「ニッポニア・ニッポン」の学名で知られる鳥類のトキ。
日本のトキは過去、いったんは絶滅してしまいました。
その後、なんとか復活させようと、中国の協力もあり、佐渡島を中心に繁殖活動が続けられ、現在では、自然界にも返している状況です。
今は、トキの繁殖活動シーズンがちょうど終わったばかり。一段落した様です。
環境省の佐渡自然保護官事務所の首席自然保護官、若松徹さんトキの現状を伺いました。
絶滅したトキに復活の兆し
トキについての基礎知識
明治時代、狩猟が一般に解禁されると、トキの乱獲が始まります。
大正時代になっても、トキの減少は続き、絶滅したと考えられていました。
1930年(昭和5年)、前後に佐渡島、能登半島、島根県の沖の島で数羽が確認されました。
1981年(昭和56年)、最後の野生のトキ、5羽を一斉に捕獲。この年、中国陝西省でトキが発見されます。
中国のトキは日本のものと遺伝子的に同じだと確認され、中国の協力で、佐渡島でトキの繁殖に取り組みます。ペアリングが成功し2003年(平成15年)には25羽まで回復。
2003年(平成15年)、日本産の最後のトキ「キン」が死亡。その後、徐々に増え続け、2008年(平成20年)第一回目の放鳥が行われました。
ズバリ、トキは自然界に何羽いる?
現在、自然界には何羽ぐらいのトキがいるんでしょう。
「推定の値なんですけども283羽です」と若松さん。
1回目の放鳥のニュース映像を覚えている方もいるかもしれません。
籠の扉が開けられて、自然に帰って行った最初の1羽から始まって、現在は283羽。
この中には、野生で生まれたトキもいるのでしょうか?
「内訳としまして、半分半分ぐらいになっています。放鳥されているトキは141羽ほど生きていて、野生で生まれたトキが142羽。ちょうど野生の個体数が数が、繁殖を逆転したところです」
野生で世代交代はできているの?
自然界で生まれた者同士が、また次の世代なんかもう作ってるんですか?
「純野生というかたちで、マスコミによく報道されてるんですけど、2年連続なので、2世代ですおかげさまで、順調にいっています」
283羽のトキは全て佐渡にいるんですか?
「いま1羽だけ、本州に行っている個体を確認していますが、それ以外は佐渡にいます」
この1羽は、自力で本州まで飛んで行ってしまったそうです。
トキの再絶滅を防ぐ分散飼育
ここまでトキの数が回復したのは、若松さん、はじめ、保護センターの人、並びに地元の方達の協力も大きいようです。
「まさに地元の方々の協力が非常に大きいです。当然、野生生物が生きていくためには、エサ資源が重要で、エサは、田んぼのドジョウが中心なんです。その他にも、色んなものを食べてるんですが、エサ場環境としては、田んぼが非常に重要で、佐渡の農家さんは、農薬を使わないですとか、自然栽培であるとか、トキの生息に優しいような、農業を先進的にやられています」
実は佐渡島以外でもトキを増やす活動が行われています。もし鳥インフルエンザなどに罹った場合の再絶滅を防ぐためです。
佐渡島以外に、どこで飼育されているのでしょうか?
「同じ新潟県で、長岡市。動物園ですと、東京都の多摩動物公園とか石川県のいしかわ動物園。あと、島根県出雲市でも分散飼育という形でご協力を頂いています」
各地で繁殖活動が進んで、もし放鳥ができるようになれば、明治の頃のように日本中でトキを見られることも考えられます。
増えるのか疑心暗鬼だった
若松さんが、繁殖活動に関わりはじめたった頃というのは、どんな状況だったんでしょう。
「2003年(平成15年)頃、ちょうど私の同期が、一番最初の佐渡のレンジャーでいました。その後、まさにさっき話題に出た、最初の放鳥。秋篠宮両殿下が、放鳥した場面で担当していました。その時、初めて、佐渡にトキが放されたんですが、ここから、うまく増えるんだろうか?と、個人的には、かなり疑心暗鬼な部分がありました。でもそれが今、こういう形になって、自分が、ここに担当として来てるというのが、非常に感慨深いです」
佐渡の保護センター以外でも、トキが飛んでる姿を見かけるんですか?
「最近はよく見られるようになってきています。朝方、夕方なんかですと、田んぼの上を飛んでいる姿がご覧いただけると思います。飛んでる姿は非常に美しいので、ぜひ見ていただきたいと思います」
毎年続く放鳥活動
今でも、まだ保護センターの中の鳥を、放鳥もし続けてるんですか?
「はい。年間約40羽、放鳥してまして、年2回に分けて放鳥してるんですね。だいたい20羽弱づつぐらい放鳥するという形を継続しています」
佐渡島に来たらトキ以外にも、楽しんで
「また、佐渡の金銀山は、世界遺産への登録を目指しています。トキだけでなく、見るべきところ、いろんな美味しいものも含めて楽しんでいただきたいと思いますので、よろしくお願いします」
最後に佐渡島のPRも忘れない若松さん。佐渡の空、日本の空がトキ色に染まるよう頑張ってください。
また、佐渡島はマラソンやトライアスロンもあります。佐渡島に行くのが楽しみです。
(尾関)
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