多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

VRやカメラの進化に一役買う?日本の技術が生み出した「究極の黒」

この1月に国立研究開発法人産業技術総合研究所が、今までにないほど黒い「至高の暗黒シート」なるものを開発したことを発表しました。

世の中には十分に黒いシートがたくさん出回っていますが、どれほど真っ黒なものなのでしょうか。

2月20日放送『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』では、この研究を行ったグループのグループ長・雨宮邦招さんに、パーソナリティの多田しげおが電話で話を伺いました。

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物が黒く見えるのはなぜ?

まず、このシートがどれほど黒いのかについて雨宮さんに伺ったところ、「非常に黒いので、空間にぽっかり穴でも空いたかのような、本当に真っ黒なシートになっています」と答えられました。

それほどの黒さをどうやって作られたのかということを聞く前に、まずは私たちはどうやって色を識別しているのかということから、おさらいしてみましょう。

物に色がついているように見えるのは、太陽光線に全ての色が含まれていて、例えば赤く見えるのは、ある物体に光が当たって赤い波長の光線のみ反射させ、目に飛び込んできているからです。

そして、すべての光線を反射させない、どの光も返って来ないと黒く見えます。

その黒さを光の吸収率として表現、つまり吸収率が高ければ高いほど黒いということになりますが、至高の暗黒シートは99.98%と、ほぼ100%に近い値を示しています。

「至高の黒」を生み出した仕組み

では、光を吸収させるため、至高の暗黒シートの表面はどのような構造になっているのでしょうか。

雨宮さん「暗黒シートはその表面に『光閉じ込め構造』と呼ばれるミクロな凸凹を持っています。

光にはいろんな色があるかと思いますけど、暗黒シートの表面ではミクロな凸凹に入ってきた光が何度も反射と吸収を繰り返して、正味の反射率がゼロに近づいていきます。

そのすべての色の光を等しく吸収するので、色がついていない黒い色に見えるということになります」

表面にくぼみがあり、そのくぼみの表面にはさらに凸凹がたくさんあり、その凸凹の表面にも凸凹があって……と、とにかくたくさんの細かな凸凹があることで、差し込んできた光が外へ反射しないような構造になっているとのことです。

このくぼみや凸凹はナノメートル単位の細かいものですので、暗黒シートを手で触ってもざらざら感はほとんど感じられないようです。

人間の目は黒に対して敏感

過去にも暗黒シートは開発していましたが、従来の吸収率99.5%から、さらに99.98%まで引き上げることができました。

…と言われても、あまり変わらないように聞こえますが、実は人間の目ではその黒さの違いを識別できるそうです。

雨宮さん「実は人間の目って黒さにとても敏感なんですね。暗黒シートはこれまで目に見える光の吸収率は、99.6~99.7%程度に留まっていたんです。

これでもかなり黒いという評価をいただいてたんですけども、人間の目の黒さに対する敏感な特徴から、見慣れてくると何か物足りなかったんですね。

すでに世の中に出回ってる黒い物で99.7%からもう少し黒い物もあるんですけれども、それと比べても光の反射の量で言えば、5倍から10倍以上の違いがあります。

そうすると人間の目にとって、その光の量はまったくレベルが違うといいますか、はっきり区別できるぐらい黒いということが実感できるかなと」

どのような分野に活用される?

それだけレベル違いの黒ができあがったということですが、どのような分野に活用できるのでしょうか?

雨宮さん「光の余計な乱反射を抑えたい場面というのは結構多いです。
例えばカメラのレンズの内側をできるだけ黒くすることで、よりクリアな撮影ができるようになったり、VR(バーチャルリアリティ)のヘッドセットの内側の側面をなるべく黒くすることで、映像に集中できて没入感が演出できるといった応用が考えられます。

実際に肉眼で物を見た時の明るい部分と暗い部分、暗い部分の中でもわずかなグラデーションというものを今の写真やディスプレイは表現しきれていないんですけど、非常に黒い物ができることによって、可能になっていくんじゃないかと考えています」

単に黒色に深みが出るというだけではなく、色のない物が現実に近づくことで、さまざまな分野に応用ができるようです。
(岡本)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2023年02月20日07時17分~抜粋

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