多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

ボーっとしている時の方が活発に活動?脳の不思議

脳は成人で1.2kgくらいの重さで、体重の50分の1くらいの臓器ですが、身体全体の司令塔と言われています。

その脳のために「瞑想がいい」と言われますが、その時に脳はどういった状態なのでしょうか?

3月13日放送の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・Nでは「瞑想」をテーマに、自然科学研究機構生理学研究所名誉教授の柿木隆介先生に伺いました。

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「瞑想」は「ぼーっとしていること」

「瞑想」は目を閉じて思いにふけるということです
では「瞑想」と、ぼーっとしていることは違うのでしょうか?

柿木「結論から言うと同じです。ぼーっとしているのの究極が瞑想です。
何かをしている時に、脳のどこがどう働いているか、この20年間盛んに研究されてきました。

ある時、発想の転換で『何もしない時には脳はどうなっているのだろう?』という研究者たちがいました。僕たちはみんな、ほとんど脳は休んでいるだろうと思っていました」

ところが実際に研究してみたところ、脳は何もしない時に活発に活動していることがわかったそうです。
 

デフォルトモードネットワーク

何もしていない時の脳の活動を、「デフォルトモードネットワーク」というそうです。
「デフォルトモード」とは、基本的には何もないとか、何もしないということです。

柿木「その時にいろいろな脳の場所が活動していて、それがネットワークで情報を交換しながらやっている。本人は休んでいて何もやってないつもりだけど。車でいうとアイドリングに近いです。

極端な場合、僕が今しゃべっている時よりも、ぼーっとして何も考えない時の方が10倍か20倍くらいエネルギーを使っていることがわかってきました」

 

準備状態は大変

いったいなぜ脳はそんなに活動しているのでしょうか?

「準備ですね。予期して次に起こること、あるいは自分ですること、そのための準備状態にある。その準備は結構なエネルギーを要するんです。

例えば僕がしゃべっている、これは単純、それだけやっていればいい。
ところが準備状態は何が起こるかわからない。多方面にいろんなことをやらないといけない」

何かの動作や思考をする時は、その場所だけが活動しているため、脳の使われていない部分は休んでいるそうです。

「でも準備状態のアイドリングの時は、まさに全方位活動してないといけないので、それはとても疲れます」
 

何かやっていた方が脳は楽

柿木先生は「脳疲労」は何もしていない時の方が起こると言います。

「実は、何もしないでぼーっとしているようだけど、準備だけはしている、そういう状態が一番"脳疲労"になりやすいです。

一日中家にいなさい、やることがない、そういうのにあまり強くない人は疲れます。
何もやってないのになんだか疲れるし、眠れないし、鬱になってきます」

鬱になるのは何もやってないからではなくて、ものすごく脳が活動して疲れ果てているためだという柿木先生。
そしてアルツハイマー病についても関係があるのだとか。

「そういうことが最近わかってきました。ここ10年くらい脳疲労だとか、これはデフォルトモードネットワークが異様に働いている人がなるのではと。

しかも、アルツハイマー病で委縮するところは、ほとんどデフォルトモードネットワークに関係している場所がやられます。これは画期的なことで、みんな研究しています」

意外にも、動いていた方が脳のためにいいのだそうです。

「休みで家でぼーっとしているよりも、散歩したり編み物したり、何かやっていた方が脳には楽なんです」

 

瞑想と脳

瞑想をしている時、脳はどういう状態なのでしょうか?

柿木先生「瞑想は心を無にすると言います。脳がまったく働かないかと思ったら、ものすごく活動しています。ネットワーク上で情報が飛び交っている。究極の準備状態に入っています。

本当の瞑想に入った後、心地よい疲労、やりとげた感があるらしいです。脳をいっぱい使ったからです。
肉体的な運動と同じようなことが脳にも起こっているだろうと思います」
 

ヨガの達人は痛みを感じない?

インドでヨガをする人の例を出す柿木先生。

「瞑想に入ると、針を舌に刺しても痛くない方がいます。何人かそういう人を知っていて、脳の研究をしたことがあり、科学論文で発表しました」

瞑想に入った状態の脳波をとると、リラックスする時に現れるα波が増えますその量は4倍、5倍となり、究極のリラックス状態になります。
認知関係のγ波も非常に多く出るとのこと。

「瞑想の状態の時に、普通の人なら逃げるようなすごい痛みを与えても本人は『痛くない』と言います。
やせ我慢かホントに痛くないのか調べると、普通の人が痛みを与えられた時に活動する場所がまったく活動していません」

痛みを感じないのは、脳の中で痛みの感覚を抑制する部分が働くためだそうです。

「ヨガの達人はそういう状態になっています。瞑想に入っていて、はたから見るとぼーっとしているように見えますが、実は非常に特殊な、ある意味到達しうる最高の状態まで行っていて、そうすると痛みは抑えられるし、雑念もないしという状況です」

心を無にするどころか、実は脳が究極に働いている状態なのです。
 

瞑想はした方がいい?

瞑想はした方がいいでしょうか?と尋ねる多田しげおに、「人によるでしょうね。全然できない人はいっぱいいますからね」と答える柿木先生。

「瞑想できるタイプの方は、一回ハマるとそれは最高でしょう。アップルのスティーブ・ジョブズも瞑想をやっていて、オフィスで10分か20分瞑想に入って、ぱっと起きて猛烈に仕事したということです。

本当にそこにできる人は瞑想の時に頭の中がすごく整理されて、しかも究極まで脳活動が上がって、そういう時の脳活動は信じられないくらいに高まっていて、それから覚めた時には猛烈にアイデアが出るし働ける」

実は私たちが眠っている時も、脳は活動しています。

「瞑想ほどではないですが、記憶を整理したり、いらない記憶を捨てたり。3日眠らないと死ぬと言いますが、食べ物よりも睡眠の方が人間にとって重要だとわかります」

睡眠は脳を休ませるためではなく、記憶の整理のために必要なのです。
しっかり眠るようにしましょう。
(みず)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2020年03月13日08時13分~抜粋

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