専門医が身近な病気のことをわかりやすく解説する『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』(CBCラジオ)のコーナー「健康で生きる」。
10月のテーマは「消化器内科の病気」です。
5日の放送では、大同病院・消化器内科部長の西川先生が「胃がん」について解説します。
聞き手は多田しげおです。
そもそも胃がんとは?
多田「そもそも胃は、どんな臓器だと思えばいいですか?」
西川先生「胃は消化の第一段階を担う臓器で、食べ物が入ってくると、酸性度の強い胃酸や消化酵素を含む胃液を分泌して消化を行う臓器です」
多田「その胃に発生するがんが胃がんで、胃の壁にできるんですか?」
西川先生「胃の壁は、最も内側の粘膜をはじめ組織が層状に重なってできています。
胃がんはこの最も内側の胃の粘膜から発生するがんです」
多田「胃がんという言葉はよく聞くのですが、やっぱり日本人にとっては多いがんなのでしょうか?」
西川先生「日本では胃がんにかかってしまう頻度は大腸がんについで2位で、胃がんによって亡くなってまう率は肺がん、大腸がんに次いで3位となっていて、とても頻度の高いがんです」
胃がんの原因
多田「原因はどんなことが考えられるでしょうか?」
西川先生「ヘリコバクターピロリ菌という細菌の感染、喫煙、塩分過多などが原因といわれています。
特にピロリ菌は重要で、ピロリ菌感染している方は感染していない方と比較し、およそ15倍以上の胃がん発症のリスクがあるとされています。
胃がん患者さんのほとんどが、ピロリ菌感染をもっているという報告もあります」
多田「ピロリ菌に感染していると胃がんまでいく前でも、胃の中で炎症を起こしているということがあるんですか?」
西川先生「ピロリ菌がいるとまず胃の中で萎縮性胃炎という慢性胃炎を引き起こします。
そういった胃炎が持続すると胃がんの発症のリスクになると言われています」
現れる症状
多田「胃がんになってしまった場合の主な症状はどういったものでしょうか?」
西川先生「症状としては、みぞおち周辺の痛みや不快感、胸やけ、食欲の低下、体重減少、黒い便が出る、貧血などがあります。
ただし早期の段階は症状がないことが多いんです」
多田「できればそういう早期の段階で発見出来ればいいんですが、胃がんもステージ1の段階で発見できれば、その後の治療は楽ですか?」
西川先生「胃がんはステージ1で発見された場合の5年生存率は97.2%と報告されており、早期発見できれば完治できる可能性が高いです」
ワンコインで検索できるところも
多田「そのためにもまずは見つけることが大切だということですよね」
西川先生「初期ではほとんど症状がないことが多いので、検診による早期発見がとても重要です。
検査項目としては、バリウム検査や内視鏡検査があります。
市町村がん検診では胃がん検診は50歳以上の方が対象となります。
バリウム検査については1年に1回、胃カメラ検査は2年に1回の受診が可能です。
名古屋市ではワンコイン検診として自己負担500円で、勤務先等で検査を行う機会がない方を対象に、がん検診を受けることが可能となっています」
治療法は?
多田「そういった検診でピロリ菌がいるかどうかもわかるんですか?」
西川先生「はい。検診により慢性胃炎が指摘され、ピロリ菌感染が診断される場合も多いです。
その場合、除菌治療を行えば将来の胃がんのリスクを抑えることになりますので、予防という観点でもとても重要だと考えます」
多田「ピロリ菌の除菌の方法はどんなものがありますか?」
西川先生「胃薬と抗生剤を1週間服用する簡単な治療で、ほとんどの場合で除菌が可能です。
ただ1回目の除菌治療でうまくいかなかった場合には、2次除菌といってもう1度治療することが認められています」
治療法も進化
多田「残念ながら胃がんになってしまった場合の治療方法は?」
西川先生「胃がんの治療は、がんの進行具合によって異なります。大きく分けると、がんを取り除く治療と抗がん剤による薬物治療になります。
胃がんは早期で発見された場合、内視鏡治療で根治することが可能です。ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)といって、胃カメラでがんの病変を削り取る治療になります。
お腹に傷を作ることなく、身体に負担の少ない治療であり、1週間程度の入院で可能です。
内視鏡で取り切れないがんの場合は、手術でがんを切除する方法をとります。
手術についても、近年では腹腔鏡を用いて小さな傷で行うことが可能となっています」
大同病院・消化器内科部長の西川先生が「胃がん」について解説しました。
(新海 優・Yu Shinkai)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年10月05日08時15分~抜粋