「くん製」とは、食材を煙でいぶすことであり、昔はベーコンやハムぐらいしか見かけませんでしたが、最近はくん製器の出現により、あらゆるものがくん製にできます。
くん製すると食べ物が美味しくなったり、日持ちするのはなぜでしょうか?
その疑問について、多田しげおが名城大学農学部応用生物化学科 食品機能学研究室の林利哉先生に伺いました。
くん製すると食べ物が美味しくなるのはナゼ?
意外に長い!くん製の歴史
くん製はいつ頃から行われていたのでしょう?
林先生によれば、くん製はすでに石器時代には行われていたそうです。
人類が火の起こし方を発見した後、加熱すると肉などが美味しくなるのが分かり、さらにくん製で食べ物が美味しくなることを発見するなど、偶然の経験を積み重ねた結果、発見されたと言われています。
くん製に限らず、食べ物に関してはさまざまな偶然による発見があり、昔チーズも、牛乳を羊の胃袋に入れて保存した人が、一日経つと固まっていた物を食べてみて偶然発見したそうです。
何かわからない物を最初に食べてみて偶然新しい食べ物を発見した人は、かなり勇気がありますね……。
くん製で日持ちするのはなぜ?
ここで今回のメインとなる疑問、「くん製で日持ちしたり、美味しくなるのはなぜですか?」と多田が尋ねます。
まず日持ちする理由ですが、これは2つあり、1つ目はくん製に限らず、加熱すると乾燥により水分が減って、微生物が活動しにくくなり、腐りにくくなるからとのことです。
2つ目は、まだ完全には解明されてはいないのですが、煙の成分に含まれている数百種類の物質のうち、抗菌・殺菌効果がある物があるためと言われています。
さらに煙の成分に含まれるフェノールという化合物と、肉の表面にあるタンパク質がくっついて、完全に覆う訳ではないですが、膜ができるためとも言われています。
また、くん製で食べ物が美味しくなるのは、煙の成分に含まれるフェノール、アルコール類、有機酸などが食品とくっついてうまみになるからと言われています。
「おいしさ」の理由も、科学できちんと説明できるのですね。
どんな食べ物が美味しくなるのか?
ここまでの話で「美味しいくん製料理を作ってみたい!」と思われたかもしれませんが、ではくん製に使うスモークチップはどんな木が合うのでしょうか。
林先生によると、樹脂含有量が低い広葉樹が良いとのことで、これは脂が少ないために燃え過ぎず、刺激が少ないためです。
では、くん製にすると美味しい食べ物はなんでしょうか。
林先生の研究室で、学生や若い先生の発案で好評だったのはゆで卵だそうで、特に半熟が良いそうです。
くん製に向いている食材かどうかは、どのように判断したらよいのでしょう?
林先生によると、水分が多く、形がしっかりしていない食品は難しいとのことです。野菜は水分が多いのですが、表面が固いため問題がないとのことです。
一方で気を付けないといけない食材の一例は、生魚です。
焼き魚にしないように低い温度で燻す場合は、微生物が増殖する危険があるので要注意です。
意外とさまざまな食材をくん製にできますので、今後キャンプシーズンなどが到来した時に、今までにないくん製料理を試してみてください。
(岡本)
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