多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

不発弾・財宝・遺体…所有地から出てきた時の対処法

2015年、大阪市ミナミの個人所有地で不発弾が見つかりました。この不発弾は戦時中にアメリカ軍が落とした1トン爆弾でした。

陸上自衛隊による撤去費用、そして万一の爆発に備えて作った防護壁の費用576万円を、この土地の所有者が負担することになったのです。
この件について、今年の2月26日、大阪地方裁判所で不可解な判断が示されました。

そこで28日の『多田しげおの気分爽快!!』では、「自分の土地から予想もしなかったものが出てきたら?」をテーマに取り上げました。

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費用は住民負担

土地の所有者は「国がやった戦争で落とされた不発弾の処理だから、個人が支払うのはおかしい」と576万円の返還を求め、国と大阪市を訴えました。

比嘉一美裁判長は「国民が受忍しなければならない戦争損害」として、国も市もその費用を負担する法的義務はないとの判断を示しました。

パーソナリティの多田しげおは、この判決に対しこう語ります。

「訴えた土地の所有者にとってみれば、え?という判断だと思うんですが、不発弾に限らず自分の土地から予想もしなかったものが出てきた場合、予想もしない費用がかかったりするものなのか?」

この疑問を、あすなろ法律事務所弁護士の國田武二郎先生に尋ねました。

大判小判が出てきたら?

まず、自分の所有地から大判小判などが出土した場合について國田さんに伺います。

「土地の所有者の先祖が埋めたということであれば、相続という形で、土地の所有者のものになるんですがね」

所有者が誰かわからない場合はどうなるのでしょう?
こうしたものを、法律では「埋蔵物」といいます。埋蔵物が出てきたら『遺失物法』という法律に従い警察に届ける必要があります。

そして6ヶ月経って所有者が判明しない場合には、発見者が所有権を取得するという規定になっています。

「ただし、発見者が他人の土地で発見した場合には、発見者とその土地の所有者が埋蔵物の価格相当分を均等に半分に取得するという規定になっています」

もちろん自分の土地で、自分が発見した場合は、最終的に所有権はすべて自分になります。
ただし警察に届けなければいけません。届けずに持っていても所有権は取得できないので注意してください。

埴輪や遺跡が出てきたら?

では、自分の土地から埴輪や遺跡など、文化的に貴重なものが出てきた場合はどうなのでしょう?

「これは非常に歴史的に価値のあるものですから、民法で処理されるのではなくて『文化財保護法』という法律で対処します。この場合、ほとんど誰のものかわかりません」

所有者が判明しない遺跡などが発掘された場合、所有権は国に帰属すると文化庁で規定しています。
ただし、その価格の2分の1に相当する報奨金が土地の所有者に支払われます。

地方公共団体によって発掘された場合は、所有権は都道府県に帰属します。その代わり半額の金額を発見者、あるいは土地の所有者に報奨金として与えるということになっています。

多田「遺跡の価値をどれくらいの金額にするかって、これ難しいでしょうね」
國田さん「専門家がその価値を判断するんですが、これはかなり難しいと思いますね」

毒物が出てきたら?

次に、できれば自分の土地にあって欲しくないもの、毒物が発見されたらどうなるのでしょう?

「まず、その毒物を埋めた者がわかれば、その埋めた者に対して、当然、土地の所有者は妨害排除請求権、その土地を妨害したから排除しようということに基づいて排除を求めることができます」

誰が埋めた毒物か不明な場合、土地の所有者が責任を持って、土壌汚染防止法、あるいは廃棄物処理法に基づいて、自分の費用で土壌の改善、あるいは毒物の撤去をすることになります。

「ただし(土地の)売り主に対して、その分の価格の減額とか損害賠償を請求することはできると思います。あるいは契約を取り消すということも可能でしょうね」

白骨死体が出てきたら?

もっと困るもの、白骨死体が発見されたらどうすればいいのでしょう?

「まず発見者が、その死体や白骨の埋葬義務者である場合。例えば自分の父親とか母親の死体だとか白骨だとわかれば、当然、弔わなければいけない義務があります」

埋葬義務がある者が放置すれば死体遺棄罪で、3年以下の懲役になります。

赤の他人の場合は、まず警察に届け出ましょう。
その埋葬義務者がいるかどうか探してもらって、それでも身元不明だという場合には、地方自治体が共同墓地等で埋葬管理するということになるでしょう。

「その時の費用は地方自治体が負担するということになるでしょうね」

本題の不発弾について

話題は、冒頭の大阪での不発弾処理に戻ります。

多田「費用の一部にしろ全部にしろ、土地の所有者が負担しなさいという判断が出ましたけども、市民感情としたら納得いかないですね」
國田さん「金額が576万円と極めて高額な金額ですよね。この判断については、法律上、明文がないんですよね」

沖縄では、過去に不発弾による事故例がありました。
そのため沖縄県では『沖縄県不発弾等対策安全基金条例』を設けています。

例えば、不発弾の探索、あるいは不発弾による事故が生じた場合には、その基金から支払うことになっています。
ただし、この条例では撤去費用までは規定していないのです。

解決策はあるのか?

つまり現在の日本で、不発弾の撤去費用を誰が負担するのか、明確な基準はないのです。

「今回は、支払い義務があるとするのは、明確に法律の規定があるか、あるいは、支払わないことが著しく妥当性を欠く場合は、国や地方自治体に支払い義務があるというようなことも指摘しています」

つまり不発弾は、自分の土地にあっても個人で処理できるものではなく、また維持管理も不可能です。そのため「私的所有権の限界を超えているんです」と説明する國田さん。

「それを個人に負担させるのは非常に問題である。というのは、国策としての戦争の結果、不発弾がその人の土地に埋まってるわけです。
ですから基本的には国に責任があって、国が負担しないことは著しく妥当性を欠くということにあたるんじゃないかと考えます。だから国に支払いを負担させるのが一番の解決策だと思います」

不発弾処理の立法化が急務

500万円も負担させられるとなると、土地所有者が不発弾を発見したとしても、届け出ない可能性もでてきます。
放置した結果、事故が起こる方が問題です。

「戦争の結果として、個人に責任のない不発弾ですから、やっぱり国が負うべきだと思います。ですから、この判決はさらに控訴されるんじゃないでしょうか。同時に立法化が急務だと思いますね」

最後に國田さんは立法化を提案しました。しばらくの間、この件には要注目です。
(尾関)
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2018年02月28日07時20分~抜粋

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