多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

世界のアシックスが日本で生まれた経緯は?運動靴はじめて物語

CBC論説室の北辻利寿特別解説委員が様々な日本での最初の出来事を物語る、『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』(CBCラジオ)の「日本はじめて物語」のコーナー。

10月12日の放送では、「運動靴」を取り上げました。

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忍び寄れるぐらい動きやすい靴

スポーツに特化したスポーツシューズは、日本でどのように進化したのでしょうか?
そもそも「スポーツをするための靴」という発想は、19世紀のアメリカが始まりです。

当時、天然ゴムに硫黄を加えることで、柔軟性のある強いゴムが開発されたそうです。これによって耐久性の高い丈夫な靴底を作ることが可能になりました。

20世紀に入ってKeds(ケッズ)と言うブランドが、とても動きやすい靴を発売しました。
その靴の名前はスニーカー。日本語で言うと「忍び寄る」、英語ではSneak(スニーク)、これが語源です。

日本人の足に合った靴

しかし日本人には日本人の足形があります。
そこで日本人向けのスポーツシューズを考えた人がいました。1918年(大正7年)に鳥取県で生まれた鬼塚喜八郎さんです。

鬼塚さんは、太平洋戦争が終わり戦地から戻ると、兵庫県神戸に出て、1949年(昭和24年)に鬼塚株式会社を創業。
小中学校に運動用の靴を収める仕事を始めたそうです。

北辻「若者向けの運動靴を扱いながら、鬼塚さんはますますスポーツに魅了されていきます。
そして、実際に自分でスポーツシューズを作ろうとなったんですね」

最初に最難関に挑む

鬼塚さんが、最初に選んだのはバスケットボールシューズでした。
バスケットボールは、ボールを奪い合いながら、ダッシュ、ターン、ストップを繰り返す、非常に激しいスポーツです。

そのため、バスケットボールシューズを作ることは、スポーツシューズの世界では最も難しいと言われているそうです。

北辻「最初に高いハードルを越えれば、その後のハードルはどんどん超えられるだろうという鬼塚さんのチャレンジ精神ですよね」

酢の物が歴史を作った

鬼塚さんはバスケットボール選手の足の動きを観察するために、学校の体育館に毎日通ってプレーをずっと見ていたそうです。
そこで見つけたことは「とにかく丈夫でないといけない」ということと、「激しいプレーの中で足が滑ってはいけない」という2点でした。

これを解決するためには靴底を工夫する必要があると考えた鬼塚さんですが、答えは簡単には出ません。

ある夏の夕方、食卓に出たキュウリの酢の物に目がいきました。
さらに、その中にあったタコを見た瞬間、鬼塚さんはアイデアが閃いたそうです。

北辻「タコの吸盤は吸い付きますよね。鬼塚さんの舌に引っ付いたかどうかは知りません。でも、靴底全体にタコの吸盤のような窪みをつければ、激しい動きに耐えらえるだろうと閃いたんですね」

鬼塚さんは、このアイディアを基にシューズを作りました。
鬼塚さんの地元の高校のバスケットボールチームがこれを履き、全国大会で大活躍します。
これが鬼塚さんのシューズが全国に広がって行く要因になったのです。

靴に穴を開ける

さらに鬼塚さんが手がけたのはマラソンシューズですが、長時間走ると、足にマメができてしまいます。
どうしてマメができるのかを分析すると、原因は足と地面の衝撃による摩擦熱。その熱で火傷のようになり、マメができていたそうです。

長時間走れるように、鬼塚さんが科学的に考えたのが、摩擦熱を逃がすための穴。
大胆にも爪の先や靴の横に穴を開けることで、熱を外に発散させることに成功しました。

このシューズは「マジックランナー」という商品名が付けられました。
1968年(昭和43年)のメキシコシティーオリンピックで銀メダリストになった君原健二さんが履いてそうです。
当時の運動会では、側面にハトメで穴が開いている靴をよく見かけたんだとか。

北辻「その後、後輩の高橋尚子選手とか野口みずき選手とかも続いていくんですね」

あの人も使っている

1977年(昭和52年)になると、鬼塚さんの会社は他の二社と合併して、総合スポーツ用品の「アシックス」というメーカーになります。

ちなみにアシックスのアシは手足の「足」とは関係ありません。
「もし神に祈るなら、健全な体に、健全な精神あれかしと祈るべきだ」というラテン語の文章の、それぞれの単語の頭文字をとって「asics」となりました。

メジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手が去年と今年使用しているシューズもアシックス製です。

北辻「鬼塚さんが描いた夢が、いまいろんなアスリートの足元を支えているんですね」

スポーツへの熱き思いが、世界のアスリートたちの足元をしっかりと支えています。

北辻「『運動靴はじめて物語』のページには、日本の文化の歩み、その確かな1ページが、スポーツにかける輝く汗と共に刻まれています」 
(尾関)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年10月12日07時36分~抜粋

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