える高木さんに、「もりみっちゃんは重さは何にも言わなかったね」と尋ねる板東。

高木「普通のを使ってましたけど、途中でちょっと軽めのバットを使ったりね。短く持って打ってませんでしたから、やっぱり長く持って振り回したいという意識があったから。それでホームランも打てるんですよ」

最近も軽めのバットを好む選手が多く、軽量化が進んでいるとか。

高木「試合前にグリップが滑ったりするとアレだから、ベンチにある茶碗やコップを割って、割れたところでグリップのところを削るんですよ、ザラザラにしてね」
板東「あ、それでよう割れてたのか。ピッチャーってのはお茶飲みたいのにベンチに帰ってきたら割れてるでしょう?お前かそれは!(笑)」

そこまで道具へのこだわりがあった時代だったことが偲ばれます。

板東「守道君も恋愛で結婚したんですけど、奥さんの肌触りは一生忘れんけど、それより大事ですもんね、バットの肌触りというか」
高木「いやいや…何ですか、その例えは!あっちの肌触りのが大事だな」
板東「どっちや」
高木「あっちと言えばわかるでしょう(笑)」

借りたバットをずっと使う時代

バットで重要なのはバランスだそうです。

高木「やっぱり軽いよりは多少重めの方がね、やっぱりボールも飛びますし。だけどバランスがいいとね、その重さを感じないんです。なかなかそういうのがなくてね」

ちなみに板東によればピッチャー専用のバットはなく、野手に借りることもあったようです。とは言え、大事なものゆえ、遠征先へは控えの投手がピッチャー用を2本ほど持って行ったそうです。

高木「僕らもね、時々他の選手のを『ちょっと借りてくよ』って出たりすると、そのバットをずっと使ったりとかね(笑)」

これもバットが貴重だった時代ゆえのエピソード。
今では前述のようにヒットが出ないだけで替えてしまえるほど、メーカーが補充してくれるので困らないようです。

選手自らしていたグリップの調節についても「今は松ヤニ塗って手袋はめてるでしょ?滑ることはなくなりましたからね」と語る高木さん。

他の選手から借りて使ったエピソードからわかるように、現役時代の高木さんはバットへのこだわりがそれほどなかったようです。

いろいろやりましたねぇ

現役時代の別のエピソードを語る高木さん。
試合中、ピッチャーが内野手へスローボールを投げているのをベンチで見ていた高木さん、そのボールを捕ったらピッチャーに速球で投げ返してやろうと思っていたそうです。

そしてある時、チャンスが訪れました。ピッチャーが自分に対してスローボールを投げてきたのです。
ところが高木さんはそれを落球してしまいます。

それを投げ返したところ、広島のベンチから古葉竹識監督(当時)が「おいどうしたんだ!」と審判のところへ駆け寄ったそうです。
この場合の判定はボール。ストライクゾーンに投げていないのでランナーがいない限りは問題ないそうですが…

高木「審判がね『おい、いろんな(余計な)ことをすんなよ』なんてね(笑)」
板東「こんなわがままなやつを監督にした中日ドラゴンズのフロントがわからん」
加藤「さっきは『こんないい人を…』って言ってましたよ(笑)」

また高木さんによれば、1塁に俊足のランナーがいて、次のバッターが足の遅い選手だった場合、内野フライをわざと落として1塁のランナーをアウトにし、遅い選手と入れ替えるというチームプレーもあったそう。
「いろいろやりましたねえ」と苦笑混じりに回想する高木さんです。

ミスタードラゴンズ

次回の内容を「ダブルプレー」と予告する加藤アナ。

高木「セカンド、ショートの見せどころ、見せるプレーのひとつですから。これをかっこよくプロらしいダブルプレーってのはね…アメリカはすごいんですよ」

残念ながら、名手と謳われた高木さんの口からは、ご自身の華麗なプレーに関する話を二度と伺えなくなってしまいました。

選手として、監督として、そして野球解説者として真面目に、時に熱く、そして時にお茶目な面を見せてくださった高木さん。
これまでの偉業を称え、お人柄を偲び、心よりお悔やみ申し上げます。
ミスタードラゴンズ、ありがとうございました。
(編集部/画像:加藤由香
板東サンデー
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2020年01月12日13時00分~抜粋

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