CBC論説室の北辻利寿特別解説委員が、様々な日本での最初の出来事を物語る、『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』(CBCラジオ)の「日本はじめて物語」のコーナー。
10月19日の放送では、大阪出身の多田しげおにも馴染みのある「串カツ」の物語です。
串カツのはじまり
カツのルーツは、フランスの料理「コートレット」にあると言われています。
これが日本でカツレツ、トンカツとなり、のちに一口サイズで串に刺すようになって生まれたのが「串カツ」。
さらに地域ごとにその文化を育んで現在に至っています。
串カツのはじまりには諸説あります。
有力なのは、昭和の初めごろに大阪市浪速区の新世界にあった「だるま」というお店が発祥という説です。
北辻「昭和4年の創業なんですけど、この説が一番有力。だるまの場合は、最初は牛肉だったらしいです」
多田「大阪では、昔から肉と言ったら牛が定番です」
キーワードは「早さと安さ」
大阪の繁華街・新世界は下町中の下町で労働者の街とも言われていました。
北辻「一日の仕事を終えた人たちが、栄養たっぷりの料理を食べて元気をつけたい。そんな街で、店が人気を得るためには、早さと安さが必要だったんです」
「早さと安さ」を実現するために選ばれたのは、カウンターに並んで立ったまま食べる立ち食いスタイル。
しかし、トンカツをそのまま出しただけでは、食べるのに時間がかかります。
そこで、あらかじめ小さくして串に刺しておく串カツが生まれました。
串に刺す利点
北辻「片手に串カツ、片手に酒。そうするとお客さんの回転も速く効率的です。次々とお客さんが入って来るから、食材も安く提供できるんです」
これがお店の知恵。
さらに、串に刺すことによって、支払いの時に何本食べたかが簡単に分かります。
多田「時々下に落とすやつがいますが。おばちゃんから『兄ちゃん、下に落としたらアカンで』と言われるわけですね」
北辻「串の本数で計算できる。これは"早さと安さ"の『早さ』です」
二度漬け禁止
次なるアイデアは、「二度漬け禁止」で知られる共有のソース。
カウンターに置いてあるステンレスのような容器には、ウスターソースが入っています。
お客さんごとに別々の皿でソースをかけていると時間がかかりますし、共有にすることでお店の経費も安く抑えられます。
そこで、お客にソースをつけさせるセルフサービスが考え出されたわけです。
もちろんカウンターのお客さん同士の共有なので「二度漬け禁止」。
一度口にしたものはつけてはいけないルールが生まれます。
この共有ソースも店側の「早さと安さ」に貢献しているわけです。
昔は二度漬けしていた
北辻「あれは『ドブ漬けソース』とか言いますね」
多田「私、大阪の人間ですけども『二度漬け禁止』は新しい言葉です。昔はあれ、平気でしてたよ。横の知らんおっちゃんとジャボンと二回漬けて食べてた。あれは慣れです」
大阪出身者から衝撃発言が飛び出しましたが、新型コロナウイルスの流行以降、だるまでは共有のソースがなくなり、カウンターに置いてあるソースボトルからかける方法に変わりました。
共有のソースにドボンと漬けるのが、串カツを食べる楽しさでもあったのですが、新型コロナの影響でこの文化も変わりつつあるようです。
それぞれの串カツ
大阪だけでなく、日本全国で自然発生的に生まれた串カツは各地でいろいろと違いがありました。
大阪を中心とした関西では、全国的に見ても小ぶりの肉なんだそうです。ソースはウスターソースで、キャベツは角切りです。
北辻「関東は肉はやや大きめ。3センチほどで、肉の間に玉ねぎや長ネギを入れています」
多田「大阪人からしたら、あれはイカン」
関東では濃い目のトンカツソースを使用しています。
そして名古屋では赤味噌のソースです。
北辻「モツなんかを赤味噌で煮込んだお店に行きますと、串カツもあって、どて煮の味噌に串カツを漬けて食べる。これ、私大好きなんですよ」
「どて煮」とは関西でいうところの「どて焼き」のこと。中京圏ではお店で「もつ煮」と言っても、この味噌で煮込まれた「どて煮」が出てくる場合がほとんど。
北辻が話したように、どて煮の味噌に串カツを浸けて食べたのが、名古屋名物「味噌カツ」のルーツという説もあります。
北辻「アツアツの串カツを片手で持ってほおばる瞬間、人は誰しも生きている喜びを噛みしめるんじゃないでしょうか」
最後に「串カツはじめて物語のページには、日本の文化の歩み、その確かな1ページが、香ばしい揚げたての香りと共に刻まれています」と纏めた北辻解説委員でした。
(尾関)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年10月19日07時40分~抜粋