多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

屋内で低体温症による死亡者が増えた理由。

今年は屋内で低体温症による亡くなった方が多かったんだそうです。
そこで2月26日の『多田しげおの気分爽快!!』では、屋内での凍死を取り上げました。

屋内における低体温症に、日本の一断面が見えてくるそうです。
帝京大学医学部救急医学講座の教授、三宅康史先生に伺いました。

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低体温症の診断

そもそも「低体温症」とはどんな病気なのでしょう?

「本来、我々の体温は37度前後です。特に中心温とか深部体温という体の中の温度が37度前後の状態だと、いろんな臓器の働きがベストなんです」

体内の酵素が働きエネルギー源を作り出すことで生命が維持されるのですが、その温度が上がったり下がったりすると、酵素の働きが悪くなり、さらに臓器の働きが悪くなります。

「その結果、意識がなくなるとか血圧が下がるとか、いろんな体調不良が出てきます。だから35度を切ってくると、病的な状態ということで"低体温症"という診断名をつけますね」

普通はあり得ない低体温症

普通に生活をしていて体温が35度より低くなるとことは、普通の生活ではあるんでしょうか?

「ありませんね。まず36度を切ることも普通はないです」

しかし高齢者においては、屋内で35度より下がるケースが増えています。

「人の身体は、まず寒さを感じたら、筋肉が震えて熱を作り出します。くしゃみもそうなんですよね。それから行動をとります。部屋が寒いから暖房を入れよう、服を一枚着こもう。あるいは温かい飲み物を摂ろうとします」

しかしそれでも体温が下がってくると、今度は意識が朦朧として身体が動かなくなり、判断力が鈍ってくることもあるのです。

低体温症のメカニズム

低体温症で亡くなられた方は、どういうケースが考えられるのでしょう?

「元々の病気がある場合、また栄養状態が悪いとか、あるいは脳卒中で倒れたとか、あと糖尿病の具合が悪くて高血糖、低血糖で動けなくなり、そのまま低体温になっていく」

他には、家で生活しているがん患者が体調を崩し、倒れてそのまま低体温に陥るなど、様々な例があります。

「ですから低体温が単独で起こるんじゃなくて、病気が悪化して低体温症を合併するというのが多いんですね。自分で気がつかないままに低体温になっているんじゃなくて、もうその前に調子が悪くて、温めることができなくなっている、というのが実情です」

孤立する高齢者

元の持病を誰かが把握していれば、低体温症になる前に気づくことができるのですが、それが出来ないということは、一人暮らしであるケースが多いということです。

背景としては高齢化に加えて孤立化。こういった病気を抱えているんだということを、周りの人が気づかってあげられない状態です。さらには十分栄養が摂れない貧困層の増大も背景にある、と三宅先生は言います。

夏は熱中症

夏に屋内で熱中症で亡くなるのも独居老人が多いそうです。
昨今は夏になると、そういう報道を目にすることが多くなってきました。

「夏に熱中症で倒れてなくなる方というのも、ほぼ同じ危険因子なんですよね。社会的弱者の死亡原因が、たまたま今年、すごく寒い冬だったっていうことで、表に出てきちゃった。まさに日本の今の状況を、この厳しい天候が明らかにしたと言ってもいいと思いますね」

いま日本が抱えている大きな問題の一つ、高齢化。そして独居老人の孤立化。
その問題が、今年の冬の寒さで、屋内での低体温症、凍死という形で表面化してきたわけです。

低体温症をどうするかではなく、高齢化に対して、孤立化に対して、いま社会全体がどうこれを改善していくかという大きな問題に直面しています。
(尾関)
多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N
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2018年02月26日07時40分~抜粋

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