『北野誠のズバリ』、健康の悩み、夫婦の悩みなどを解決する「中高年よろず相談室」のコーナー。
3月12日の放送で取り上げたのは、「いろいろな音にイライラしてしまう。音がしんどい」と悩むリスナーAさん(50歳・男性)からのおたより。
心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生に、音を不快に感じる原因や、対策方法についてうかがいました。
人類の一部が聴覚過敏である理由
「40歳半ばを過ぎてから、音に妙にイライラします。
例えば近づいてくるバイクの音、空ぶかしの音や、事務所で大声で話す同僚の声、スーパーで衣類や食品を積んでフロアを移動するゴロゴロ、階段を上がる足音など音にすごくイライラし、仕事中は物を投げつけたくなります。
病院へ行った方がいいのでしょうか。正直、音がしんどいです。私にはキレる老人がわかります」(Aさん)
吉田先生によると、Aさんの症状は「聴覚過敏」。
原因として圧倒的に多いのは、脳の発達障害です。
しかし、これには深い意味があります。
人類が生き延びるためには、集団の中に1人は音に敏感な人がいることが大切でした。
例えば、狼が襲ってくるかすかな物音に1人でも気づけば、皆で逃げることができます。
つまり人類の遺伝子は、わざと一部の人が聴覚過敏になるようにできているというのです。
難聴なのに音が不快?
大人になってから発達障害の症状に気づくことも多いため、Aさんが聴覚障害である可能性もあります。
しかし、明らかに中高年になってから聴覚過敏になった場合は、「難聴」になっているケースの方が多いといいます。
難聴なのに音を不快に感じるという一見正反対に思える症状が起こるのは、聴覚に「リクルートメント」という現象が起きるため。
例えば、ラジオを聴いている時に電波の状況が悪くなり聞こえが悪くなったら、人は取り合えずボリュームを上げます。
こうすることで、音質は悪いままですが、ボリュームを上げることでひとまず聞き取ることができるようになります。
雑音も拡大されてしまう
人間の聴覚の仕組みも、これと同じ。
クリアに聞き取ることができなった場合、耳と脳が連携して、無意識のうちにボリュームを上げます。
就職活動のことをリクルートと呼ぶのは、会社の人員を「補充する」という意味。
聴覚の場合は、聞こえにくくなったのをボリュームを上げて補充するという意味から、リクルートメントという名前がついています。
しかし、この時に雑音も拡大されてしまうため、不快になったりイライラしてしまったりしまうのです。
これはまさに、Aさんの症状とピッタリ当てはまっています。
中高年に多い「突発性難聴」
それでは、一体なぜ難聴になってしまうのでしょうか。
吉田先生によると、40~60代にかけて比較的多いのは「突発性難聴」。
これはある日突然音が聞こえなくなる病気で、芸能人の方でも患っている方が多い病気です。
耳の奥の「内耳」の細胞に小さな毛が生えていて、これが振動することで音を感じ取っています。
しかし、この毛の部分が傷ついてしまうと、音が聞こえなくなってしまうのです。
突発性難聴に気づかないまま聴覚過敏で耳鼻科に行き、突発性難聴が見つかることもあります。
「いずれにしても耳鼻科!」
突発性難聴は片方の耳だけで起こります。
もう片方は正常に聞こえているため、自分では難聴に気づいていないこともあるのです。
両耳ともに聞こえなくなる場合もありますが、高い音だけ聞こえなくなるというケースもあります。
「聞こえ方が変だな?」と思っている間に、リクルートメントでボリュームが上がることでノイズが大きくなり、いろいろな音にイライラするという症状だけが残るというわけです。
特に突発性難聴の場合は、早く治療をしないと聴覚の異常が固定化されてしまい、治りにくくなってしまうのです。
この他にも、耳の奥の内耳にリンパ液が過剰に溜まる「メニエール病」の可能性や、鼓膜の奥で音の振動を伝えている「あぶみ骨」が動きにくくなる病気の可能性もあります。
「いずれにしても、耳鼻科ですね!」と吉田先生。
コロナ禍のストレスで不快感が増大
また、精神的なストレスが関連するケースもあります。
精神的に不安定なときは、脳の中で音を拡張する仕組みが働き、生活の雑音が大きく不快な音に感じるようになってしまいます。
昨年からのコロナ禍における自粛生活のストレスで、日本列島全体が音に対する不快感が増していわれています。
実際、家庭での音に関するケンカや、騒音による近所トラブルも増えているのです。
イライラには「鳥のさえずり」
イライラしたり、音が気になったりする場合、対策としてこんな方法があります。
イギリスのサリー大学の研究では、「鳥のさえずりを聴くと、心がポジティブになってイライラしにくくなる」という論文が出ています。
鳥のさえずりは「近くに危険な動物がいない証拠」なので、人間の脳も本能的に安心して、心が穏やかになるのです。
生活の雑音には、特に「フクロウのさえずり」が効果的だといわれています。
フクロウのさえずりは音が低いため耳に優しく、夜中ぐっすり眠ろうとする心理的な作用もあるのです。
フクロウのさえずりほどではありませんが、波の音や川のせせらぎといった自然界の音も、同じような効果があります。
吉田先生は「波の音が好きという人はそれで十分なので、それを流し続けて生活の音を隠すことがおすすめですね」と教えてくれました。
(minto)
北野誠のズバリ
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2021年03月12日14時12分~抜粋