東京上野動物園にパンダが生まれました。上野近辺はパンダフィーバーに沸いています。
267億円ほどの経済効果がありそうだ、という話がさっそく出ています。
ところで、この「経済効果」という言葉、「〇〇による経済効果がいくら」とか、よく耳にしますが、具体的にはどうやって計算するのでしょうか。
多田しげおが中京大学経済学部客員教授でエコノミストの内田俊宏さんに伺います。
経済効果って何?
何かイベントがあった時に、それによって生み出されるもので「直接効果」と「波及効果」があります。
直接効果とは、例えばパンダが生まれて、それを見に来る観光客の宿泊費や交通費、上野動物園の入場料収入とかです。
そこから波及する間接的な効果。
周辺の飲食店の売り上げの伸び、従業員の方の給料が伸びて消費に回る分などを直接効果にプラスしたものが「経済波及効果」と呼ばれるものです。
どうやって計算するの?
この効果は予測ですが、どのように計算されるのでしょう。
基本的には、動物園の入場料収入が増えたり、消費が増えた場合に、他の産業にどんな影響が出るのかということを表した「産業連関表」というものがあります。
その表に最終的に数字をいれて計算します。
ここで多田が「例えば、ドラゴンズが優勝した場合の算出はどうなりますか?」と尋ねます。
まず、産業連関表にいれる数字を計算していきます。
ドラゴンズの場合は、リーグ優勝して、日本シリーズで4勝3敗で勝つと想定します。
その際に入場料収入の増加、各選手やドアラなど関連グッズ売り上げの伸び、他の地域から見に来た人の宿泊費、交通費、飲食代、テレビ・ラジオの放映権、百貨店のセールによる売り上げの伸び、そういった前提条件となる数字を計算して、それを産業関連表に入れて計算することになります。
ぶっちゃけ、当たってる?
さらに多田は「経済効果は予測ですが、ズバリ、この予測は過去振り返って当たっていますか?」と尋ねます。
内田さんいわく「そこはなかなか触れたくないところです。波及効果をどこまで見るかですよね」とのこと。
優勝の経済効果も愛知県だけで見るか、東海地方で見るかなど、どこまで予測範囲を広げるかで数字は全く変わってきます。
直接効果も、前提で飲食代ひとり2,000円か3,000円かで、数字が変わってきます。
実は当たったかどうか、その後の検証はあまり例がなくて、出しっぱなしというところがあります。
しかも、メディアも取り上げますから、数字が大きければ大きいほどいい、というような風潮があります。
阪神タイガースが優勝した時、最初に出た数字が出たあと、何度も違う機関研究者が出して、出るたびに数字が増えて、最終的に最初の数字の7~8倍くらいになったことがありました。
ついては、参考程度に見た方が良さそうです。
ある程度、数字には幅があるもの
なんとなく勢いがつくような数字を出しておいた方がいいということで、試算する機関や担当者の思惑で、数値はある程度変わってきます。
多田「これだけの経済効果があるぞと言われると、『よっしゃ俺も金使おうか』という、一番の大きな効果はここですよね」
それに対して内田さんは「経済効果の計算は細かくやっていますが、そこに入れる前提条件の数字が大きく変わってくるということを捉えておいてください」と念を押しました。
(みず)
関連記事