先月、厚生労働省が全国の公立病院のうち、「再編や統合の議論が必要」と判断した424施設の病院名を公表しました。
10月28日の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、この「公立病院の再編問題」を取り上げました。
身近にある公立の病院、お世話になっている病院の再編統合の議論をなぜしないといけないのでしょうか?
本当に病院がなくなってしまうのでしょうか?
スタジオでCBC論説室の後藤克幸が解説しました。医療関係についてずっと取材をしています。
再編統合の背景
多田「公立病院の再編、要はこの病院はいらないということですね。
なぜ、再編統合が必要なのか、公立病院の現状を教えてください」
後藤「再編統合しないといけないという議論が起きてくる背景を言います。
ひとつは超高齢社会で、医療費がどんどんふくらみ続けていますから、医療費を抑制したいという厚労省の政策。
もうひとつは、人口減少社会ですから、今ある病院のベッド数はあまってくる。となるとベッド数の削減をしないといけないという政策。
この二つがあります。
減らすなら赤字で効率の悪い公立の病院から、という単純な発想であるところが問題です」
病院はなくなる?
多田「医療費が膨れてくるのは仕方ないことですが、じゃ、病院を減らせということですか?」
後藤「これは違いますね。医療費の抑制の議論は正しいですが、病気になった人が医療にかかれなくなる状況はおかしいです。
今回の発表は実名まで公表したので、地域の人たちや病院で働いている人にとっては、うちの病院なくなってしまう、この地域からこの病院なくなってしまうというような誤解を与えてしましました。
本来この議論は公立病院を減らしてしまおうという意味ではなく、近くに民間病院があったりして、同じような医療ができるのであれば、民間に任せることができるならできれば任せなさい、という意味だったはずです」
公立病院の意義
多田「公立病院は赤字が多いです。赤字でも公立病院だから、とにかくやってくれないと国民・市民は困りますよね?」
後藤「地域によっては、公立病院が地域の担い手として重要な役割を果たしていることも確かですし、民間病院ではできないけれど必要な医療というものがあって、それを公立がになうことは否定されることではないです」
病院の評価に問題があった
後藤「実は、今回、厚労省が424の病院の実名を公表するにあたって、選び方に問題がありました。
基準はふたつあって、診療の実績が少ないこと。プラス車に20分以内で行けるところに、同じような医療ができる病院があるか、ないかということ。
この二つの指標を立てて、全国の公立病院を対象に、調査評価分析をした結果を発表しました。
ところが、診療の多い少ないを計算するにあたっての評価法にとても問題がありました。
診療実績を調査した科目項目がすごく限られた分野だけだったのです。具体的には、がんや心疾患、脳卒中など9項目の医療分野に限定して、数字で絞り込んでいきました。
この中には呼吸器系の病気、消化器系の病気、感染症の医療、難病の医療などは含まれていないために、診療実績として評価されていません。
例えば、この地方で名前が挙がった愛知県の国立病院機構東名古屋病院ですが、ここは結核の治療や神経系の難病の分野では、専門家を手厚く配置して地域の医療にしっかりと取り組んできました。しかし、今回の医療分野の調査の対象科目に入ってないために評価されていません」
地域ごとに特色ある医療を
多田「専門的なことをやっている公立病院こそ、たとえ、赤字でもそういうことをちゃんとやって欲しいですよね」
後藤「地域ごとにそれぞれ特色ある医療をやっている、その地域の事情が今回の再編の議論の中で反映せれてないです。
このところ厚生労働省はその声に応えるために、全国を行脚して、地域の医療関係者の声をヒアリングしていますが、その席上、厚労省の幹部は『確かに、今回の公表にあたっては機械的に数字を振り分けただけで、唐突な数字を出してしまった、申し訳ない』と謝罪をしています。
今後は、地域事情によりそいながら民間に任せられる分野があれば任せながら、地域ごとの事情を勘案して、より深い議論をして欲しいです」
国民も関心を!
多田「(今回の発表は)下手すると『市民・国民が病気になりました。でも病院がない』となりかねないような発想です。これは国民も手を挙げて『ちゃんとやってくれ』と言わないといけないです」
後藤「地域から公立病院が消えてしまうかのような大きな誤解を与えてしまった今回の厚労省の政策発表はちょっと乱暴だったのかな。今後はしっかりと修正してもらいたいと思います」
適正な議論がなされるよう、国民としても厳しく見守っていきたいですね。
(みず)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2019年10月28日07時24分~抜粋