専門医が身近な病気のことをわかりやすく解説する『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』(CBCラジオ)のコーナー「健康で生きる」。
1月のテーマは「外科・消化器・一般外科の病気」です。
18日の放送では消化器・一般外科主任部長の渡邉克隆先生が「ヘルニア」について解説します。
聞き手は多田しげおです。
ヘルニアとはどんな病気?
まず、ヘルニアとはどのような病気なのでしょうか?
渡邉先生「ヘルニアとは、腹腔内容物(腸管や脂肪)が、腹壁に生じた(または生来有する)欠損部(脆弱となった部分)を通じて飛び出す状態のことで、いわゆる『脱腸』です。
そして、左右の太腿の付け根部分に発生するヘルニアの総称を『鼠径ヘルニア』といいます。
腹部に生じるヘルニアの約80%は鼠径ヘルニアです。
鼠径ヘルニアには一般的に『外鼠径ヘルニア』『内鼠径ヘルニア』『大腿ヘルニア』の3種類があります。
鼠径部のどの部分にヘルニアが発生するかによって、種類が分けられています。
外鼠径ヘルニアは解剖学的な理由から、必然的に男性に多く発生します。
また、大腿ヘルニアは女性が発症することが多いと言われています」
原因や症状について
ヘルニアの原因は何でしょうか?
渡邉先生「鼠径ヘルニアを発症する原因は、生まれつきからある先天性と生まれた後に発症する後天性があります。
先天性の場合、生まれたときからヘルニア嚢が存在するため、乳児期から鼠径ヘルニアを発症します。
後天性の場合、立ったり座ったりという慢性的な鼠径部への圧力に加え、加齢による腹壁の脆弱化によって鼠径ヘルニアを発症します」
具体的な症状についても尋ねました。
渡邉先生「症状は鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、あるいは痛みを訴えて病院に来られる方がほとんどです。
また、立っている時に膨らみや違和感があるのに、横になると内容物がお腹の中に戻るので膨らみや違和感がなくなるという症状は、鼠径ヘルニアならではのものです」
治療は手術が原則
治療方法はどのようなものでしょうか?
渡邉先生「鼠径部ヘルニアは病気というより構造的な問題であるため、自然治癒は期待できません。
程度や症状によってはしばらく経過を見ることもありますが、治療は手術が原則です。
手術の方法は、鼠径部を3~4cmほど切開する鼠径部切開法と、腹腔内に腹腔鏡を挿入する腹腔鏡下修復術の2種類が存在します。
手術ではまず、筋肉や靭帯の隙間であるヘルニア門から飛び出してしまったヘルニア嚢(腹膜が伸びてできた袋状の膜)を、周囲の組織からヘルニア門の裏側まで十分に剥離します。
そして、剥離したヘルニア嚢を切除、または還納(元の場所へ戻す)し、ヘルニア門を閉鎖ないし縫縮します。
以前まではヘルニア門を縫い閉じていましたが、現在はメッシュという人工の膜をヘルニア門にあてがう方法が一般的です」
近年は治療方法も進歩してきているそうです。
今回は大同病院 消化器・一般外科主任部長の渡邉先生が「ヘルニア」について解説しました。
(新海 優・Yu Shinkai)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2023年01月18日08時13分~抜粋