多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

ハエの脚をヒントに生まれた新素材がすごい!

先月、NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)は、北海道教育大学および浜松医科大学と共同で、「接着と分離を繰り返せる接着構造」を単純かつ低コストで製作できる新しい製造プロセスの開発に成功した、と発表しました。

この開発のヒントとされたのは、なんとハエの脚だそうです。

7月29日『多田しげおの気分爽快!!~朝からP•O•N』では、NIMS表面・接着化学グループのリーダーの細田奈麻絵さんにお話を聞きました。

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生き物を真似して作る

自然界の様々な生物の構造や機能を真似て、新しい製品を開発することを「バイオミメティクス」と言います。日本語では「生物模倣技術」「生物模倣」と訳します。
このバイオミメティクスの分野でハエに着目して生まれたのが「接着と分離を繰り返せる接着構造」です。

もう少し柔らかく言うと「くっついたり離れたりできる接着素材」が開発されたということです。
ハエの脚を真似てできたそうですが、ハエの脚のどんな機能に着目したんでしょうか?

細田さん「垂直なガラス窓に昆虫がくっついて、歩いているのをご覧になったことがあると思うんですけど、あれは足の裏にくっつくような構造があって、くっついたり離したりができるから歩けるんですね」
 

ハエの脚をよく見ると

細田さん「ハエって脚の先端に二本の爪があるんですけれども、爪の間に毛が生えていて、その毛はよくくっついたり剥がれたりできる、という特徴があるんです」

毛の先端はヘラみたいな形をしているそうです。その毛の部分は分泌液のようなもので覆われていて、分泌液を介して、ガラスなどの表面にくっつくそうです。

細田さん「毛管力であるとか分子間力のような力が働いていて、くっついていると考えられています」

毛管力は毛細管現象、分子間力は分子の間で働く静電気の力のことです。
乾燥した指で、何かくっつけようとしてもくっつきませんが、水をつけるとくっつくようになる、そんなイメージとのこと。
 

くっついたものを離すには?

細田さん「昆虫の接着系の脚に多く見られるんですけど、方向を変えることで接着力を変えているんです」

力を入れる方向が、くっついてる表面に対して平行だと強く、垂直に引っ張り上げると簡単に取れるんだそうです。

セロハンテープを剥がそうとする時に、接着している面と平行に引っ張ってもなかなか剥がれません。ところが垂直方向に引っ張ると、ピリピリピリッと剥がれていきます。
そうやって、瞬時につけたり外したりすることで、ハエは垂直なガラス窓を歩行しているんだそうです。
 

ハエの足からできた物

細田さん「ナイロン繊維を使いまして、2本のナイロン繊維の上を固定して、液体につけて持ち上げるとヘラ構造が出来上がるという開発をしました」

簡単に言うと、2本のナイロン繊維を1本にまとめて、ハエの脚のようなくっつく素材を作ったということだそうです。

この繊維は、髪の毛よりも細い52ミクロンほどの直径で、たった1本で52.8グラムのシリコンウェハー(半導体の基盤材料)を持ち上げることが出来るんだそうです。
756本あれば体重60キロの人がぶら下がれるほどの強さです。

将来的に、どんな場所で実用化するんでしょうか?

細田「精密機器を掴んで外したりするような産業用ロボットのアームの先端や、屋外用ロボットの脚につければ、壁を登れるようになるのではないかと思っています」
 
生物の動きを真似たバイオミメティクスによって、SFの世界が現実になる日も近いかもしれませんね。 
(尾関)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2020年07月29日07時19分~抜粋

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