多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

名作『幸福の黄色いハンカチ』、元は6ページのコラムだった!

1951年3月11日、イギリスの新聞で世界で初めて「コラム」の連載が始まりました。これにちなんで、3月11日は「コラムの日」です。

この日の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、朝ポンのご意見番でCBCの特別解説委員の石塚元章が、「コラム」について解説しました。

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ラテン語の「コラムーナ」から

コラムというと、『朝日新聞』の「天声人語」や、『中日新聞』の「中日春秋」が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。

コラムという言葉は、ラテン語の「コルムーナ(Columna)」から。これは神殿に立つ円柱をイメージしたものです。

ここから、円柱の列になっているもの、縦のものという意味のことを英語で「コラム」と呼ぶようになってきました。

自動車のハンドルの軸を円柱状の筒で包んだ、「ステアリングコラム」もこれが語源。今は少なくなりましたが、ギアチェンジをするための「コラムシフト」も同様です。
 

短いけれど心を打つ文章

つまり、コラムとは広く「円柱状の筒状のもの」を指します。

その昔、英字新聞ではコラムは縦長の囲み記事でした。縦長の枠が取ってあり、囲みの中にあったため、「コラム」と呼ばれるようになったというわけです。

石塚「囲まれた一定の枠の中だから、決して長くない。短い文章。だけど読者の心を打つ」
多田「簡潔な文章なんですけど、グサッと刺さる。いわゆる名文が多いんですよね」

石塚「実はコラムを書く人は、筆の達者な人でないとダメというイメージ」
多田「今はグループで書いたりしてますけど、新聞の下の方にあるコラムなんて、おひとりの方がずっと何十年にも渡って。有名な方がたくさんいらっしゃいました」

コラムは、新聞の「顔」ともいえます。
 

黄色いハンカチがはためく名シーン

ここで話題は、1977年に公開された映画、山田洋次監督の『幸福の黄色いハンカチ』の話に移ります。

高倉健さん扮する刑務所を出てきたばかりの主人公が、武田鉄矢さんと桃井かおりさんの車で、奥さんの元に向かいます。

「まだ1人暮らしで俺を待っててくれるなら…鯉のぼりの竿に黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ」

主人公は奥さんにこんなハガキを書いていましたが、なかなかそのハンカチを確認することができません。

石塚「名シーンです。1枚でいいといったのに、黄色いハンカチダーッ!とある」
多田「高倉健が下を見ながら、『そこを右に曲がって』『そこを左に曲がって』。付くまで顔をあげない。あの演出」

この有名な映画、実は「コラム」と関係がありました。
 

ほんの6ページの物語

この2時間弱の映画、元々はアメリカの短い「コラム」。アメリカのジャーナリスト、ピート・ハミルが『ニューヨーク・ポスト』に書いた「Going Home」という記事が元になっています。

「ゴーイング・ホーム」の舞台は長距離バス。若い人ばかりのバスに乗ったおじさんの話で、『幸福の黄色いハンカチ』と同じようなストーリーで、ほんの6ページほどの短い物語です。

「ピート・ハミルっていう人は、すごくいい文章を書くんです。コラムをまとめた本も出ていますから、ご興味をお持ちの方はぜひ読んでいただきたい」と石塚。

「人々の生活を通じたちょっといい話とか、考えさせられるテーマを短い文章にしたもの」。これがコラムです。
 

コラムが教えてくれること

コラムの奥深さは、ある程度の経験を積んだ、ジャーナリスト系の人が多いことにも関係があります。

「ずっと記者で現場を回っていた、戦争を取材していたという人が、市民の生活をふっと書くと奥深いというところがひとつある」と石塚。

『ニューヨーク・タイムズ』でコラムを書いていたラッセル・ベイカーは、アメリカジャーナリズム界、最高の勲章こそコラムである」という言葉を残しています。

翻訳家の井上一馬さんは、「アメリカ人の好きなものは2つ、野球とコラムだ」としています。

「短い文ゆえに、大変難しい。逆にうまい文章は奥深い。経験とか取材とか情報量に裏打ちされた、奥深い、でも短い。いいコラムって多弁でも饒舌でもないけど、読んだ後にふっと何かが残る。そういう表現のしかたってあるんだよっていうことを、いいコラムが教えてくれる気がします」と、まとめた石塚でした。
(minto)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年03月11日07時23分~抜粋

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