現在、名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で、大相撲名古屋場所(大相撲平成30年7月場所)が開催中です。
大相撲の土俵は上から見ると円形ですが、東西南北の4カ所だけちょっと外へ出っ張っています。これを「徳俵(とくだわら)」と呼びます。
7月9日『多田しげおの気分爽快‼︎』では、相撲を題材にした作品も多く大相撲に詳しい小説家の須藤靖貴さんに「徳俵」の意味についてお話を伺いました。
力士の大型化で利用が減少してしまった「徳俵」とは?
土俵の大きさは?
まずは土俵についての基礎知識から伺います。土俵は直径何メートルなんですか?
「4.55メートルです。相撲界では15尺と言いますけども、意外に狭いです」
古式ゆかしき相撲界では、今もメートル法ではなく尺貫法です。
円形の俵そのものの幅は何センチぐらいなんですか?
「これ、なかなか文献に乗ってなくて、現場とかにいろいろ聞いたんですけど、ほぼ15センチぐらいということでした」
俵の幅が15センチ、つまり4.55メートルの土俵で4カ所、出っ張っている「徳俵」の幅は15センチということになります。
「4.55メートルです。相撲界では15尺と言いますけども、意外に狭いです」
古式ゆかしき相撲界では、今もメートル法ではなく尺貫法です。
円形の俵そのものの幅は何センチぐらいなんですか?
「これ、なかなか文献に乗ってなくて、現場とかにいろいろ聞いたんですけど、ほぼ15センチぐらいということでした」
俵の幅が15センチ、つまり4.55メートルの土俵で4カ所、出っ張っている「徳俵」の幅は15センチということになります。
徳俵のそもそもの役割
前述のように土俵は真円ではありません。「徳俵」は何のためにあるのでしょうか?
「昔は野外で相撲をやってたんですね。雨が降ると、土俵上の砂が泥になったりします。それを外に綺麗に吐き出すための部分です」
土俵の中に溜まった水や泥は、完全な円だと吐き出せません。
「徳俵」は切れ込みとして、そこから水を外へ吐き出していたわけです。今でも土俵を掃く際には箒が使われます。
「昔は野外で相撲をやってたんですね。雨が降ると、土俵上の砂が泥になったりします。それを外に綺麗に吐き出すための部分です」
土俵の中に溜まった水や泥は、完全な円だと吐き出せません。
「徳俵」は切れ込みとして、そこから水を外へ吐き出していたわけです。今でも土俵を掃く際には箒が使われます。
いいことあるかも徳俵
「あそこだけ15センチ分後ろに行けて、得だから『徳俵』というのかなと思ってたら、全然違うんですね」と予想を外した多田しげお。
それに対し「元々の役割はいま言った通りなんですけども、意味は、おっしゃる通り『得』なんですよ」と須藤さん。
「徳俵」は、損得の「得」ではなく「徳」です。これにも意味がありました。
「なぜ得するのに、損得の得じゃなくて徳川の徳かというとですね、"早起きは三文の徳"という諺。実はこの徳なんですね」
「徳」は、何かいいことがあるというような意味。自分の利益にする意味では「得」。
「徳俵も押されて負けそうな力士にとって、何かいいことがあるかもしれないところ。そんな感じです」
それに対し「元々の役割はいま言った通りなんですけども、意味は、おっしゃる通り『得』なんですよ」と須藤さん。
「徳俵」は、損得の「得」ではなく「徳」です。これにも意味がありました。
「なぜ得するのに、損得の得じゃなくて徳川の徳かというとですね、"早起きは三文の徳"という諺。実はこの徳なんですね」
「徳」は、何かいいことがあるというような意味。自分の利益にする意味では「得」。
「徳俵も押されて負けそうな力士にとって、何かいいことがあるかもしれないところ。そんな感じです」
徳俵で決まった取り組み
この「徳俵」、どのくらい相撲の勝敗に影響しているものでしょうか?
「3人ぐらい、相撲第一人者のジャーナリストに聞きましたし、私もかつての取材経験を思い出してみましたが、なかなか"ミスター徳俵"みたいな力士はいないんですよ」
土俵際に押されて徳俵まで来るような力士は、そもそも強くありません。強い横綱や大関は押す側です。
「古いんですけど…」と前置きしながら、須藤さんは徳俵が影響した取り組みを探してきてくれました。
「昭和27年の秋場所。栃錦という名の大横綱がライバルの東富士という横綱になかなか勝てなくて、最後、徳俵まで押されて、うっちゃりという大逆転技で勝ってるんですよ。それぐらいですね、これがすごく印象的」
須藤さんが産まれる前の出来事でした。
「3人ぐらい、相撲第一人者のジャーナリストに聞きましたし、私もかつての取材経験を思い出してみましたが、なかなか"ミスター徳俵"みたいな力士はいないんですよ」
土俵際に押されて徳俵まで来るような力士は、そもそも強くありません。強い横綱や大関は押す側です。
「古いんですけど…」と前置きしながら、須藤さんは徳俵が影響した取り組みを探してきてくれました。
「昭和27年の秋場所。栃錦という名の大横綱がライバルの東富士という横綱になかなか勝てなくて、最後、徳俵まで押されて、うっちゃりという大逆転技で勝ってるんですよ。それぐらいですね、これがすごく印象的」
須藤さんが産まれる前の出来事でした。
力士の大型化の結果
「それって、昭和27年、1952年のことですよね?それ以来、徳俵で勝敗がひっくり返った事例はないんですか?」と多田が質問します。
「あると思うんですけど、記録にはなかなか出てこないんです。うっちゃりという大逆転劇の技。俵に足をかけて、踏ん張って相手を後ろにひっくり返すという、それ自体が現代の相撲では激減してるんです」と須藤さん。
言われてみれば、うっちゃりという技は最近ほとんど見かけません。
これは力士の大型化のせいなんだそうです。大きい力士は、そのまま押し出していったり、寄り切ったりすることが圧倒的に多くなるためです。
「あると思うんですけど、記録にはなかなか出てこないんです。うっちゃりという大逆転劇の技。俵に足をかけて、踏ん張って相手を後ろにひっくり返すという、それ自体が現代の相撲では激減してるんです」と須藤さん。
言われてみれば、うっちゃりという技は最近ほとんど見かけません。
これは力士の大型化のせいなんだそうです。大きい力士は、そのまま押し出していったり、寄り切ったりすることが圧倒的に多くなるためです。
うっちゃりが見たい
「ご覧になられた場所で、うっちゃりが一回でもあったら儲けもの、というぐらいの素晴らしい技なんですけど、この徳俵で踏ん張って得をするというシーンそのものが減っているんです」
せっかく今も「徳俵」が残されているんだから、ぜひ、うっちゃりも見たいものです。
土俵の円は、徳俵を入れて全部で20俵で作られています。一周20俵あるうちの4カ所の1俵ずつが徳俵です。
須藤「そうするとですね、5分の1もあるんすね。徳俵の場所が。これ、結構得しますよね」
多田「徳がいっぱい落ちてるわけですもんね」
最期に「僕も5分の1って改めて再認識して、あっと思ったんですけど。だから、うっちゃりに期待したいというのが相撲ファンとしてあります」と語る須藤靖貴さんでした。
名古屋場所は「徳俵」に注目してみると面白いかもしれません。
(尾関)
せっかく今も「徳俵」が残されているんだから、ぜひ、うっちゃりも見たいものです。
土俵の円は、徳俵を入れて全部で20俵で作られています。一周20俵あるうちの4カ所の1俵ずつが徳俵です。
須藤「そうするとですね、5分の1もあるんすね。徳俵の場所が。これ、結構得しますよね」
多田「徳がいっぱい落ちてるわけですもんね」
最期に「僕も5分の1って改めて再認識して、あっと思ったんですけど。だから、うっちゃりに期待したいというのが相撲ファンとしてあります」と語る須藤靖貴さんでした。
名古屋場所は「徳俵」に注目してみると面白いかもしれません。
(尾関)
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