多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

「春闘」って何?素朴な疑問を解決します。

トヨタ自動車は3月9日、2022年春闘の第3回労使協議会を開き、経営側が満額回答を表明したと報じられました。

労働組合は賃上げや年間一時金いわゆるボーナスについても、昨年度の6か月分を上回る6.9か月を要求していましたが、要求がそのまま通った形になります。

この時期になるとニュースでよく聞く「春闘」、特定の会社にしか関係のない給料の話というイメージがありますが、そもそも春闘とは何でしょうか。

3月9日放送『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』では、CBC論説室の特別解説委員 後藤克幸が春闘について解説しました。

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春闘の目的と歴史

春闘とは、新年度が始まる前の3月、新年度の賃金が決まる前にできるだけ多くの労働組合が結集して賃金交渉を行うという交渉方式のことです。

その時代を代表するリーディング産業の労組が先行して交渉を行い、賃上げを勝ち取り、次いで他の産業に波及していくという流れ。

現代の日本でいえば自動車産業ですが、その中でもトップのトヨタ自動車の賃上げ交渉に注目が集まっているというわけです。

春闘の歴史は1955年(昭和30年)にまでさかのぼります。

東京で鉄道会社や炭坑などの労働組合が集まり、「春季賃上げ共闘総決起大会」というものが開催されたのが始まりで、その後は公務員や化学工業などさまざまな産業の労組が加わり、恒例の賃金交渉スタイルとして確立。

「春闘」や「春闘相場」という言葉がメディアにも登場するようになりました。

当初は戦後からさほど経っておらず、貧しい暮らしを解消するために賃上げを要求するという素朴な内容で、企業個別の組合だと交渉力が弱いため、春闘で結集して力を強めるという目的もありました。
 

春闘の役割

春闘が誕生して60年以上経ちますが、これまで果たした役割は何でしょうか。

後藤「60年代と70年代、日本は高度経済成長時代を迎えます。
その中で春闘による主要企業の賃上げ率は、毎年10%から20%という高い賃上げを獲得していき、労働者の暮らしを豊かにしていく。

購買力を増やしてさらに経済成長を促す、という景気の好循環を生んだといわれていて、その中から敗戦後の貧困から脱出して、国民の大半が自分を中流と意識するようになるようになる、いわゆる『一億総中流社会』が成立していく過程で、春闘の役割も大きかったんではないかと言われています」

では、現在の春闘の役割はどうなっているのでしょうか。

後藤「これは大きなターニングポイントとなったのが、1990年代のバブル経済崩壊ですね。
ここから労働組合や春闘は厳しい時代へ突入。

長引く不況の中で失業率が上昇すると、雇用不安が労働者を襲う。
そうすると経営者の側から、春闘の時期になっても『賃上げか雇用かどっちだ?』という選択を迫られると、労働組合の多くはやはり雇用の確保を重視せざるを得ないという闘いになっています」

賃上げよりも雇用を守る方を優先したり、時間外労働の減少や雇用環境の改善などの条件を挙げたりする方が増えていきました。
 

現在の春闘の目的は?

では、現在の春闘はどのように実施されているのでしょうか?

後藤「ここ1、2年は、経済成長のためにはやはり賃上げも必要だと。
『成長と分配の好循環』という言葉が岸田政権から出てくるようになりました。

分配というのは賃上げを含む話ですから、連合としても今年の春闘としては、
賃金の底上げという要求を出していて、経済格差、所得格差の是正といった大きなテーマにも取り組むという時代に来てるんですね」

政府からも賃上げは必要と経営者の団体に働きかけていますが、これは本来、民間企業が行うことですので、メディアには「官製春闘」と揶揄した言葉も現れました。
 

労働組合に入る人が減少

さらに非正規労働者の割合が増えるようになったりと労働環境は変わり、労働組合は弱体化します。

後藤「1970年代には組合の組織率、つまり労働者全体の中で労働組合に入っている人の割合は40%近くあったりした時代があるんですが、現在は10%台と非常に低下していて、歯止めがかからない」

後藤は組織率が低いことの問題点として、労働者がバラバラになった状態だと非正規雇用の労働者との賃金格差の問題や賃上げについてなど、経営者と交渉することがないことを挙げました。

国内の労働環境の変化もありますが、例えばトヨタ自動車も今後の脱炭素の動きにより、国際的な市場ではどうなっていくのかは不透明。

ますます労働者の環境が守られていくのが、難しい状況になっているといえそうです。
(岡本)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年03月09日07時18分~抜粋

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