多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

廃業続出!日本の酪農の現実と打開策とは

日本の酪農が苦境に立たされています。
酪農が儲からなくなり、廃業する人が増えているのです。酪農業界では今、何が起こっているのでしょうか。

6月1日放送の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』(CBCラジオ)では、CBC論説室の北辻利寿特別解説委員が、日本の酪農が抱える問題について解説しました。

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10年前の「バター不足」

今回の酪農危機を語る上で、まず、今から10年ほど前に歴史を遡ります。

2014年(平成26年)に、高齢化や後継者不足などで離農する人が多くなり、牛乳が不足し始めました。これで起きたのが「深刻なバター不足」。スーパーの棚からバターが姿を消しました。

このため国は、牛乳の増産に乗り出しました。牛を飼う施設の整備、機械導入の補助金を最大半額まで出す「畜産クラスター事業」を立ち上げたのです。中には数億円を手にした酪農家もいたのだそう。

休校と外食自粛の逆風

増産体制に乗り出したからといって、すぐに牛乳ができるわけではありません。5年経った2019年にようやく増産に転じました。

しかし、2020年に予想外の出来事が起こりました。「新型コロナウイルスの蔓延」です。

この思いがけないコロナ禍は、日本の牛乳を直撃しました。まずは学校給食です。全国で学校が休校になったことで、給食用の牛乳が余ることに。

もう1つは外食自粛による外食産業の休業です。相次ぐ休業で、生クリームなどの料理用の乳製品が使われなくなってしまいました。

せっかく増産態勢に入ったのに牛乳が続々と余り始め、生産するだけ赤字になってしまうという負のスパイラルに陥ってしまったのです。

酪農家を襲ったトリプルパンチ

そして2022年、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、乳牛のエサの価格が一気に値上がりしました。牛のエサは牧草と穀物で、穀物はほぼ輸入に頼っている状態。

特に牛は、トウモロコシを好んで食べます。ウクライナは、世界でも有数のトウモロコシ輸出国。エサ代が高騰し、酪農家はコストアップの大きな危機を迎えてしまったのです。

さらに急激な円安が世界市場を襲いました。

コロナ禍、ウクライナ危機、円安のトリプルパンチが、多くの酪農家に廃業を決意させたのです。

酪農維持のためにできること

酪農が盛んな北海道の今年1月における酪農家は4,822戸。5,000戸を切ったのはなんと初めて。酪農危機はますます深刻な状態といえます。

今後また牛乳の需要が高まった時に、果たして供給が間に合うのかどうかも問題です。かつては5年かかりました。また同じことを繰り返さないためにも、いかに酪農家を維持するかというのが大事です。

とはいえ、政府もただ手をこまねいているわけではなく、いろいろと対策を講じています。

まずは昔ながらの「自給自足」です。輸入に頼るのではなく自分たちで牧草を育てようという「SDGs」に基づく循環型社会を形成すること。

また、国内で余ってしまう牛乳を輸出すること。そして、チーズなどの乳製品を輸入に頼らないこと。

これが日本の酪農の現状。北海道を中心とした日本の酪農が今、大きなピンチに見舞われています。
(minto)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2023年06月01日07時19分~抜粋

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