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美味しさの秘密は熟練の技。福井県敦賀市のおぼろ昆布

その昔海外との貿易の拠点として栄えた福井県敦賀市ですが、その時代から続く代表的な食品が「おぼろ昆布」です。

2月2日『多田しげおの気分爽快』では、福井県敦賀市で「おぼろ昆布」を生産販売している、奥井海正堂代表取締役社長の奥井隆さんに、その魅力について聞きました。

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敦賀市とおぼろ昆布

日本海に面した港町、敦賀市は手すきおぼろ昆布の全国シェアの80パーセントを占めています。昆布の表面を包丁で薄く削っていくおぼろ昆布はまるで芸術品。

江戸時代から明治時代にかけて活躍した北前船の頃、北海道から昆布を積んで、この敦賀で下ろし、高級品のおぼろ昆布に加工して、京都、大阪の上方へ送っていました。
おぼろ昆布の生産は敦賀にとっては一大産業だったわけです。

手に持ってかざすと、向こうの景色が透けて見えるほど薄いおぼろ昆布。
確かに朧月夜の月は、おぼろ昆布越しに見た月のようです。
 

とろろ昆布とどう違う?

おぼろ昆布と似たものに「とろろ昆布」がありますが、両者は加工が違う別物なんだそうです。

奥井さん「酢水に漬けて柔らかくした昆布を何枚も重ね、何トンもの圧力をぐっとかけて圧縮してブロックみたいにするんですね」

そうして出来た昆布ブロックの「昆布の地層」が見える面を削っていくのがとろろ昆布だそうです。

とろろ昆布の加工は今では100パーセント機械加工なんだとか。とろろ昆布は地層になった無数の昆布の側面を削るため、糸状になります。
 

おぼろ昆布は手作業

奥井さん「おぼろは手すき加工で職人さんがすき込むんですね。幅広く何ミクロンという薄さで削り上げるのがおぼろ昆布です」

おぼろ昆布も削る前に、酢水に漬けて柔らかくするのは同じ。これは乾燥すると硬いため加工が一切できなくなるからだそうです。

おぼろ昆布を削る職人は台の上に座って作業します。
柔らかくした一枚の長い昆布の端を片足で押さえ、ピンと張った昆布の表面を独特の包丁で削っていきます。

とろろ昆布と違い、おぼろ昆布は昆布の面を削るので、カンナで柱を削るような、幅のある薄い状態のものが出来上がっていきます。
 

大阪から来た独特の道具

奥井さん「手すき加工用の包丁は、昔から独特のものがありましてね。そもそも堺で作られております」

大阪府堺市は刃物の街です。

なぜ、わざわざ堺なのか?話は北前船交易の時代までさかのぼります。
北海道から大量の昆布を積んできた北前船は、日本海側を通って敦賀で昆布を下ろし、下関から瀬戸内海に入り、最終的には大阪まで行っていました。

帰りはこの逆の航路。堺からの工業製品が敦賀に運ばれたんだとか。その一つがおぼろ昆布を削るための特別な包丁なのです。
 

なぜかアキタ

奥井さん「加工用の包丁の先に、カミソリの大きいのみたいなのがもう一枚くっつく場所があるんですね。その刃を、ちょっと触るだけでも指が切れるぐらいのシャープさに研いでいくんですね」

その刃を、また別のカミソリで擦ることで、ほんの少し角度がつくんだそうです。
ちなみに、この部分の作業を「アキタ」と呼ぶそうです。

奥井さん「秋田県のアキタじゃないんですけども、その曲げる作業を秋田って言うんですよ。これはどこから来てるか、我々もわからないんですけどね」

その角度のついた刃先で引っ掛けて昆布を削るんだそうです。
 

日本一の職人がいる町

奥井さん「腕の良い職人は幅広く薄く長く削り取るんですね。まだ熟練工の域に達しない職人は、幅広くはもちろん無理ですし、薄くも無理ですし、長くも無理なんですね。だから、本当に熟練の技だと思います」

薄く削ることによって味も良くなるんだそうです。

昭和初期から戦後にかけては、敦賀には熟練の職人が数百人~1000人近くいたんだとか。

奥井さん「今では100人弱です。それでも、日本一の職人さんがこの街にいるっていうことなんですよね」
 

一番のおすすめの食べ方は?

奥井さん「やはり、おすましとかお吸い物に少し浮かべたり。トッピングとして、おうどん、お蕎麦、おでんなんかにちょっとかけても美味しいですよ」

ちなみに奥井さんは朝昼晩、いつもおぼろ昆布を食べているのかを聞くと、「会社で、いろいろ残ったやつが出ますから、家内が必ずそういうのを集めては持って帰ってますね」と言う答え。

昆布は出汁を取るぐらいの食材なので、うま味が強いため、漬物にかけたり、おにぎりや温かいご飯にかけたりと、工夫次第で何にでも合うんだとか。

おぼろ昆布と言うと高級品と言うイメージですが、奥井さんの会社のサイトを見てみると小袋が324円からありました。気になる方は一度お試しください。 
(尾関)
 
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2021年02月02日07時40分~抜粋

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