多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

ヤングケアラー…家族のため犠牲になるこどもたち

政府が小学6年生を対象にした調査によれば、家族の介護や世話をしているこどもたちは6.5%、15人に1人はいるのだそうです。

最近10代で通学や仕事をしながら、家族の介護や世話をしているこどもたちのことを「ヤングケアラー」と呼ぶようになりました。

5月16日放送の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、ヤングケアラーに取り組んでいる大阪歯科大学の医療保健学部教授の濱島淑惠先生に話を伺いました。

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10代を取り巻く家族の世話

濱島先生「知らない方が多いと思いますが、数字的には結構いるとわかってきましたし、そういう視点でまわりを見ると、アレ?と気付くことも多いと思います」

ヤングケアラーたちは、具体的にはどんな介護をしているのでしょうか。

濱島先生「とても様々です。例えば介護が必要なおじいちゃんやおばあちゃんの食事や入浴の手伝いをする。おじいちゃんに認知症が出てきて、その話し相手や見守りをするというケース。

多くあるのがお母さんが精神的に不安定で精神疾患、精神障害があって身の回りのことができないので、代わって家事をしたり、年下の兄弟の世話をしたりというのもあります。

お父さんに関しては依存症関係のケースが他より多いといわれています。アルコール依存で愚痴を何時間も聞かないといけないとか、暴れるのでそれをなだめないといけないケース」

さまざまな負担がこどもたちにのしかかっていることがわかります。

濱島先生「あとは、親御さんに何か慢性的な疾患があり、そのお世話をしていたり、障害を有する兄弟のお世話をしたり。

また外国からやってきて、お父さん、お母さんが日本語が苦手なので、通訳のために学校を休んで役所についていくとか、そういった外国にルーツのあるヤングケアラーもいます」

こどもたちにしわ寄せ

濱島先生「ケアというと身体介護というイメージが強いかもしれませんが、ここでいうケアはもっと広い範囲の意味で、家事とか感情的に支えるとか、お世話全般というイメージをもっていただけたらと思います」

現在の日本社会が抱えている一断面の中で、こどもたちが苦労しているということですね。

濱島先生「高齢化が進んでいたり、メンタルヘルスの問題も深刻化しています。また、外国から来ているこどもたちも増えています。

さらに、ひとり親世帯にヤングケアラーが多いと言われていますが、ひとり親世帯が増えている状況で、さまざまな社会状況の中でサポートが行き届かず、こどもたちにしわ寄せがいっていると言えると思います」

こどもの生活への影響

こうした親族の世話は、こどもたちの生活に多大な悪影響を与えています。

濱島先生「まずは学校生活への影響が深刻です。遅刻や欠席が増えますし、宿題を忘れる、疲れて授業中に寝る、勉強についていけなくなるということはよく聞きます。
そうなると先生との関係が悪化してしまう。ダメな生徒だと思われてしまう」

教育現場にもヤングケアラーに対する理解は進んでいないようです。

濱島先生「今はかなり認知度は進んでいると思いますが、まだご存じない先生がいらっしゃることと、あと、見えにくいです。

例えば精神疾患のお母さんが『死にたい、死にたい』と言うのをなだめるために話し相手をずっとしている。そうすると、朝起きれなくて遅刻してしまう。学校の先生に『なぜ遅刻した?』と聞かれて『朝寝坊しました』という答えになってしまう。

自分の状況を客観的にみて、ことばで説明するのがこどもには難しいので、先生もなかなか気づけずに誤解してしまうこともよくあります」

生涯にわたる影響

これは社会全体で気付かないといけないと語る濱島先生。

濱島先生「学校の先生だけでなく、福祉関係者、医療関係者、地域の方を含めて、何もいわずこどもたちがふんばっていたりすることをご理解いただきたいなと思います」

ヤングケアラーのこどもたちにとって懸念されるのは、将来の進学や就職にとって不利になるのではないかということです。

濱島先生「どうしても遅刻・欠席が多いですから、その後の進学就職にも影響が出てきます。また、健康状態が悪化することもあります。

友人関係が築けない、人間関係を築くのが苦手になる。健康も勉強も友人関係も社会で生きていくのに必要なことですが、それを経験する機会が失われてしまいますので、その影響は生涯に渡ると思います」

社会全体の問題

そういったこどもたちにどう接してあげるのがいいのでしょうか?

濱島先生「ヤングケアラーかなと思われるこどもたちがいたら、まず話を聞くだけでもいいです。
とにかく、否定するでもなく肯定するでもなく、日々こんなことをしてるとじっくり受け止めてくれる大人がいるというだけでかなり安心する、という話はよく聞きます。

また『しんどいでしょう?』と言うだけでなく、家族への愛情の中でケアをしていたりとか、ケアをすることで調理がうまくなったり、他人への思いやりを持ったりと、そういう価値を彼らは持っているわけです。

その素晴らしい部分を褒めると同時に、でもしんどさもあるよねと両方を聞いて受けとめることをしていただけたらと思います」

これは社会全体がどう取り組めるかを試されているような問題です。

濱島先生「本当は社会の中でサポートが整っていれば、彼らにしわ寄せが行かないで済んだかもしれないので、社会で取り組むべき問題、私たちの問題だと思っていただきたいです」

ヤングケアラーはひとつの家庭の問題ではなく、社会の全体で取り組むべき問題なのです。
(みず)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年05月16日07時19分~抜粋

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