最近、医療や農業、環境などさまざまな分野で応用され、一部では実用化もされている「マイクロバブル」。
耳にすることはありますが、いったい普通の泡とは何が違い、またどんな利用法があるのでしょう?
日本が世界をリードする研究分野のひとつというマイクロバブルについて、山形大学工学部 機械システム工学科准教授の幕田寿典さんに伺いました。
小さな泡にも未知の可能性!マイクロバブルって何?
目には見えないマイクロバブル
そもそもマイクロバブルとはどのような泡なのでしょうか。幕田教授に伺いました。
「ミリメーターでいうと1,000分の1ミリから10分の1ミリくらいの大きさの泡のことをいいます。髪の毛の太さよりも小さく、ほとんど目に見えないと思ってよいです」
目に見えないほどの小さな泡をどうやって作るのでしょうか?様々な方法があるそうですが、最もわかりやすい方法を教えていただきました。
「スポンジみたいな、セラミックよりさらに目の細かいものからガスを吹き込み、バブルを作り出します。小さい穴からマイクロバブルを出す方法では、出したいマイクロバブルのさらに10分の1くらいにする必要があります。その穴は当然、目には見えません」
マイクロバブルの特徴
このようにしてマイクロバブルの溶け込んだ水が出来上がります。こうした水にはどのような特徴があるのでしょうか。
「マイクロバブルは浮力が非常に弱いので、あまり浮かんでいきません。どちらかというと泡が弾けて消えるというより、溶けてなくなるイメージです」
泡が小さすぎるゆえに、普通の泡のように浮いて消えるわけではないそうです。
マイクロバブルを作り出す方法は現在は色々考えられていて、従来は水以外の液体で気泡を作るのは難しかったそうですが、今は種類を問わず微細な気泡を作ることができるそうです。
マイクロバブルの利用例
マイクロバブル実用化の一例として挙げられるのが、魚の養殖産業です。幕田先生に詳しく教えて頂きました。
「カキなどの養殖の際に、マイクロバブルを吹き込むと、たくさん酸素をとけ込ませることができるので、育ちが良くなったり雑菌が抑制できたりします。また、マイクロバブルはあまり浮かばないので、広い範囲に効果を及ぼすことができます」
また、医療の分野ではこのように使われているそうです。
「泡はある周波数だけに激しく振動する特徴があります。マイクロバブルの周波数帯は、赤ちゃんを見る時などに使うエコー(超音波振動装置)の周波数帯と一致しているので、エコーで血液の流れを見たり、腫瘍を見たりするのが難しいような場合でも、マイクロバブルを血液中に投与して流してやると、泡が通った部分にだけきれいに画像ができます。これにより、血流の可視化や腫瘍の早期発見につながります」
さらにこんな使い方も。
「溶けた金属にマイクロバブルを吹き込んでいくと、金属がカップケーキのように膨らんでいって、球状の金属ができます。そういう空洞があると、振動を抑えられたり、衝撃を吸収できたりします」
このように、さまざまな分野に応用されているマイクロバブル。
幕田先生によれば、日本のマイクロバブルの研究は世界の最先端とのこと。これまで誰も取り組んだことのない分野なので、新鮮味があり、未知の領域を開拓するようなものだということです。
マイクロバブルは今度はどんなところに利用されていくのか、小さな泡に期待が膨らみます。
(ふで)
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