沖縄の港が軽石で覆われ、漁業が出来ないというニュースが連日報じられました。
そもそも、この軽石、いったいどういうものなのでしょうか?
11月4日『多田しげおの気分爽快~朝からP•O•N』では「軽石」について名古屋大学大学院環境学教授の山岡耕春先生に尋ねました。
沖縄の被害
8月13日に小笠原諸島のずっと南にある福徳岡ノ場の海底火山が大噴火しました。
マグマが噴き出してきて、一瞬、陸地が出来るほどの大噴火でした。大噴火だと大量の軽石が噴出するんだそうです。
その大量の軽石が、海流と風に流されて沖縄に漂着し、現在港の中は大量の軽石で埋め尽くされています。
そのため、漁船は漁に出られず、客船は運行できないという被害が出ています。
なぜ軽石が溜まると船が出航できないのか?
船のエンジンは、海水を冷却水として利用しています。
海水を吸い込む時のろ過装置に細かい軽石が詰まり、オーバーヒートの原因になるので船が出せないのです。
軽石のでき方
山岡先生「軽石はマグマが固まったもんなんですね。地下の岩石が、熱で溶かされてできたのがマグマですが、それが固まったものが軽石です」
地下の岩石が溶かされて、再び固まったものが軽石ですが、単純に元の石に戻るわけではないようです。
マグマの中には二酸化炭素、二酸化硫黄など様々な成分が溶け込んでいるんだそうです。
中でも一番多いのが水。高温のために、それらが気体になっていて、噴火の後に急速に冷やされます。
水蒸気の泡を含んだ状態で固まったマグマが軽石です。水蒸気の泡でできた隙間がたくさんあるので、軽くて水に浮くということです。
風呂場の軽石とどう違う?
昭和の時代のお風呂場には、足の踵をこするため、小判型をした軽石が置かれていました。
あの軽石は、手で力を入れても絶対割れたり崩れたりはしませんでした。
しかし、沖縄からのニュースを見ると、記者がギュッと力を加えるとパカッと粉々になったりしました。あれはいったいなぜなのでしょうか?
山岡先生「軽石が積もった時の条件ではないかなと思います。今回は噴火をして、軽石がそのまま海の上に落ちてプカプカ浮いているんです」
海面のたね、周りから固められるような圧力がかからず脆いんだそうです。
もう一つ、軽石の泡の壁が非常に薄いために簡単に壊れるのではないか、ということでした。
太平洋に薄く広がる
今回の軽石は壊れやすい。ということは、どんどん壊れて粉々になったら沈んでしまうのではないでしょうか?
山岡先生「過去の例を見ると、どうも沈むらしいです。泡の隙間の中に水がしみ込んでいくと全体に重くなるので、それで沈むことも考えられると思います」
海流によってどんどん流されていったり、風で沖に追いやられてしまうこともあるようで、現在、軽石は広がっている状態だそうです。
軽石は、四国の沖で観測されたり、今月の中旬以降は愛知県の沖辺りに到達する可能性もあるようです。
山岡先生「黒潮に乗ると日本からさらに北太平洋を通って、アメリカの海岸に向かうこともあります。
太平洋全域に薄く広がっていくことで、結果的に影響が減っていくことになるかもしれないですね」
報道されているように、軽石騒動が収まるのは、やはり2~3年かかるようです。
陸上だったら大惨事?
今回の福徳岡ノ場の噴火は、8月13日の朝から始まり、午後3時ぐらいにクライマックスに到達したそうです。
その様子が気象衛星ひまわりによって捉えられているんだとか。
海底火山は、日本国内では伊豆諸島、小笠原諸島に多いそうです。陸上まで含めると、昭和の時代に軽石を出した噴火として北海道駒ケ岳が有名だそうです。
これらの噴火は、マグマが地下から上昇してくる間にバラバラになって一気に噴き上げる噴火で軽石噴火とも呼ばれるそうです。
山岡先生「今回の規模が陸上で起きると、火砕流と言って周辺に非常に高温の火山灰と軽石を含んだガスが広がってしまうので、陸上で起きていたらかなり大変だったですね」
現代ならではの被害
今回のような噴火は100年に1回あると言われています。
ということは過去にも日本は同じことを経験しているはずですが、漁に出られないという被害は聞いたことがありません。なぜなのでしょうか?
山岡先生「噴火そのものは1~2日という非常に短い期間だったんですけども、その影響が非常に長く続きます。昔は今みたいなエンジンじゃなかったので、逆に影響がなかったんでしょう」
エンジンを海水で冷やすという最新技術ができたために、漁船が漁に出られないという皮肉な結果になったわけです。
山岡先生「普段起きてない事にはなかなか対応ができないってことの例だと思います」
(尾関)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2021年11月04日07時23分~抜粋