昔のプロ野球や高校野球と比べて、ホームランの本数や点数が増えているイメージはありませんか?
実はその理由、打ち方にあるようです。
8月1日放送『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、野球界に広がる「フライボール革命」について、スポーツ番組を数多く担当してきた若狭敬一アナウンサーが解説しました。
ゴロよりフライの方が有利
「フライボール革命」とは、簡単に言うと「ゴロからフライに狙いを変えることで、ホームランを打ちやすくすること」です。
これまでは、一般的には下から叩きつけるダウンスイングが良いとされ、高校野球などの指導でもゴロを狙うように薦めていました。
その大きな理由として、ゴロは相手のミスを3回誘うチャンスがあるということが挙げられます。
1つ目はショートが捕れるかどうか、2つ目は1塁へ投げられるかどうか、3つ目はファーストが捕れるかどうかということ。
これに対して、フライは打ち上げたボールが捕れるかどうかの1回しか相手のミスを期待するチャンスはありません。
しかし、この考えをひっくり返す概念が4、5年前からアメリカで言われるようになり、それが「フライボール革命」と呼ばれるものです。
一部の選手が感覚で得たことから始まったと推察されますが、昨年12月の『朝日新聞デジタル』の記事によりますと、2014年頃にデトロイト・タイガースのマルティネス選手などがこの考えを採用し始めたとされています。
そして、翌年にカメラやコンピューターなどでボールや選手の動きを細かく分析しデータ化するシステム「スタットキャスト」が導入されたことで、フライの方が良いということが証明されたそうです。
データ分析で野球が変わった
このスタットキャストで導かれた、具体的な分析結果の1つが、「ボールがバットにあたった瞬間のボールの速度が時速158キロ以上で、打球の角度が26~30度だと、5割の確率でヒットになる」というもの。
3割打者で一流と言われる中、この条件下で打てるのならすごいことです。
しかも「ボールの中心の0.6センチ下を打つとバックスピンがかかり、飛距離が最大化する」ということもわかっているそうで、ホームランも狙いやすくなります。
実際に2018年のメジャーリーグのデータによりますと、ゴロを打った場合の24%がヒット、2%が長打、0%がホームラン(当たり前ですが)になっています。
一方、外野フライの場合は26%がヒット、22%が長打、17%がホームランとなっており、相手のミスがどうこうではなく、外野フライを狙った方が良いということがわかります。
しかも、ゴロと違って内野の極端なシフトに影響を受けないというのもメリットです。
日本でも40年以上前から採用?
このフライボール革命ですが、実は日本でもこの考え方に近いスイングをかなり昔から行っていた選手がいるそうです。
元中日ドラゴンズ選手で野球評論家の木俣達彦さんは、あの王貞治さんのかつてのバッティングの連続写真を見たところ、最初はダウンスイングですが一定の期間は水平になり、最後は若干アッパー気味になっているそうです。
では、日本のプロ野球はフライボール革命の影響を受けているのでしょうか。
若狭アナが2年前、1年前、今年のセ・リーグ90試合消化時点のホームラン数を比較したところ、414、508、511本。
2018年に格段に増えたのは、2017年にフライボール革命を採用していたヒューストン・アストロズがワールドシリーズを制覇したことでこの考えが急速に広まり、2018年にホームランが増えて、2019年も引き続き採用されていることが推測されます。
チームとして格段に増えているのは読売ジャイアンツで、57、87、116本とかなりの右肩上がり。
ちなみに、唯一本数が下がっているのが中日ドラゴンズです。
日本のプロ野球界への影響は?
ただ、ジャイアンツはチーム全体の方針としてフライボール革命を採用しているわけではないそうで、元中日ドラゴンズ選手でコーチを務めた井端弘和さんによりますと、「坂本勇人選手は早くからこのスイングを取り入れており、実を結んだのが昨年ではないか」とのことです。
一方、元中日ドラゴンズ選手で現在スコアラーの鈴木義広さんは、広島カープはバックスピンをチームとして取り入れており、2018年にホームラン数が増えています。
しかし、そのカープもなぜか今年はホームラン数が減っています。
その理由を鈴木さんに聞いたところ、「丸選手がいなくなったかららしい」。
そういえば、丸選手の移籍先であるジャイアンツは、今年も劇的に増えています。結局、個人の成績の積み重ねということでしょうか。
今後もさまざまなデータ分析でプレイスタイルが変わっていくかもしれません。
(岡本)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
この記事をで聴く
2019年08月01日07時17分~抜粋