ミステリー小説で人気ジャンルの1つが、トラベルミステリー。
日本でその先駆けといえば、西村京太郎さんですが、9月25日放送『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、作品を紹介しつつ、鉄道ファンの沢朋宏アナウンサーが鉄道に関するクイズを出題。
ここではそのうち1問を紹介します。
旅情サスペンスものの先駆け
西村京太郎さんのトラベルミステリーに関する1作目は、1978年(昭和53年)に刊行された『寝台特急(ブルートレイン)殺人事件』(光文社)。
西村さんは最初からトラベルミステリーを執筆していたわけではなく、意外にもデビューから17年後の作品です。
トラベルミステリーを始めとして推理小説が人気を博し、1980年代はほぼ毎日のように、サスペンスものの2時間ドラマが放送されていました。
『寝台特急殺人事件』の舞台は、東京発西鹿児島(現:鹿児島中央)行きの寝台特急「はやぶさ」号。
鹿児島県出身の大臣がお国入りするために、「はやぶさ」に乗って1両しかない個室を利用するという設定です。
さらに個室の両脇にはSPが待機していたのですが、大臣もSPもなぜか睡眠薬で眠らせられ、大臣が外に連れ去られてしまいます。
「走る高級ホテル」についていた設備
作品の概要を説明したところで、沢アナから出題。
「はやぶさなどのブルートレイン、上級クラスの1人用個室には、当時としては非常に珍しい高級な設備が付いていたのですが、どんな設備だったのでしょうか」
クイズに挑戦するのは、加藤愛アナウンサー。
多田しげおがここでヒントを出します。
「走る高級ホテルと言われてたけど、ホテルの部屋だと、ビジネスホテルでも当たり前。それが列車についてるというのでみんなビックリした」
加藤アナ「あまり高級列車に乗ったことがない。でもビジネスホテルだったら付いてるってことですよね?コンセント!」
確かにコンセントがあると便利ですが、この作品は1978年のもので、そもそも、外に持ち歩いて使ったり、充電して使うような機械はありません…。
答えは「洗面台」で、給水設備も付いていました。
設備を使ったトリック
作品自体に話を戻しますが、大臣は個室にいて、近くでSPも見張っていたのに、なぜ全員が睡眠薬を飲まされたのでしょうか。
犯人は、大臣が個室に戻った時にリラックスしてのどが渇き、水を飲むだろうと予測。
当時はペットボトルで水を売っていなかったため、あらかじめ水のタンクに睡眠薬を仕込んでいたというわけです。
ここで多田は「給水タンクは1両ごとにあるので、大臣とSP以外の一般乗客も眠ってしまうのではないか?」と疑問を呈します。
実はその車両に乗っていたのは、大臣とSP以外は全員犯人グループの人間だった、なので水は利用しなかったというわけです。
それを聞いて納得しそうですが、さらに多田は食い下がります。
多田「細かいことを言うと、なんで全員犯人グループが他の部屋を押さえられた?もう、みどりの窓口はある頃でしょ?」
みどりの窓口では、予約開始時刻に全国一斉で予約が入りますので、犯人グループが全員一度に押さえられる保証はありません。
作品内ではこの疑問もきちんと回収されていて、実は犯人グループの中に国鉄職員がいたという結論になっています。
この他にも、時刻表には載っていない盲点を利用する話など、スキのない作風が魅力の西村作品。その奥深さも、人気の1つの理由かもしれません。
(岡本)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2020年09月25日08時15分~抜粋