『北野誠のズバリ』、今週は「お盆特別企画 怪談てんこ盛り」と題して、日替わりで怪談師をゲストに招いています。
最終日となる8月13日の放送には、怪異収集家でオカルト研究家の中山市朗さんが登場しました。
こちらでは中山さんが披露した怪談の中から、中山さんの知人の執筆家・Fさんが遭遇した「不思議な山小屋の話」をご紹介します。
頂上を目指すか下山するか
山登りが趣味なFさんは、アメリカ人の友達・J君とたびたび登山をしていました。
数日後にJ君がアメリカに帰国することになったため、思い出作りで地元の山に登ることに。2人は、日帰りできる少々キツめのハイキングコースを選びました。
午前中は晴れていた山道。しかしちょうど中間地点に差しかかったお昼過ぎに、バケツをひっくり返したような大雨に振られてしまったのです。
F君とJ君は「このまま進み、頂上の山小屋へ行く」「下山する」の2択を迫られました。
立派な山小屋を発見!
その時、「向こうに明かりがあるよ」と気づいたJ君。その山に詳しいF君は「あんなところに建物はないはず」と思いますが、確かに明かりが見えます。
半信半疑で近づくと、それはコーラの自動販売機の明かりであることが判明。さらに、その後ろには、立派な山小屋がありました。
まだ新しいその山小屋の扉をカラカラと開けると、そこには丸太の長椅子と長テーブルがあり、少し前まで人がいたような雰囲気でした。
F君とJ君はコーラを買い、小屋の中で雨をやり過ごすことに。1時間半後、ようやく太陽が顔を出しました。
「誰も使ってないし、ボロボロだよ」
「これから頂上を目指すと帰りが真っ暗で危ない」と判断し、下山することにした2人。途中、ボーイスカウトのお世話をしているおじさん・Oさんに遭遇しました。
「雨が降って大変だったね」というOさんに、「〇〇谷のところに山小屋があって。そこで雨宿りしました」と事情を説明するF君。
しかしOさんは「そんなはずはないけどね。小屋はあるけど、10年ほど前に閉じちゃって誰も使ってないし、ボロボロだよ」と、F君の話を信じてくれません。
近く、Oさんがボーイスカウトのこどもたちと山小屋の掃除をすると聞いたF君は、山小屋を再度確認するために参加することを決めました。
ほこりのない場所
後日、F君はOさんと共に再び山に入り、山小屋に向かいました。
雨宿りをした時はまだ新しい雰囲気でしたが、この日見てみるとOさんの言う通り山小屋は確かにボロボロ。コーラの自動販売機も確かにあるものの、外側だけで中の機械がありません。
山小屋から「掃除を頼みますね」と出てきたおじさんに、F君は「ここって10日ほど前、開いてましたよね?」と尋ねますが、おじさんの返事は「開いてないよ?」。
鍵も閉めたままで、中には誰も入れない状態だったというのです。
信じられないF君が山小屋の中をのぞくと、中はほこりだらけ。
しかしよく見ると、丸太の長椅子のF君とJ君が座った場所、そして長テーブルの缶ジュースを置いたところだけほこりがありません。
やはりF君とJ君が雨宿りしたのは、この山小屋だったのです。
今の天狗は自販機に化ける?
「不気味な話だけど、山の神様に助けてもらった気がする。雨宿りさせてもらって、ジュースを飲ませてもらえたので」と中山さんに語ったF君。
この話を聞いた中山さんが思ったのは、「天狗の類かな」ということ。
「昔の天狗は、羽うちわを持ってやってきて、道に迷ってる旅人を助けたりとか、薬を分け与えたり。今の天狗はひょっとしたら自動販売機に化けて(笑)。コーラを飲ませてくれるのかな、という気もしますね」と中山さん。
山の神の助けか、はたまた天狗の仕業か。
不思議な山小屋に救われた、不思議なひと時の話でした。
(minto)
北野誠のズバリ
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2021年08月13日15時04分~抜粋