多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

遺伝や後遺症、命に関わることも…「くも膜下出血」とは?

専門医が身近な病気のことをわかりやすく解説する『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』(CBCラジオ)のコーナー「健康で生きる」。

12月のテーマは「脳神経外科の病気」です。
14日の放送では大同病院・脳神経外科の辻内先生が「くも膜下出血」について解説します。

聞き手は多田しげおです。

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どんな病気?

神経外科は脳外科とも呼ばれ、脳・脊髄・神経を専門に診断・治療する診療科です。
脳卒中などの脳血管障害、頭部外傷、脳腫瘍などの診察・手術を行いますが、脳卒中には、脳梗塞、脳出血、そして今回テーマとなる「くも膜下出血」があります。

多田「くも膜下出血とはどういうものですか?」

辻内先生「くも膜は、頭蓋骨と脳みその間にある半透明の網状組織で、手術用の顕微鏡で見ると本当に絡まった蜘蛛の巣のように見えます。

脳の大きな血管はこの膜の中に埋まっている状態のため、この大きな血管が破れるとくも膜の内側で出血をした状態となり、これをくも膜下出血と言います。

脳出血との違いは脳の中で出血が起こるのか、くも膜の中で出血が起こるのかですが、一般にくも膜下出血では脳内に入る直前の血管が破れ、出血の勢いが激しく、激しい痛みに襲われ突然重篤な状態となるため、非常に怖い病気です」

突然発症する病気…

多田「突然なんですね。かなり激しい痛みですか?」

辻内先生「『雷に打たれたような痛み』とか『ハンマーで殴られたような痛み』に例えられることがあるように、人生最大の頭痛が突如として起こることが多いです」

多田「これにより命を落とすという場合も多いんですか?」

辻内先生「一般的にくも膜下出血を発症すると4割前後の方が命を落とします。
重篤な場合はその場で呼吸が止まってしまうこともありますし、病院に搬送された場合でも手の施しようがなく救命できないことがあります。

また急性期に脳梗塞などの合併症を生じやすく、これによって亡くなる方もいらっしゃいます。

くも膜下出血による脳梗塞予防の新薬等が出ており、今後治療成績が多少改善する可能性はありますが、予後を左右する最大の因子は当初の出血量や意識状態ですので、どの程度で最初の出血が止まるか、運の要素が大きいです」

残りやすい後遺症

多田「一命を取り留めることができても後遺症を残す人も多いのでしょうか?」

辻内先生「4割前後の方が亡くなるため、救命できる方は6割程度ですが、そのうちの半数の方は寝たきりになるなど、重篤な後遺症が残って自宅に帰ることができない状態となります。

全体の3割程度の方が自宅に帰ることができますが、自宅に帰ることができるうち半数の方には何らかの後遺症残ると言われています」

多田「非常に怖い病気だと思いますが、原因はどんなことが多いんですか?」

辻内先生「くも膜下出血の85%前後が『脳動脈瘤』と言われる血管にできた瘤が破れることによって発症します。

脳動脈瘤以外では「脳動静脈奇形』と言われる血管の異常からの出血や、詳しく検査をしても原因がわからない『特発性くも膜下出血』と言われるタイプもあります。

多田「その脳動脈瘤ができる原因は?」

辻内先生「脳動脈瘤は様々な要素が重なって生じると考えられています。
一般に『くも膜下出血を発症した親兄弟がいるなど家族歴がある人』『血圧が高い人』『喫煙をする人』『適量を超え飲酒をする人』は、くも膜下出血を発症しやすいことが過去の研究でわかっています。

また女性の方が、男性よりも2倍ほどリスクが高いことも過去の統計からわかっています」

予兆はある?

多田「普段の生活で予兆はないんですか?」

辻内先生「中には動脈瘤の壁が急激に引き延ばされたり、僅かな出血を来したりした場合に、比較的軽い頭痛を感じて来院される方も見えます。

また動脈瘤の場所によっては、物が二重に見える等の症状が先行する場合もあります。

しかしながら、こういった方は少数であり、一般的にはしっかり出血をして初めて症状が出る方が殆どです」

多田「そうなると検査をして、動脈瘤のあるなしはわからないんですか?」

辻内先生「頭部MRI検査を行うと、脳動脈瘤のあるなしを調べることができます。
脳ドックなどで破れる前の脳動脈瘤が発見されれば、必要に応じて破裂予防の開頭手術やカテ―テル治療を行うことができます。

くも膜下出血を生じた家族がいる、高血圧がある等で不安を感じる方は、脳ドックで頭部MRI検査を受けて頂くのが良いと思います」

多田「もしもこの病気がわかったらどうするんですか?」

辻内先生「動脈瘤のサイズ・カタチ・できた場所によって治療を進める場合もありますし、小さいものは経過観察をさせてもらい様子を見ます」

治療法は?

多田「こぶを手術で取ることはできるんですか?」

辻内先生「動脈瘤に関しては治療方法は大きく分けて2つあります。

1つは『開頭クリッピング術』と言って、頭を開いて顕微鏡で脳の隙間を見て行って、血管のところで動脈瘤の根っこのところに小さいクリップをかけてくるという手術です。

もう1つは、カテーテルを使った『コイル塞栓術』と言われる治療で、カテーテルを使って動脈瘤の中に詰め物をして動脈瘤が破れないように、というような方法があります。

多田「高血圧などがある方は、できたら脳ドッグを受けた方がよさそうですよね?」

辻内先生「脳ドッグでMRI検査をやっていただくのが安心につながるかなと思います」

大同病院・脳神経外科部長の辻内先生が「くも膜下出血」について解説しました。
(新海 優・Yu Shinkai)
 
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2022年12月21日08時16分~抜粋

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