専門医が身近な病気のことをわかりやすく解説する『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』(CBCラジオ)のコーナー「健康で生きる」。
10月のテーマは「消化器内科の病気」です。
19日の放送では大同病院・消化器内科部長の西川先生が「炎症性腸疾患」ついて解説します。
聞き手は多田しげおです。
日本で明らかに増加
炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん)、聞き慣れない病名ですが、どういった病気なのでしょうか?
西川先生「炎症性腸疾患とは、潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの病気を指し、国が定める指定難病になっています。
この2つの疾患は慢性的に腸管に炎症を起こすもので、いい状態と悪い状態を繰り返します。
潰瘍性大腸炎は大腸のみに炎症を起こすのに対して、クローン病は口から肛門まで全ての腸管に炎症が起こります。
炎症が非常に高度な場合や、腸管が狭くなり食べ物の通過が悪くなる場合、腸管同士が張り付いてしまうような場合、腸が破れてしまう場合では、手術が必要となるケースもあります。
また、炎症が持続することで、腸管にがんができてしまうリスクが高いことも問題です」
最近、日本では炎症性腸疾患にかかる人が多くなってきているそうです。
西川先生「発症年齢のピークは10代後半から30代前半の若い方に見られますが、最近では比較的高齢で発症する患者さんも増えています」
原因は?
この病気の原因は何でしょうか?
西川先生「潰瘍性大腸炎、クローン病ともに原因はまだはっきりとわかっていません。
ただ、遺伝的な要因、食事やストレスといった環境的な要因、免疫の異常が関係しあって発症していると考えられています。
また、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の変化の関連も報告されています」
どのような症状があったら疑うべきでしょうか?
西川先生「主な症状は下痢や血便や腹痛といったものです。クローン病では痔など肛門にも症状を認める場合が多いです。また、発熱や体重減少を起こすこともあります。
さらに、腸管外症状といって腸とは関連のない症状を契機に診断される場合もあります。
具体的には、関節の痛み、皮膚の異常、口内炎などです。しっかり問診して確認する必要があります」
早めに病院へ
西川先生「この病気の最も一般的な症状は、下痢や腹痛ですので、胃腸風邪と間違われたり、単に体質的なものと思われたりしている場合もあります。
症状が長く続く場合や、治りにくい痔の場合は炎症性腸疾患を考えて、医療機関を受診していただくことをおすすめしています」
検査方法はどういったものがあるのでしょうか?
西川先生「大腸内視鏡検査をはじめとした内視鏡検査が中心となります。
クローン病の場合は小腸に炎症を起こす場合も多いため、小腸の検査も必要です。
小腸は口や肛門から遠いため、通常の胃カメラや大腸カメラでは観察が困難でしたが、近年では特殊内視鏡を用いていて、1つはカプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡といったバルーンが2つついた特殊な内視鏡を使って検査が可能となっています」
治療方法は?
治療方法についても尋ねました。
西川先生「炎症性腸疾患の治療は非常に多岐にわたります。
飲み薬、注射、顆粒球除去療法といって血液から炎症物質を取り除く治療、内視鏡治療といった内科の治療や外科治療などです」
このような治療で完治すると考えていいのでしょうか?
西川先生「現時点では炎症性腸疾患を完治する治療法はありません。なので、長期的に見て症状が落ち着いているような目標を達成していくということになります」
先にもあったように炎症性腸疾患は若い人がかかることが多い病気です。
西川先生「若い人に多いということは、学生さんや仕事をしている方に多いという疾患になりますので、社会生活と両立していくということが重要です。
なので、普段仕事を含めて日常生活を安心して過ごしていただけるようにサポートすることが我々の務めであると考えています」
チームで治療を
完治こそ難しいものの、良好な状態を維持するのが治療の大きな目標です。
西川先生「いい状態を維持して、安心して日常生活を送っていただくということと、長期的に見て、将来患者さんが同じようにいい状態で過ごしていただけることを目標に治療を行います。
そのためには普段から医師と患者さんとの間で治療の目標とそれを達成するために必要なことを共有して、患者さんを中心とした多職種によるチームで治療を継続していくことがとても大切です」
大同病院・消化器内科部長の西川先生 が「炎症性腸疾患」について解説しました。
(新海 優・Yu Shinkai)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年10月19日08時14分~抜粋