専門医が身近な病気のことをわかりやすく解説する『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』(CBCラジオ)のコーナー「健康で生きる」。
4月のテーマは「腎臓」です。
ひとくちに腎臓といっても、わたしたちの身体の中でどのような働きをしているかわからない方も多いのでは。
ここでは大同病院(名古屋市南区)副院長で、腎臓内科主任部長の志水先生が、重要な臓器である腎臓の働きについて教えます。
4月20日放送分から。
慢性腎臓病とは
先週、先々週と続き腎臓の働きについての話題でしたが、今週は腎臓の病気「慢性腎臓病」についてです。
志水先生「慢性腎臓病は少しずつ知られるようになってきましたが、様々な原因によって腎臓の働きが低下していく状態のことを言います。
英語では『Chronic Kidney Disease』であるため頭文字を取ってCKDと呼ぶこともあります。
日本の慢性腎臓病の患者さんは約1330万人で成人のおよそ8人に1人がなっていると推測されており、国民病の一つと考えられています。
ごく初期の腎臓病から高度に腎機能が悪化した状態までの幅広い病気のことを慢性腎臓病と呼んでいます」
沈黙の臓器
多田「初期症状はどのようなものなのでしょうか?」
志水先生「初期症状はほとんどなく、健康診断やたまたま採血検査をした際に見つかることが多いです。
自覚症状がないので気付きにくく、適切な治療を行わないとさらに進行していく可能性があります。
高度に腎機能が低下した状態を末期腎不全といいますが、末期腎不全になると人工透析や腎移植が必要になります。
腎臓は病気があっても症状が少ないので肝臓と並んで沈黙の臓器とも言われています」
尿の状態でわかる場合も
多田「特にこんな人は気を付けたほうがいいですよ、という人はどんな方でしょうか?」
志水先生「現在、慢性腎臓病になっていなくても、家族に慢性腎臓病の人がいる。過去に尿の異常や腎機能の異常があった人ですね。
また病期のステージが早い段階では症状としてはあまりないのですが、次のような症状がある場合にはステージが進んでいる可能性があり要注意です。
具体的には、尿の色が濃い・泡立つ、浮腫がある、夜に何度もトイレにいく、疲れやすいことなどです」
多田「早い段階で見つけるにはどうしたらいいでしょうか?」
志水先生「最近では健康診断や人間ドックで、尿検査と血液検査で腎機能としてeGFR(1分間あたりの尿のもとを作り出す機能を表す数値)を測定し、慢性腎臓病が早期に見つかることが多くなっています。
もし健康診断でeGFRが60以下の場合か、蛋白尿や血尿が出ている場合には、かかりつけの先生か、もしくは腎臓内科に受診していただくことをお勧めしています」
より重大な病気の場合も
多田「尿検査と血液検査である程度はわかるんですね。慢性腎臓病の原因はどのようなものなのでしょうか?」
志水先生「腎臓の病気に加えて、遺伝的な要因や生活習慣病などがあります。
また慢性腎臓病は腎臓が悪くなるだけでなく心血管の病気にも関わっています。
慢性腎臓病の方は心筋梗塞や脳卒中を発生する可能性が高くなり、腎障害で亡くなるよりも心臓や脳血管障害で亡くなる可能性が高くなります。
慢性腎臓病と心臓血管の病気は兄弟のような関係があり、心腎連関と言われています」
多田「慢性腎臓病はとても怖い病気なのですね」
志水先生「はい、たかが腎臓が少し悪いだけなどと侮ってはいけません」
生活習慣の改善が大事
多田「では先生、どんな治療法があるのですか?」
志水先生「第一に生活習慣の改善ですね。
例えば禁煙、暴飲暴食をやめる、運動する、規則正しい生活をするなどがあり、食事療法では塩分制限・タンパク質の制限などがあります。
これは腎臓の機能に応じて栄養士の先生と協力して行っていることが多いです。
薬物療法としては血圧の管理や糖尿病があれば糖尿病の治療、コレステロールなどの脂質異常の治療を行います。
最近では慢性腎臓病に対する新しい薬剤も開発されつつあります。
一番重要なのは患者さんに病気のことを理解していただき、医師・看護師・薬剤師・理学療養師など多職種のチームと一緒に治療を続けていくことが重要になってきますね」
今回は大同病院の副院長で、 腎臓内科主任部長の志水先生が「慢性腎臓病」について解説しました。
(海野優)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年04月20日08時14分~抜粋