最近は「山ガール」が登場したり、熟年で登山を趣味にする人が増えています。中には海外の有名な山にチャレンジしようとする人も。
そういう時に活躍するのが「国際山岳ガイド」です。
いったいどんな仕事なのでしょう?国際山岳ガイドの資格を持つ江本悠滋さんにお話を伺います。
資格取得すら過酷な国際山岳ガイド。その仕事とは?
日本では江本さんだけ
山岳ガイドの仕事は、山に人を連れて行くことです。
日本ではまだ知られていませんが、江本さんの活動拠点であるフランスでは、国際山岳ガイドは国家資格として確立していて、この資格がないと報酬を受け取って人を山に連れて行けないそうです。
江本さんは名古屋市出身で40歳。
3歳からスキーを始め、オリンピック選手を目指して、15歳のとき単身でフランスへスキー修行に。
ところが、ケガのためスキーの競技選手から離脱し、その後フランス国立スキー登山学校でスキー指導員の資格と国際山岳ガイドの資格をとりました。
二つの資格を持っている人は日本人では江本さんだけだそうです。
多田が「国際山岳ガイドの資格を持っている人は珍しいでしょうね」と聞くと、「言葉の問題もありますし、山歩きだけではなく、難しい壁を登ったりするので、高い技術が求められます」と江本さん。
登山者の方の夢をかなえる
江本さんはご自身の仕事についてこう語りました。
「登山者の方の夢をかなえるお手伝いをする仕事かなと思っています」
メジャーな高い山に行ってみたいけど、自分一人じゃ怖いという人からの依頼が一番多く、その人たちをサポートして見事山に登り、安全に帰ってくることが仕事だと言います。
これ以上行けない、ここからは引き返す、という線引きも大事な仕事のひとつ。
決断の判断基準はその人の体力、技術、天候によるので、いつも同じところに線を引くわけではありません。
かなえてあげたい夢と、ここから先の危険性を考えて、厳しい決断をすることもあるそうです。
命がけの資格取得
江本さんが進んだフランス国立スキー登山学校は、まず入学試験が難しく、アマチュアとしてすでに一流の登山者が応募して、合格者は年間たったの40人。
学校での訓練は、1年目は夏と冬、毎日学校で生活して山にはいっていく試験があります。
それから、ガイド見習いの期間が2年間。その間に最低50本のルートをお客さんと登り、同時に50本プライベートでこれ以上のレベルの山をこれだけ登りなさいという課題があります。
それが終わると、また学校へ戻って訓練と試験を繰り返し、入学から卒業まで4年間かかります。
「やっていること自体が危険なので当然事故もあり、僕の学年は入学時42人で、そのうち3人が亡くなりました」
いかに山が厳しいか思い知らされます。
山ではどうサポートするか?
例えば江本さんが「アルプス山脈のモンブランに登りたい」と言われたとします。
その場合、登る時期はいつにするか、装備は何が必要か、日本ではどんな訓練をしたらいいか、どういう準備をすればいいかと、出発前からサポートは始まります。
登山ルートはまず安全性を考えて、何時にどこを出発して、何時に山頂につくかとかプランをたてます。
他にもロッククライミングのサポートであれば、お互いにロープを付け合って、依頼者が落ちたらくい止めることも仕事です。
「ひょっとしたら命を落とすかもしれないという仕事なんですね」と、改めて大変さを思う多田。
依頼者の夢を叶えた時はどんな心境なんでしょう?
「自分たちも一緒に山頂に立てることには幸せを感じます。でも、また同じだけの距離を下らないといけないので、山頂ではこれから折り返し地点という気持ち。
お客さんは、そこで気持ちが緩むので、毎回そこは引き締めてもらいます」
多田は最後に、来週フランスで仕事をする江本さんに「安全で楽しいサポートを、ぜひ!」と、敬意を込めて言葉を贈りました。
(みず)
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