多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

あなたは大丈夫?知っておきたい「肥満」と「肥満症」の違い

専門医が身近な病気のことをわかりやすく解説する『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』(CBCラジオ)のコーナー「健康で生きる」。

1月のテーマは「外科・消化器・一般外科の病気」です。



25日の放送では消化器・一般外科 主任部長の渡邉 克隆先生が「肥満症の減量手術」について解説します。

聞き手は多田しげおです。

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肥満は病気なのか?

今回のテーマは「肥満症」ですが、そもそも「肥満」は病気なのでしょうか?

渡邉先生「身体の骨格から考えられる標準の量を超える脂肪が蓄積することを『肥満』といいます。
肥満は、いわゆる”太っている状態”を指し、病気(疾患)を意味するものではありません。

肥満であるかどうかは、体内の脂肪量によりますが、その指標としてBMIが用いられています」

BMIとはBody Mass Indexの略で『体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))』で求められるものです。
WHO(世界保健機関)による肥満の判定基準はBMIが30 kg/m2以上を指しますが、日本では、日本肥満学会が定義した基準が用いられており、BMI 25 kg/m2以上を肥満としています。

「肥満症」の判定基準

では「肥満症」と判定されるのはどんな場合でしょうか?

渡邉先生「肥満が病的な肥満と見なされるかどうかは、肥満を原因とする疾患があるかどうかによります。
合併する疾患を有している肥満を『肥満症』と呼びます。

肥満症は20歳でBMI 45の人は同年齢の正常体重者より余命が13年短くなるという報告(WHOより)があり、合併する疾患によって生命に危険が及ぶため、医学的に治療が必要となります。

肥満先進国といわれる米国では肥満が原因で年間40万人が死亡しており、予防できる死亡原因の第2位と言われています」

手術の条件

多田「減量手術は肥満症の中でどういう方に適応されるんですか?」

渡邉先生「当科では以下の条件をすべて満たす方を減量手術の適応としています。

1:年齢が20歳以上
2:BMIが 35 kg/m2以上
3:糖尿病、脂質代謝異常、高血圧のうち1つ以上を合併している
4:6か月以上の内科的治療で十分な体重減少および肥満に伴う合併症の改善が見られない
5:手術に耐えられない身体、精神的な問題がない

肥満が原因で心臓や肺に重大な疾患を抱えている方は、手術に耐えられるかどうかをしっかり検討した上で、手術を行います」

バナナほどの大きさに

肥満症の手術にはどのような方法があるのでしょうか?

渡邉先生「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行っています。これは、腹腔鏡下で胃の大半を切り取り、胃を細くする手術術式です。

胃の小彎(しょうわん)側を約3-4cm残すように、大彎(だいわん)側の胃を切り取ります。
孔の1つを少し広げて、切り取った胃を取り出して手術を終わります。
結果として、お腹の中に残った胃はバナナくらいの太さになります。
この手術は、胃の大部分を切り取ってしまうため、胃を元に戻すことはできません」

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術により、どの程度減量するのでしょうか?

渡邉先生「手術後の体重減少は通常『超過体重減少率』で表します。
超過体重減少率は、減量効果を測る指標で、日本人の理想体重であるBMI22kg/㎡を基準とした時の超過体重の何パーセントが治療により減ったかを表したものです。
この超過体重減少率は70%となります」

効果はかなりのもの

術後の効果はどうでしょうか?

渡邉先生「高度の肥満症で、手術を受けた場合と受けなかった場合の生存率を比較したカナダでの研究論文があり、その研究では死亡率が手術群では0.68%(手術合併症による死亡率0.4%を含む)、非手術群では6.17%と、手術を行うことで死亡率を1/9に減らすことができると報告されています」

かなり効果がある手術だそうです。
今回は大同病院 消化器・一般外科主任部長の渡邉先生が「肥満症の減量手術」について解説しました。
(新海 優・Yu Shinkai)
 
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2023年01月25日08時14分~抜粋

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