多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

安いのは昔の話…国立大学の学費がなぜ高くなっている?

国立大学授業料の値上げが相次いでいます。

東京工業大学や東京芸術大学はすでに値上げをしていて、さらに千葉大学、一橋大学、東京医科歯科大学なども値上げを予定しているとのこと。
長らくデフレが続いてきた日本で、なぜ国立大学の授業料値上げに踏み切るのでしょうか?

3月5日の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』ではCBC特別解説委員の後藤克幸が、その理由や背景について解説します。

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授業料は現在どれぐらい?

値上げの話をする前に、そもそも国立大学の授業料は、どうやって決められるのでしょうか?

後藤「以前は国の組織ということで、国家予算で決められていたのですが、2004年(平成16年)に、国の組織から独立して自由な運営ができるようにと、国立大学法人という法人化の動きがでてきました。

これによって、授業料は独自に決めなさいというルールになったんですが、急激な変化を抑える意味もありまして、文部科学省の省令で授業料の標準額(53万5千800円)という枠が決められていたんですね」

では、法人化される前、授業料はどれぐらいだったのでしょうか。

後藤「国立大学の授業料は、教育の機会均等という観点から、昭和30年代までは年間1万円という時代が続いてました。

その後、高度経済成長期に値上げが続きまして、1963年(昭和38年)に1万2千円、1973年(昭和48年)には3万6千円、1976年(昭和51年)に9万6千円。

ただ、バブルが崩壊した後の1990年代に入っても、1990年(平成2年)に37万9千600円、1993年(平成5年)に41万1千600円、法人化直前の2003年(平成15年)に52万円を突破していて、それ以後は53万5千800円が維持されているんですね」

特に高度経済成長期は、物価の上昇率を超える値上げを行っていたものの、ここ15年ぐらいは値上げされていないことがわかります。
 

15年間据え置き後、なぜ今値上げ?

では、なぜ15年ほど据え置きだった授業料が、ここへ来て値上げの動きが活発になっているのでしょうか。

後藤「法人化後、53万5千800円が維持されてきたんですが、2019年(平成31年)に東京工業大学、東京藝術大学が64万円あまりに値上げをしてるんですね。

(法人化により)ルールができた時に、標準額の2割増までは各大学の判断で値上げしても良いというルールだったんですが(今まではどこも値上げしなかった)。

しかし、値上げした理由は、東京工業大学が『国際化に対応した教育環境を整備するため』、東京藝大は『世界で活躍するトップ・アーティストの育成を強化するため』などの理由を挙げて」

これを聞いた多田は「漠然とした理由」という感想を持ちましたが、後藤委員は「"国際競争を生き抜く"というのがポイント」と分析しました。

よく日本の教育は世界的に見ても優秀といわれるわりには、「世界の大学ランキング」にあまり日本の大学が選ばれていないということがあります。(ランキングの付け方には賛否両論があるものと思われますが)

少子化が進むことで、これから大学が淘汰されていく時代になることは必至で、授業料の値上げは、今後の生き残りをかけた大学の姿勢の表れかもしれません。
 

国立大学の存在意義とは?

また、値上げを行う背景について、後藤委員はもう1つの要因を挙げました。

後藤「高度経済成長以降、どんどん値上げしてきた背景には、当初の原理だった教育の機会均等の他に、受益者負担という考え方が加わってきているためなんですよ」

人件費やその他もろもろかかる経費を受益者、つまりサービスを受ける学生に相応の負担をしてもらおうという考え方です。

その分、奨学金で学費を払う学生も多くなるのですが、日本の奨学金は一般的に給付型ではなく、貸与型であるものが多いのが現状。

最後に後藤委員は、国立大学の授業料について数点、考えを挙げました。

後藤委員「私立文系だと80万~100万で、あまり変わらなくなってくる状況になるんですが、教育の機会均等というのは、国家が教育を担う、高等教育の拠点を整備するという意味では、その理念は変わらないんじゃないかなと私は思うんですね。

それと、高い教育水準を日本の国策として維持するというのであれば、安定して運営するための支援策は引き続き必要です。

また、奨学金は給付型の充実を今後課題として検討できないのかなと」

当然、予算に限りがあるので難しいのかもしれませんが、高等教育を多くの子どもが受けられるかどうかは国の将来と直結する話で、大事なことだと思われます。
(岡本)
 
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2020年03月05日07時22分~抜粋

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