先日、東京銀座の飲食店関係者から指定暴力団山口組系の暴力団員が「みかじめ料」として現金を脅し取った恐喝容疑で、警視庁が8人の男たちを逮捕する事件が起きました。
暴力団の大きな資金源になっているとされる「みかじめ料」、ニュースではよく聞く表現ですが、いったいどのようなものなのでしょう?
暴力団関係に詳しい、テミス綜合法律事務所の弁護士 田中清隆さんに伺いました。
払う側にも罰則が!暴力団の「みかじめ料」
みかじめ料とは?
昔から言われている「みかじめ料」とは、元は暴力団用語です。
勢力範囲、いわゆる縄張りごとにある飲食店や風俗店などへ用心棒代などとして要求する金品のことです。
今でも現実に、繁華街やお祭りなどで、暴力団によって集められているのが、この「みかじめ料」なんです。
みかじめ料の語源は?
どうして暴力団に払うお金を「みかじめ料」というのでしょうか?田中さんに尋ねます。
「毎月三日に払うとか、要求されたら三日以内に払うとか、とにかく払わないとペナルティがある。そういうところが語源だという説があります。それから『みかじめ』の『み』は見るという字の『見』。これは見守るという意味で、『じめ』は『締め』で取り締まるという説もあるんです」
昔風に言うとヤクザの親分が「ここで商売するならば、我々に払っておけよ。そうすれば下のもんには手出しはさせんから」というのが、簡単なみかじめ料のイメージです。
みかじめ料の集め方
このみかじめ料、暴力団は現実にどのように集めているのでしょうか?昔と今とでは、集める方法が変わってきているようです。
「組員が、毎月ほぼ決まった日に現金を集めに来るというのが一般的な形でした。最近は、現金ももちろんあるんですけど、例えばおしぼり代に上乗せしたり、あるいは店の中に植木を置きレンタルしている形で上乗せするとか。部屋の賃料に上乗せするとか、実際は広告をしていないのに広告料名目で取るとか。いろんな形がありますね」
最近は表に出にくいよう、集め方も巧妙になってきているそうです。
みかじめ料はいくら?
みかじめ料なるものの、月々の相場はいくらでしょう。お店一軒あたり、どの程度暴力団に支払うものでしょうか?
「多いものは月に30万とか40万円というところもあると聞いています。小さなものでは1万円、2万円というところもあるみたいですね」
店舗の規模で変わるようです。例えば大きなパチンコ店や風俗店などは30~40万。小さなスナックや居酒屋とかは1~2万円を支払っているようです。
今回事件になった銀座の店舗の場合、月に5万円ほどを支払っていたということです。
暴力団の財源は何がある?
暴力団の財源として「みかじめ料」以外にどういうものがあるのでしょうか。大きなものから田中さんに伺いました。
「一番多いのは薬物関係、その次に賭博関係があって、3番目にみかじめ料です。しかし、レンタル代や広告費など、いろんなものに上乗せした分は(警察も)わかってないかもしれません」
みかじめ料は、暴力団にとって大きな財源なんですね。
「もちろん、安定した大きな財源です」とキッパリ言う田中さん。
様々なものに上乗せした分を合わせると、実は「みかじめ料」が最大の財源になっているとも言われます。
払う側も罪になる暴排条例
「みかじめ料の徴収は当然犯罪です。現在では暴力団対策法で厳しく取り締まりが行われています。さらに最近は、各県が条例も作っており、そちらでも厳しく罰せられるようになっています」
具体的にはどんな刑罰となるのでしょう?
「暴力団対策法、略して暴対法というものがあります。暴力団がみかじめ料を取った場合に、公安委員会から措置命令というのが出て禁じることができる。暴力団がその命令に従わずさらに違反すると、3年以下の懲役、または500万円以下の罰金という罪になります」
取り締まりが行われるようにはなった一方、みかじめ料がなくならないのも現実。
暴力団の行為はもちろん犯罪ですが、実はみかじめ料を支払う店舗が罰せられることもあるんです。
「もう一つ、暴力団に対する条例が各県にあります。愛知県の場合は『愛知県暴力団排除条例』です。略して暴排条例。この条例では、暴力団はもちろん、払った方も同じ罪になるわけです。6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金。だから暴対法の方は暴力団だけを罰する。愛知県暴排条例の方は、暴力団も店の方も罰します」
されど現実はままならぬ
払った店側も罪になるということは、安易に暴力団の求めに応じないようにいうことですが、報復を考えると、現実はままなりません。
みかじめ料の徴収は、日々形を変えて、巧妙に巷で横行しているようです。
最後に一句。
みかじめ料 払うあなたも 犯罪者
(尾関)
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