いま精密な海底地図を作ろうという国際的なレースが行われています。
日本からは「Team KUROSHIO」が参加しています。
1月25日の『多田しげおの気分爽快!!』では、このTeam KUROSHIO共同代表でJAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)の技術研究員でもある中谷武志さんに、このレースについて伺いました。
日本人も参加!海底地図を作る国際レース開催中
海底地図とは?
陸上の地図は地球上、ほぼ全ての地図が作られていますが、そもそも海底地図とはどんなものなんでしょうか?
「海底地図というのは、等高線を引いて、どこが出っ張ってるとか、へこんでるかというところをわかるようにしています。
海中っていうのはライトを強く当てたとしても、深海では10メートル先ぐらいしか見えないわけです。海底を撮っても色がわかるわけではないので、地図になるとただ凹凸の形がわかるだけです」
海底の測量の仕方
それでは、その海底の凹凸をどうやって調べて地図を作っているのでしょうか?
「測量船等を使って海面から、音波を海底に照射して、そして帰ってくるまでの時間で距離がわかります。音波を出してる方向がわかっているので、海底の1点がわかります。一度に多数の方向に音響ビームを出すことによって、ライン状に海底地形図がわかります」
この作業を前進しながら行うことで、さらに面としての海底地形がわかるのだそうです。
しかし時間をかければ、地球規模の海底地図ができるのかというと、そうでもないんです。
10%しかわかっていない
しかし、この方法でわかるのは地球上の海底の10%ほど。あとの90%ほどはよくわかっていません。
地球の海の深さは平均4,000メートルと言われています。そこまで深いと海面から音波を出して計測することは不可能なんだそうです。
人工衛星を使って、だいたいの地形はわかりますが、精密な海底地図となると、できているのはたった10%だけなんです。
深海を調査するロボット
そこで現在、残りの90%、もっと深い所の海底地図も作ろう、と世界からチームが集まり、レース形式で取り組んでいます。
深海の地形はどうやって把握するんでしょうか?
「電池と推進機を備えていて、自動航行ができるプログラムが入っているロボットを使います。海底からの高さが50メートル、100メートルといったところをロボットが超音波を使って地形を調査すると、いろんな海底の面白いものが発見できるわけなんです」
水深平均4,000メートル、つまり400気圧もの圧力に耐えられるロボットが全自動で海底の地形を調査し、データをどんどん貯めこみます。
電池残量や距離をロボットが判断して、調査はここまでとなったら、自動的に海上に浮かんできて、自分で港まで帰ってくるそうです。
一石二鳥のレース
今回開催されている国際的な海底地図製作のレースは“Shell Ocean Disecovery XPRIZE”と言います。
スポンサーは世界的な石油会社ロイヤル・ダッチ・シェル。あのシェル石油です。
レースの条件は「現場の調査海域に人が行かずに、全部陸上からの遠隔操作で行うこと」。
海底資源開発には事前に海底の地形調査が必要です。それには莫大なコストがかかります。そのコスト軽減がレースの目的でもあります。地図が出来てコスト削減で一石二鳥。さらに技術も進歩して一石三鳥になるというわけです。
世界10カ国から21チームが参加しています。最高得点を獲得したチームには400万ドル(約4億5,400万円)、上位チームには100万ドル(約1億1,360万円)ずつ、合計700万ドルの賞金が贈られます。
海底地図はこう使われる
海底地図は、今後どのように活用されるんでしょうか?
「例えば、海底ケーブルを設置する前に海底の状況、障害物がないのか?崖はないのか?などと広域にわたって調べるんですが、そういったことに使われます」
それ以外にも、例えば海底油田や海底資源を広域にわたって調査をするために使います。
さらに、油田や資源を見つけた後、どのように掘り出していくのか?という事前調査のためにも海底地図が必要です。
「我々のこの技術は、そういう資源開発というところにも直結する技術じゃないかと思っています」と語る中谷さん。
海洋研究開発機構では、海底の無人探査技術が実用化すれば、地震を引き起こすプレートの動きや新しい海底火山の発見につながるとも期待しています。
深海の未知の生物が見つかったら面白いですね。
(尾関)
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