『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』の「北辻利寿のコレ、日本生まれ」は、身のまわりにあるもので、実は日本生まれのものを紹介するコーナーです。6月9日放送では「カプセルホテル」を取り上げました。
カプセルもホテルも全部英語ですが、実は日本で考えられたホテル形式です。CBC論説室の北辻利寿特別解説委員が解説します。
原型は大阪万博
生まれた年は今から51年前の1970年(昭和45年)、生まれた場所は大阪。
つまり、日本万国博覧会です。
太陽の塔というシンボルがあり、そのまわりのお祭り広場に「空中テーマ館」という空中に浮かぶパビリオンがありました。
地上30mくらいの高さに未来に飛び立つ宇宙船をイメージしたパビリオンで、ここに住宅カプセルなるものがあったのです。
ベッドカプセル
この住宅カプセルの中には、ベッドカプセルと浴室便所カプセルのふたつがあって、このベッドカプセルがカプセルホテルの原型です。
万博のテーマは「人類の進歩と調和」でした。将来の生活ということでカプセルごとに家族が生活します。たとえば、こども部屋カプセルがあって、こどもが成長したら、カプセルごと引っ越していって、そのスペースに親のカプセルを作る、みたいなイメージです。
ポイントはこの中の「ベッドカプセル」です。
これが後のカプセルホテルになっていきます。
このアイデアを考えた人は建築家の黒川紀章さんです。
「カプセルイン大阪」
空中テーマ館をヒントにして実際にカプセルホテルができたのが、その9年後の1979年。
サウナを経営するニュージャパン観光という会社が黒川紀章さんに設計を依頼して「カプセルイン大阪」を作りました。当時のチラシには「2100年のビジネスホテル」という謳い文句がありました。
多田「サラリーマンが泊まるビジネスホテルの進化系としてカプセルホテルが登場した。
もっと安く泊まれるという意味もあったんですね」
シングルが1泊1,600円。当時ビジネスホテルは3,000円くらいの時代です。
広がるカプセルホテル
大阪から発信されて大好評となり、東京をはじめとして全国各地に新しいタイプのビジネスホテルとしてカプセルホテルがたくさん生まれ、現在は世界各地にも広がりました。
「カプセルイン大阪」には、3階と5階にある「スリープカプセル」という睡眠用カプセルが残っていて、当時のものが今でも使われています。
大阪市が「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」という貴重な建築物に選んでいます。
最後に北辻委員はこうまとめました。
「手軽に使える便利さとコストを見事に調和させて、今なお進歩を続けるカプセルホテル。そこには大阪万博のテーマである『人類の進歩と調和』が半世紀以上経った今でもしっかりと息づいています。日本生まれ、カプセルホテルは文化です」
(みず)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2021年06月09日07時41分~抜粋