CBC論説室の北辻利寿特別解説委員が様々な日本での最初の出来事を物語る、『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』(CBCラジオ)の「日本はじめて物語」のコーナー。
10月5日の放送では、「オルゴール」を取り上げました。
オルゴールの元祖は時計台
北辻「オルゴールの元は、14世紀中世ヨーロッパにあったと言われている『カリオン』っていう時計台ですね」
カリオンはいろんな音程の鐘を組み合わせてメロディーを奏で、町中に時を知らせていた時計台です。
当時は時計と同時に時を知らせる自動演奏の装置だったそうです。
イギリスのウエストミンスター宮殿にある時計塔、通称ビッグベンもこれと同じです。
北辻「それをスイスの時計職人が、音楽が出る部分だけを時計から取り出して独立させたんですよ。これがオルゴールの誕生」
ザビエルが持ってきた
オルゴールが日本に持ち込まれたのは16世紀。
この頃には、抱えて持ってこれるぐらい小さく改良されていました。
南蛮貿易の時に、宣教師のフランシスコ・ザビエルが大名に送ったと伝えらえており、この時は手回し式のオルゴールだったようです。
時は進んで太平洋戦争の後の1946年(昭和21年)、長野県の諏訪の町に三協精機製作所という会社が産声を上げます。
三協精機製作所は時計の部品などの精密機械を作っていた会社ですが、日本のオルゴールだけでなく、世界のオルゴール史に大きな足跡を残すことになります。
スイス産だから東洋のスイスへ発注
北辻「そこにGHQから、通産省を通して『オルゴールを日本で作らないか?』という打診があったんです」
身近で気軽にいつでも音楽を聴くことができるオルゴールであれば、戦後の人々の暮らしを癒すのではないかというのが理由だそうです。
諏訪は空気が澄んでいて水も綺麗な諏訪湖畔の町なので、当時から「東洋のスイス」と呼ばれていました。
オルゴールがスイス生まれゆえ「東洋のスイス」諏訪に打診されたようです。
しかし、三協精機製作所にしてみればオルゴール作りは初めてのことでした。
まず分解
オルゴールは、円筒を用いるシリンダーオルゴールと、円盤を用いるディスクオルゴールに分けられます。
どちらも原理は同じで、櫛状に並んでいる長さの違う金属板をピンが弾くことで音が出ます。
シリンダー式は円筒形のドラムにピンがついていて、ディスク式は円盤にピンがついています。ピンが連続して櫛をはじくことで音楽を奏でるわけです。
三協精機製作所に発注されたのは、小型化しやすいシリンダーオルゴール。
ドラムには100本以上と言われるピンが打ってあり、それを見よう見まねで作り始めました。
北辻「海外から取り寄せたものを分解して、徹底的に研究したそうです」
例えばドラムにつけられたピン100本以上を一つ一つ手作業で付けたり、櫛状の金属の歯を一つ一つ手で磨いていくという、ミリ単位以下のものすごく細やかな手作業だったそうです。
蝶々は飛んだか?
1948年に完成した試作品が国産オルゴールの第一号。
記念すべき最初の曲は、童謡の「ちょうちょう」だったそうです。
北辻「バケツの底を叩くような音だったと今に伝わっています。蝶々もきれいに飛ばなかったんです」
そこで三協精機は、さらに櫛状の振動板の材質をより強くしようと、鉛に変えたりして、音質の改善に乗り出したそうです。
その年の暮れに、いい音が出る商品になり、500台を出荷したということです。
70年代に本家を抜く
北辻「当時は全て手作業。諏訪の町から数千人もの人達が工場に集まって、心を込めてオルゴールを作ったのが諏訪なんです」
一つ一つ埋め込んでいたピンも、現在はプレス機で、全体を製造できるようになったそうです。
1970年代に入ると、日本で独自に開発した設備や機械を導入。
その技術は世界でもトップクラスということもあり、オルゴールの生産数は本家のスイスを抜いて、年間1億台を突破しました。
三協精機のオルゴールの世界シェアは、この時で90%。
つまり、世界のオルゴールのほとんどは日本の諏訪で作っていたことになります。
試行錯誤の段階から一躍オルゴール史に残る会社になりました。
オルゴール記念館へ行ってみよう
北辻「三協精機は2005年に、現在の日本電産サンキョーと社名を変えました。諏訪湖畔にある『すわのね』と名付けられたオルゴール記念館。これ企業博物館なんですが、ここがすごい」
世界各国の貴重なオルゴールが展示してあるのはもちろんですが、北辻委員が驚いたのは「オルゴール組み立て体験」。
700曲の中から自分の好きなメロディーを選んで、世界で一つだけのオルゴールを作ることができます。
プレゼントであげても貰っても嬉しい。まさに諏訪で進化したオルゴール。
北辻「日本の地で飛躍的に進化したオルゴールは、今でも世界各国に素敵なメロディーを届けています。オルゴールはじめて物語のページには、日本の文化の歩み、その確かな1ページが、魂を癒す澄んだ音色と共に刻まれています」
(尾関)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年10月05日07時39分~抜粋