多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

いわゆる「お役所言葉」は、なぜなくならない?

役所が行政で用いるいろんな文書、公文書、さらには役所からのお知らせにも特有の表現スタイルが並んでいます。
専門家なら理解できるかもしれませんが、一般の市民にはわかりにくい文章です。これがいわゆる「お役所言葉」です。

2月21日放送の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、「お役所言葉」の改善に取り組んでいる、聖心女子大学 日本語日本文学科教授の岩田一成先生に伺いました。

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お役所言葉とは?

先日、愛知県の犬山市役所が市民に伝わる文書作成の手引きを作り、全職員に配りました。
つまり伝わりやすい文書で市民へのお知らせを書く取り組みです。
その他の自治体でも、以前から取り組んではいるようです。

そもそも「お役所言葉」とはどういうものでしょうか。

岩田先生「一般的には公務員の方々の業界用語です。それぞれの業界が持つ言葉のお役所版になります」

それぞれの業界には業界用語があります。業界の中でしか通じないいろんな言葉、言い回し、ニュアンスがあって、それが業界用語。これはこれで便利なものです。内部のコミュニケーションを効率化します。業界の内部の人にとってはその方がわかりやすいとも言えます。

市民を相手にするお役所の場合、そうであってよいのでしょうか。

岩田先生「お役所言葉は部内で使うには非常に効率的です。そこを出てしまうのが問題です。

市民向けのお知らせにお役所言葉を出してしまうことがあるので、そこでみなさんの目に触れて、これはどういう意味かと問題になるのだと思います」
 

単語の置き換えではダメ

お役所言葉が理解しにくいことは、昔から盛んに言われていたことです。これまで改善が考えられたことはなかったのでしょうか。

岩田先生「実はお役所言葉の改革は70年くらいずっとやっています。単語の言い換え案は戦後からずっといろんな提案が出てきています。
時代によって違いますが、常にお役所言葉は批判されて、言い換えましょうという動きがずっと続いているという現状です」

試みのひとつは、用語の置き換え。
例えば「鑑みる」という表現は「考慮する」という表現に置き換えられているところもあります。

が「単語の置き換えというレベルではダメ」と岩田先生は断じます。

岩田先生「過去の歴史は単語の言い換え、フレーズの言い換えばかりをやってきています。が、文章が読みにくいのは単語の問題だけではないので、そこをもう少し深く考えないとなかなか読みやすくはならないです。

法律文をそのまま借用していたり、不必要に長い文章とか、言いたいことがぼやけている間接的な説明とか。

例えば『高齢者の医療費はどんどん上がっていきます。来年からあなたの負担は上がります』と、はっきり言ったらえらいことになります。はぐらかさないと炎上してしまいます」

つまり、たとえば法律用語をコピペして文章を作って煙に巻こうという意識があるのではないかということです。

「"市民ヘのお知らせははっきりと示さないといけない"という思想にならない限り、絶対お役所言葉はなくなりません」と語る岩田先生。
 

政策の問題?

また岩田先生は「はぐらかさないといけない文章を書かざるを得ないのは、そもそも政策に問題がある」と指摘します。

「はっきり言えないことはどうしても国の政策にはあると思います。文章を書く方がはっきり書けないというつらさが文章に現れ出るのではないか。

高齢者負担がどんどん上がっていくのは、どう考えても文章を書く人の問題ではないです。そもそもそんな政策をやっていることが問題ではないかと思います」
 

外国では?

では、他の国ではどうでしょうか?

岩田先生「どこの国も公用文が難しいということは必ず問題になっています。

アメリカは2010年に法律ができて、公用文、国が出す文章はわかりやすく書かなければならないと決まっています。
ドイツは文章をチェックする組織が政府内にあって、文章を公開する前に、その組織がチェックするという仕組みをとっています。

組織が別で動くということがポイントで、文章を自分でチェックするのは限界があります。
別組織でダメ出しを出してもらって、そこから出すという、組織的なチェックが大事だと思っています」

多田しげおは最後に「基本的な事情はどこも同じようですが、それをなんとかシステマティックに改善していこうと思っている国民風土か、仕方ないとずっとやってきている風土か、この違いでしょうか」と、問題提起しました。
(みず)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2022年02月21日07時21分~抜粋

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