相続制度が大きく改正され、7月1日から施行されました。
誰でも一度は経験しなくてはいけない相続。法律についてあまりよく知らないという人も多いようですが、とても身近で大事なことです。
7月1日の『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では、この改正相続法について、あすなろ法律事務所の弁護士 國田武二郎さんに具体例を挙げて説明していただきました。
介護した人にも相続を
今回は、残された配偶者の生活を守ることを目的に、いろいろ改正がなされました。
具体的には夫に先立たれた妻を想定して、その生活を守ろうというのが改正のポイントです。
これ以外にも、これまでの相続法で問題になっていた点が改正されました。主に二つを取り上げます。
ひとつは特別寄与制度の創設です。
義理の両親、舅や姑の介護をした長男の嫁が報われるということです。
実は息子の嫁は相続の対象ではありません。
義理の両親の介護を長年引き受けて大変苦労したにも関わらず、いざ相続となるとお嫁さんは蚊帳の外。
親の面倒をまったく見ていなくても次男や長女はもらえます。
苦労したお嫁さんに義理の親の遺産がもらえないのはあまりに不公平だ、ということが従来から問題となっていました。
それを「お嫁さんにも介護の貢献の度合いに応じて寄与料を払いましょう」というのが、特別寄与制度の創設、あるいは特別寄与料の請求です。実質的な公平性を担保しようということです。
介護の資料が必要
多田「特に長男の方が先に亡くなっていて、一緒に住んでいるお嫁さんがその後もずっと介護していた場合は、もっと典型的ですよね。これからはどれくらい相続できそうですか?」
國田先生「特別寄与の度合いにもよります。
お父さんの財産が3,000万円。3人相続人がいるとして、従来なら1,000万円ずつです。
そのお嫁さんの寄与の度合いによって算定が難しいですが、300万円くらいだとすると、各相続人から100万円ずつもらえるということです。金額はケースバイケースで、話し合いです。
だだし、お嫁さんだから当然もらえるということではなくて、それなりに資料が必要です」
多田「これくらい介護しました、という資料を残しておかなくてはならないと?」
國田先生「例えば介護日誌、どんな介護をどれくらいしたかという記録を残すことです。
病院の送迎とか、食事の世話とか、入浴の介助とか、できるだけ細かくつけておく。
おむつ代、タクシー代、薬代など、こういったものの領収書を残しておくなど。
でないと、ほかの相続人から疑われる可能性もありますから」
介護しているお嫁さんは、面倒でも介護日誌をつけた方がよさそうです。
揉めた時は?
他の兄弟との話し合いがうまくつかなかった場合、最終的に裁判所の調停で金額が決まります。
次男や長女がお嫁さんにお世話になったと思えば、300万円、400万円の要求は可能でしょうけど、相続人でないものが入るわけですから、新たな紛争の火種になる可能性はあるかもしれません。
また、この請求は相続開始をした時から6カ月以内に請求しないと権利が消滅してしまいますので要注意です。
遺産分割前の預貯金の払い戻し
次の改正点は、遺産分割前に預貯金の払い戻しができるということです。
ある人が亡くなりました。今の制度だと、その人の預貯金は、遺産相続のかたがつくまで凍結され、下ろすことができなくなります。
親の銀行口座が凍結されて葬式費用がないとか、妻の当面の生活費がなくて困るとか、よく耳にします。
それが、遺産分割の協議が終わってなくても、その前に預貯金の引き出しができるようになりました。
ただし、上限があります。亡くなった方の口座残高の3分の1の範囲の中で、相続人は自分の法定相続分を下すことができます。
たとえば相続人が長男、長女の二人で、被相続人の預貯金が600万円だとします。
預貯金の3分の1は200万円です。そのうち、長男は自分の法定相続分である2分の1の100万円は下せます。
下ろすには、他の相続人の同意は不要です。
同一の金融機関での上限は150万です。複数金融口座があれば、それぞれで計算して下ろせます。
多田は「結局はちゃんともらえるものだから、当たり前のことができるようになったということですね」と改正を評価しました。
(みず)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2019年07月01日07時19分~抜粋