多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

両目を子に与えた母へ時を知らせる鐘の音。滋賀県大津・三井寺「三井の梵鐘」

全国各地には、その地域の風土や文化によって育まれた独自の音があります。
『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』「日本音の旅」のコーナーでは、そんな各地の音を毎週1つずつ紹介しています。

11月1日の放送で取り上げたのは、滋賀県大津市にある名刹、長等山園城寺(ながらさんおんじょうじ)、別名・三井寺(みいでら)の「三井の梵鐘 (ぼんしょう)」の音。

「ボーン、ボーン」と響く、なんとも美しい音。この音には、子を想う母のある願いが隠されています。園城寺僧侶の西坊信祐さんにお話を伺いました。

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108つ以上の鐘を突く理由

この梵鐘の音を聞いて、「生の音で聞きますと、本当に何とも言えない、ある意味“癒しの鐘の音”と言っていいのかもしれません」と多田。

西坊さんはこの梵鐘の音を聞くたびに「今日も一日が始まったんだな」「今日も一日が終わったんだな」と、心が休まるといいます。

三井寺は、除夜の鐘の数を「108つ」にこだらず、たくさん鳴らすことで有名なお寺。108つ以上鐘をつく理由は、この寺に伝わる民話が物語っています。

そこには、人間の男と結ばれた龍神様の、子を想う母の気持ちがありました。
 

片目のない龍神様

人間の漁師の男との間に子どもを授かった琵琶湖の龍神様は、赤い玉を残して琵琶湖に姿を隠しました。その子どもは非常に身体が弱かったものの、残された赤い玉を舐めさせると、みるみる元気になり成長しました。

そんな噂を聞きつけた地元の領主は、「自分の子どもも身体が弱いため、その玉を譲ってくれないか?」と男に頼みます。男は「もう自分の子どもは大丈夫だろう」と領主にその玉を差し出してしまうのです。

しかし、玉を失った漁師の子どもは次第に元気がなくなり、病気になってしまいます。どんな薬を与えても元気にならず困り果てていた男の前に、再び龍神様が姿を現しました。

その龍神様には片目がありませんでした。
 

「赤い球は私の目です」

龍神様は男にこう言いました。

「わたしたちの子どもを育ててくれて、ありがとうございます。あの赤い玉は、実は私の目です」

琵琶湖に姿を隠すとき、龍神様はこどもの為に自分の目玉を置いて行ったのです。

「目はもうひとつありますが、これを与えてしまいますと、私はもう何も見えなくなってしまいます。どうか1日の終わりには三井寺の鐘を6つ半突いて、時間を知らせてください。大みそかにはできるだけたくさんの鐘をついて、1年の終わりを知らせてください」

龍神様はこのように言って、もうひとつの赤い玉を残し、琵琶湖へと姿を消したのでした。
 

龍神様の供養

大みそかの日、三井寺ではできるだけ多くの燈明をつけて明るくし、龍神様の目玉を模した「目玉餅」をお供えして、108回にこだわらず、たくさんの鐘を突いて龍神様の供養をしているということです。

「108つ以上の鐘の音は、母が子どもを思う気持ち、さらには人に対する優しさみたいなものを、鐘の音から感じてくださいねということでしょうね」と、伝説を理解してしみじみする多田。

「毎年、除夜の鐘のときには、お寺に詣でる方は多いんですか?」と尋ねる多田に、「たくさんの方にお参りをいただいて、やはり108つを超える鐘を、今でも突かしていただいているということでございます」と西坊さん。

早くも11月に突入しました。今年の大みそかも、三井寺では龍神様のために多くの鐘の音が響くことでしょう。
(minto)
 
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2021年11月01日07時41分~抜粋

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