消費者庁は3月末、食品添加物の不使用表示に関するガイドラインを策定し、商品包装に「無添加」や「不使用」と記載するルールを厳格化しました。
「何が不使用なのかが不明確」などの理由により規制が強化され、今後、無添加などの表示は大幅に減る見通しです。
しかし、食品メーカーは「商品のセールスポイントが失われる」と困惑し、一部の消費者団体からも「商品を選ぶ際の大切な判断基準が失われる」と、見直しを求める声が挙がっています。
そのそも消費者にとって気になるのは、食の安全面に問題はないのかということ。
4月16日放送『北野誠のズバリサタデー』では、元毎日新聞編集委員でジャーナリストの小島正美さんが、無添加や不使用の表示廃止について解説しました。
無添加表示を規制する理由
小島さんによれば、今回のルール厳格化の意図は2つあるそうです。
まず1つは、消費者に誤解を与えるような無添加・不使用表示が、街中にあふれているという問題に対応すること。
そもそも、無添加や不使用表示に関するルールはあったのでしょうか。
小島さん「実は今の食品衛生法では、添加物を使った場合は記載することが必要なんですけど、使わないという表示については具体的なルールがなかったんですね。
表示の内容と矛盾するような用語を使ってはいけませんよという、一般論としてはあったんですけど、具体的にどういう場合に誤認を与えるかという規定がまったくなかったので、事業者がそれぞれの思いで自由に無添加・不使用表示をしてたというわけですね。
その結果、1年間ガイドライン検討会が検討しまして、10項目を作ったということですね」
ルールの中身は?
ガイドラインの中身は、どのようなものなのでしょうか。
小島さん「簡単にいうと、消費者に誤認や誤解を与えるような表示は止めましょうという意味の10項目なんですけど、例えば、健康や安全と関連づけるような表示はダメですよということですね。
他には合成・人工・化学という用語を使って表示してはダメですとか、過度に無添加を強調する、例えばものすごく大きな文字や色で強調してはいけませんよとか。
あと、同じ機能を持っている食品添加物を使ってるのに『無添加』と書いたり、原材料に添加物と同じような物が入っているのに『無添加』と書いてある物もダメですよとか、10項目にわたって書いてあるので、今後企業の人たちが見て、ちゃんと10項目を守ってくださいということですね」
添加物=悪ではない
ルールを厳格化する2つ目の理由は、2020年度に消費者庁が実施した「消費者意向調査」の中で、消費者の5~6割の人は「無添加」と見て「健康に良さそう」と感じるという結果に対し、消費者庁は「無添加だから安全とは限らず、リスク誤認に当たる」ととらえたため。
私たちの多くは知らず知らずのうちに「無添加=良いもの」「添加物=悪」と捉えていますが、添加物が必ずしも悪いわけではないですし、場合によっては添加物がないため食中毒につながるケースもあります。
小島さん「日本では今、800種類の添加物が許可されています。
半分近くは事業者が申請して認められているので、それぞれ必要があって使われているということですね。
例えば、豆腐のにがりなんかも添加物なので。
添加物なしでは作れない物もありますので、それぞれ必要があって使ってるということですね」
無添加をどうアピールする?
そうすると、今まで「無添加」や「添加物不使用」と表示していたのは、イメージ先行で売っていただけで、これらの表示はまったく無意味なのでしょうか。
小島さん「もちろん『無添加』と書くと売れることは事実なので、逆にプラスのこともあるんですね。
例えば、ワインを作る時に酸化防止剤を使わずに企業努力をして作る場合は、企業努力を認めて欲しいという意見が審議会の中でも出ましたので、それを否定してるわけではありませんので。
その場合は、『酸化防止剤の××を使っていません』と書くことはできます。
個別にわかるように書けば誤解は生じませんので、企業努力を認めていくということについては、否定されていませんね。
一番問題だと思っているのは、保存料不使用と書いてあっても、実際に保存目的の添加物が使われているのがあるんですよ。
こういうものは、特に消費者団体から止めるべきだという声が多かったので、それは減っていくんじゃないかなという気がします」
もし、添加物が不使用であることをアピールしたい場合は、どのような物が含まれているのか具体的に書いていく必要があるそうで、今後は表示の仕方が変わるかもしれませんので、消費者の側としても商品を選択する際に気をつける必要がありそうです。
(岡本)
北野誠のズバリ
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2022年04月16日09時43分~抜粋