日本で支給されることになった10万円の特別定額給付金、諸外国と比べて支給が遅いと言われていますが、スピードを妨げている原因の1つとされているのが、マイナンバーの普及率の低さです。
マイナンバー制度の導入については、昔から賛否両論の意見がありますが、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
6月11日放送『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、CBC論説室の特別解説委員、石塚元章がマイナンバーについて解説しました。
マイナンバー制度の目的は?
マイナンバーの運用が実際に開始されたのは2016年(平成28年)と比較的最近ですが、政府はかなり以前から導入を考えていましたが、1960年代に「国民総背番号制」と呼ばれ、国家が個人を番号で管理するという悪いイメージが先行していたため、導入には時間がかかりました。
マイナンバーを導入する目的について、石塚は「効率化と公平性」を2大キーワードとして挙げました。
効率化とは、税金や社会保険料の支払いや年金や今回の給付金の支給など、国や地方自治体などが誰に対してやり取りが必要なのかが簡単に把握できるという点を指します。
かつて、転職や結婚などにより、さまざまな年金の支払情報がバラバラになっている上に、名前や生年月日の記載が間違っていることで、もらえるはずの年金がもらえないといった、「消えた年金問題」というものがありました。
これが最初から個人ごとの番号で管理しておけば、勤務先や自分の苗字などが変わっても、同じ番号で紐づけて管理できるということになります。
また、公平性というのは、税金をごまかしたり、不正に給付を受けたりしにくくなるという点を指します。
預金や株などの申し込みをする時に、マイナンバーの記入を義務付けておけば、隠し資産を持っておけないということになります(タンス預金だと、どうしようもないですが)。
マイナンバーカードが普及しない理由
しかし、運用開始から4年経った今でも、普及率は16%程度と低調なままです。
しかも、持っている人でも普段の生活で使っているケースはあまりないようで、今回の給付金申請でマイナンバーを使うとなった時、多かった問い合わせが「私の暗証番号は何番?」だそうで、場合によっては「暗証番号なんて決めたっけ?」という問い合わせもあるほどです。
これだけ低調な理由として石塚がまず挙げたのは、「国家に情報を管理され過ぎて、プライバシーが侵害されそう」、「番号がわかってしまうと、さまざまな情報が漏れてしまうので怖い」ということ。
例えば、マイナンバーが知られることで収入や預貯金などの情報がまとめて手に入り、その情報を元に勧誘の電話が来てしまうのではないかというものです。
実例があったわけではありませんが、その可能性はあると考えるのは不思議ではありません。
他の理由としては、シンプルに「マイナンバーカードがなくても困らない」という点。
「面倒な手続きをしてカードを作り、暗証番号を覚え、落とした時のリスクを抱えたとしても、特にメリットはない」と考えている人は少なくないでしょう。
マイナンバーと口座を紐づける目的は?
政府としてはマイナンバー制度を進めたいため、コンビニで住民票が取れたり、この9月から買物でポイントが付くようになったりと、さまざまな施策を打っています。
さらに最近では、マイナンバーにすべての口座を紐づけるようにしようという話も出ましたが、さすがにすべての口座はやり過ぎという反対意見が続出したため、最低1口座というようにトーンダウンしています。
口座情報を紐づける目的は、今回のような給付金がまた支給されることになった時、あらかじめ口座を決めておけば、スムーズに振り込めるようになるためです。
今後、給付金が追加で出てくるかどうかはわかりませんが、事務手続きはかなり簡素化されるものの、情報漏洩や国家による管理に対して、まだまだ抵抗感は根強いものと思われます。
石塚は最後に「何が良いかという説明とか、納得感が国民に欲しいところかもしれませんね」とまとめました。
(岡本)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2020年06月11日07時25分~抜粋