多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

ジャーナリスト龍崎孝が10年間見続けた東北の現在

東日本大震災の発生から10年となった3月11日。
『多田しげおの気分爽快~朝からP•O•N』では、現在の東北の様子について、震災直後から取材を続けているジャーナリストの龍崎孝さんに聞きました。

[この番組の画像一覧を見る]

周りに残る遺体

龍崎さんは、元TBSの解説委員で、現在もJNNの情報番組でコメンテーターとして解説をしています。
JNNは震災後すぐに宮城県気仙沼に臨時支局を開設しましたが、そこの支局長も務めました。

その時から10年に渡り、ずっと被災地を取材し続けています。ここ一週間ほども宮城県、岩手県を取材しています。

龍崎さんが気仙沼をはじめとした被災地に取材に入ったのは震災後の4月1日から。ちょうど遺体捜索が終了した時だったそうです。

龍崎さん「御遺体が見つかるまでは復旧作業ができないわけです。それを終了させていただいた後、これからこの状況をどう戻していくんだ?という時で、周りに遺体がまだ残ってた時期だったんですね」
 

人口減少の悪循環

10年かけて、二度と津波被害が起きないように、防潮堤などの整備はほぼ完了したそうです。
また土地のかさ上げ、災害公営住宅の整備というハード事業も一段落したようです。しかし「箱はできたけど、人は戻ってきてない」という状況も…。

龍崎さん「人口の減少は震災前から心配されていたことではではあるんですけれども、それがさらに加速をしています」

例えば宮城県の女川町では4割近い人が去りました。
理由は働く場所がすっかり変わってしまったこと。避難してる間にそっちに定着してしまったことなどです。

また、被災地の学校の統廃合が進んで、こどもたちが学ぶ環境が悪くなってきているそうで、教育のことを考えると避難先を選ぶ人もいるんだとか。そんな悪循環が続いて、人口減少が進んでいるそうです。
 

埋まらない空き地

龍崎さん「街の賑わいが震災前と同じようにならないという厳しさ。そして、これまであったコミュニティがバラバラになってしまった地域では、お年寄りの方が住みづらくなったりとか、いろんなことが10年でさらに重なってるということなんですね」

宮城県の鹿折町は、震災前は工場や住宅がびっちり並んでいたそうです。
龍崎さんが先週訪れた時には、かさ上げがされ、町の再興を待つばかりですが、空き地があちこちにあり、完全には人が戻って来ていなかったんだとか。

龍崎さん「鹿折に戻ってきた人は寂しそうに、口にされてるということがありますよね」
 

新しい結びつきをもらえた

被災地に戻ってきた人たちの気持ちは前向き。「もう一度賑わいを取り戻す。そのために戻ってきたんだ、居続るんだ」という気持ちで、様々な工夫をしながら生活しているんだそうです。

龍崎さん「皆さんがおっしゃるのは、この10年、もし震災がなかったら出会わなかったような日本中の人と出会うことができた。自分たちは、震災によって新しい結びつきももらうことができたということ」

日本中の人たちが、時間を見つけては気仙沼に、「ただいま」と言って帰ってくるんだそうです。もちろん龍崎さんもその一人です。

龍崎さん「人口が減りつつあるところが多いわけですが、こちらでは『関係人口』という言い方をしてます。そこにずっと住んでくれなくても、何かあった時に来てくれたり、一年だけでもいてくれたり、そういう広がりを大事にしようと皆さんおっしゃっています」
 

災害から文化を守る

震災から10年経ち、改めてどういうことを考えて、次の10年、これからの100年に向き合っていったらいいんでしょうか?

龍崎さん「津波が何度もあっても三陸に人が住み続けている。ということは、その土地に守るべき文化、誇るべき文化、継承しなきゃいけないものがあるということなんですよね。
だから、みんな踏みとどまろうとしている。それは日本中のどこの地域にもあるわけですよね」

日本中が、地震や大雨のような災害に襲われる危険性があります。災害が起きた時の対処の姿勢が重要と訴える龍崎さん。

龍崎さん「その地域の人と、それから日本中の地域の人が、自分たちの文化財産を守るんだというつもりで被災地支援とかサポートをしていく、これが気持ちとしては大事なのかなって思いますよね」
 

経験の共有が命を守る

東日本大震災では大勢の子供が亡くなった宮城県の大川小学校があれば、岩手県の釜石東中学校のように、ほとんどの生徒が助かった「釜石の奇跡」というものもあります。

龍崎さん「これが成功した、失敗したではなくて、お互いにその教訓を交換しあう、それが命を守ることになるんです」

震災体験について話し合う、被災地を訪問し合う。それによって、いろんな場所で起きた「命を守る教訓」を共有することができる、と訴える龍崎さん。

人は経験したことがないことが起きるとパニックになるそうです。しかし経験を伝え聞いておけば、万が一の時に何をすればいいか考えることができます。

龍崎さん「三陸なら三陸の被災地で何があったかを、皆さんが知ろうと努力をしていただければ、どこに住んでいても、自分の身を守ることに繋がるんじゃないかと思いますね」
(尾関)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
この記事をで聴く

2021年03月11日07時21分~抜粋

関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報