ペットとして飼っていたネコがいろいろな事情で野良ネコとなる。その野良ネコを保健所が収容し、最終的に殺処分してしまう。そういうネコが非常に多くなっています。
そんな中、三重県がネコの殺処分を減らそうと「さくらねこTNR」という取り組みを行い、全国から注目されつつあります。どんな取り組みなのでしょうか?
1月9日『多田しげおの気分爽快!!』の「情報サプリメント」、このネコの殺処分問題をアシスタントの桐生順子が取材しました。
猫の殺処分を減らそう。三重県の試み「さくらねこTNR」に注目
ネコの殺処分はイヌの4倍以上
殺処分されるネコを減らそうと三重県が全国に先がけて始めた「さくらねこTNR」。これが今、全国の動物関係者から注目されています。
三重県動物愛護推進センター主幹で獣医師の千田明郎さんに伺いました。
まず、現在三重県でどのくらいのネコが殺処分されているのでしょうか?
千田さん「三重県では平成28年度はイヌ81頭、ネコ663匹が殺処分されました。減少傾向にありますが、ネコについては多く保健所に持ち込まれているという現状があり、その解決が必要です」
イヌに比べて8倍もの数です。これは三重県だけの現象ではなく、全国でも2015年にはネコはイヌの4倍以上も殺処分されています。
三重県でもネコの譲渡先を探したりして、なるべく殺処分を減らそうと努力をしてきましたが、やはりイヌに比べると多いです。
イヌの場合は「殺処分ゼロ」という自治体も出てきています。例えば名古屋市では、昨年度イヌの殺処分はゼロでした。しかし、ネコは900匹ほど殺処分されているそうです。
多田しげおは「イヌネコとひと括りにしがちですが、イヌとネコの状態はずいぶん違いますね」と感想を漏らします。
ネコの殺処分の減らない2つの理由
では、なぜイヌは減っているのに、ネコの殺処分は減らないのでしょうか。
千田さん「ネコは非常に繁殖力の強い動物です。常時妊娠できるということで、多くの仔ネコが保健所に持ち込まれています。
最近はイヌの収容が非常に少なくなってきています。一方、ネコについては捕獲規定等がありませんので、なかなか減っていかないという現状があります」
ネコは一回の交尾で4~6匹の子を産みます。また、オスと交尾して妊娠中でも、再び交尾するとさらに別のオスの子も妊娠できます。そういった繁殖力の高さがひとつあります。
もうひとつは、イヌは狂犬病を防ぐため「狂犬病予防法」という法律で管理されています。予防接種や放し飼いの禁止などが飼い主に義務付けられています。
ネコはそういった飼い主と結び付けられる法律がないので、放し飼いも禁じられていません。結果として、外でどんどんこどもを増やしてしまうので野良ネコが減らない、という現状があるそうです。
「さくらねこTNR」とは?
そんな中、三重県が始めた「さくらねこTRN」とは何でしょう。
千田さんによると、飼い主のいないネコを、
Tはトラップ…捕獲し
Nはニューター…不妊手術を行い
Rはリターン…元の場所に戻す
という取り組みです。
不妊去勢手術を野良ネコに行って、元の場所に戻して一代限りの命を見守っていこうということです。
「さくらねこ」という名称は、不妊去勢手術をしたネコである印に、耳先を花びらの形にカットするところから来ています。
去年6月から始まったばかりですが、この半年ですでに800匹以上の手術に成功しているそうです。
手術して「さくらねこ」になると、もう交尾・妊娠する心配はないので、野良ネコは減ることはあっても増えることはありません。何よりネコを殺さなくて済みます。
他にもメリットがあります。
例えば去勢手術をうけた「さくらねこ」には"さかり声"がなくなり、騒音の被害が減ります。さらに、おしっこをふきかけてマーキングする行為もしなくなるので、街の糞尿被害も減ります。
人とネコが幸せに暮らせる方法を
千田さんたちは地元の市民の皆さんに、こういった意識改革をお願いしたいそうです。
千田さん「もともとは人が原因でネコに罪はないと思います。野良ネコの問題は地域の環境問題として解決する方法を考えていただきたいです。
野良ネコの問題に関して感情的な対立となり、苦情として寄せられる場合があります。苦情の前に保健所に相談していただければ。苦情を潜在的にふせぐ取り組みをしたいと考えています」
桐生は最後に「『さくらねこTNR』は、人もネコもお互い幸せに暮らせる方法だと思います。まだ始まったばかりですが、三重県から全国に広がって、殺処分から救われるネコが増えるといいですよね」と、願いを込めてまとめました。
(みず)
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