ここのところ、毎日のように「24年ぶりの円安水準」と報じられ、日本時間の9月7日夜には、一時1ドルが145円に迫る勢いでした。
石油などのエネルギーや輸入している食料などは高くなる一方で、昔から自動車などの輸出産業にとってはプラスとも言われます。
果たして円安は日本にとって良いことなのでしょうか、それとも悪いことなのでしょうか?
9月8日放送『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』(CBCラジオ)では急激に進む円安について、中京大学経済学部客員教授でエコノミストの内田俊宏先生が解説しました。
円安が加速する原因
今年4月に同じテーマを取り上げた時は、まだ1ドルが125円でした。
125円でかなりの円安という話題でしたが、今や145円に近い状態。
これは想定内の動きだったのでしょうか?
内田先生「円安方向というのは間違いないとは思ってましたが、ちょっと想定を上回るスピードで円安が進んでいる、というのが実情ですね」
あらためて、なぜここまで円安が進んでしまったのか、おさらいしてみましょう。
内田先生「為替相場の変動要因はいくつもあるんですけれども、いま一番大きいのは各国の金利差なんですね。
単純に言うと、金利が高い国の通貨で運用した方が利回りが高くなりますから、金利を上げていく国の通貨は上がりやすくて、低いままの国の通貨は下がったままなんです」
日本はゼロ金利やマイナス金利などといわれたように、超低金利状態が続いていますが、アメリカは今年に入ってFRB(アメリカ連邦準備理事会)がどんどん金利を上げています。
内田先生「さらに日本の投資家の方がアメリカで運用すれば、ドルで運用した後に円に戻した時、円換算でさらに増えるという、両方ありますね」
でも金利は上げられない
ここで「もし円安が問題なのであれば、日銀は金利を上げれば良いのではないか?」と思いがちですが、そう簡単ではないようです。
内田先生「これもいくつもあるんですけど、アフターコロナに向かって徐々に日本の景気は良くなってるという判断ではあるんですが、いま利上げをするとまた消費が低迷して、景気が悪化してデフレに戻る可能性もある、と日銀が考えてる。
あとは国債の発行残高が積み上がってますので、金利を上げると国債の利払い費が上がってしまって、国の財政もさらに柔軟性を失ってしまう。
また、いま円高になると輸出企業の競争力が下がってしまって、業績の悪化を見通して株価も下がってしまうと思うんですね。
ですから、円高のデメリット、アフターコロナに向けて円安の方が外国人の観光客もたくさん来てもらえますし、なんとか今の円安を政府の支援で乗り切ろうというふうに考えている節があると思いますね」
積極的ではないにせよ、円安を支持している向きがあるようです。
内田先生「そこを見透かされて、海外の投資家もより円を売って、ドルを買ったりユーロを買ったりという動きになってますね」
円安にメリットはある?
エネルギー高や輸入品の値上げなど、私たちの生活にとっては円安のデメリットが目立っているように見受けられますが、逆にどのようなメリットがあるのでしょうか。
内田先生「正直、足元ではデメリットの方が多いというのが実情です。
ただ、これから先を考えた場合、景気が良くなってきて世界経済の需要が戻ってきた時に、輸出企業などの業績改善にとってはやっぱり円安の方が有利ということがあります。
また今、段階的に入国制限が緩和されてますけど、外国人が日本に来た時に割安と感じて、海外旅行をする時は日本に行くのが良いんだという流れにするためにも、円安の方がメリットが大きい」
輸出産業にとっては円安はチャンスということになりますが、現在、日本で輸出があまり振るわないという事情があるようです。
内田先生「半導体の生産量が不安定で、世界経済もアメリカは好調なんですが、それ以外の国はまだ本調子ではありませんので、その意味では確かに輸出したくてもそんなに増やせないのが現状です」
円安傾向はいつまで続く?
では今後、この円安に対して日本はどのような対応をしていけば良いのでしょうか。
内田先生「今はそういう問題が大きいんですが、やはり資源がない日本は原材料とエネルギーを輸入してきて、それを加工して付加価値を高めて、自動車とか工作機械とかにして輸出して稼ぐしかない。
外貨を稼ぐためには、少し先を見据えた場合、今の円安をなんとか乗り切って、ガソリンや小麦への補助金支援などを続けながら、来年以降の(景気)回復に備えるという選択をしているんだと思いますね」
最後に、少なくとも来年の春まではこの円安傾向が続き、アメリカの利上げも来年の春ぐらいで打ち止めになるのではないか、と語る内田俊宏先生でした。
(岡本)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年09月08日07時21分~抜粋