新型コロナウイルスの感染が拡大していますが、早く有効なワクチンができれば状況は改善するのでは、と期待されています。
ではそもそもワクチンとは何でしょう?
6月9日放送の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、医療の取材を続けているCBC論説室の後藤克幸特別解説委員が新型コロナウイルスのワクチンについて語りました。
治療薬とワクチン
人類が感染症に打ち克つための戦い方には、治療薬とワクチンの2つがあります。
治療薬とは、身体に入ってきた病原体を直接攻撃する薬で、病気を治すためのものです。
ワクチンとは、人間が本来持っている病気と闘う免疫力を人工的に作り出して、病原体が身体に入ってきても発病しない、抵抗力を持った人を社会に増やそう、それで感染症に勝とうという攻め方です。
(我々にも免疫力はありますが)、新しいウイルスが登場すると、知らない病原体には戦えません。よって、あらかじめその力を人工的につけようというものです。
ワクチンを開発すると社会から感染症にかからない人が増えていくので、感染症を撲滅することも可能です。
ジェンナーの功績
ワクチンの歴史をみてみましょう。
一番有名なのは天然痘のワクチンです。天然痘は紀元前から感染力が強く、死の病として恐れられていました。
が、18世紀のイギリスのお医者さんでジェンナーが天然痘のワクチンを初めて開発しました。日本は江戸時代の頃です。
牧場で牛の乳しぼりをしている女性は天然痘にかかりにくい、ということがイギリスではよく知られていました。
ジェンナーはここに注目しました。水膨れができる天然痘によく似た牛の病気があります。この水膨れの液体の一部を8歳の少年に接種。その少年はその後、天然痘のウイルスが身体に入ってきても天然痘を発症しなかった、ということで実証していったのです。
ワクチンということばはラテン語で"牛"を意味する"ワッカ"ということばから取られました。ジェンナーの業績をしのんでつけられたのです。
ワクチン開発はいつごろ?
今はいろいろな感染症のワクチンができています。
一番知られているのはBCG。結核菌の毒性を弱めたものを接種して結核に対する免疫を作ります。
他にはしかやおたふく風邪のワクチン、毎年打つインフルエンザのワクチンも開発されています。
では、新型コロナウイルスのワクチンはいつ作られるのでしょうか?
ワクチンの開発には、材料として病原体そのものが研究に必要です。ただ、新型コロナは新しいウイルスですから、研究に使う病原体も新しいもので、今はスタートしはじめたばかりです。
ワクチンの開発にはワクチンの候補をいろいろな薬剤の中から選定して、動物実験をしたり、薬の効き方を研究する、毒性がないかどうか研究する、最後に人を対象にした臨床試験をすることが必要で、普通は数年かかります。
ただ今回、日本政府は順を追ってやっている段階の、基礎研究、動物実験、毒性試験、人を対象にした臨床試験を、なるべく同時進行でできるような体制で組もうとしています。
外国でやっているワクチンの開発研究にも政府が共同出資で資金援助して、スピードアップ化を図りたいと、いま懸命にやっています。なんとか1年とかのオーダーです。
この新型コロナウイルスもワクチンである程度は防げると期待されていますが、そのワクチンがどの程度の期間、免疫を維持できるのかもわかっていないなど課題も多いですが、一日でも早いワクチンの完成が望まれています。
(みず)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2020年06月09日07時28分~抜粋